こじらせた恋の終止符の打ち方


「しんどい」

 なんだってずっとこうも好きかな。
 なんだってこんなに下手くそかな。忘れるために能動的にもなれない。
 パンを買って、一人で食ってると、さみしい気持ちばかりわいてくる。
 恋したてのときは、こんなんじゃなかった。毎日、攻めと会えるのが嬉しくて、叶わない恋だってことにも、今にして思えば酔っていられたんじゃないかな。
 彼女が出来たって聞いて、それでもさめなくて、それも何回も繰り返されてもさ。
 こんなに引きずって、忘れられないなんて、昔の俺もびっくりだよな。
 ただ意地になってるだけじゃないかとさえ思う。ここまできたら執着とか呪いとかなんかじゃないかって。
 後でぜったい腹が減るってわかってるのに、思うところが多すぎて、パン一個しか食う余裕がない。うなだれていると、向こうから八頭身が走ってきた。
 骨格から違う美形に、皆振り返ってる。

「受け」

 俺は、こいつの見た目に騙されているのでは。そう思うくらいこいつはまばゆいけど。

「どうしたの? なんか元気全然ないじゃん」

 美形台無しくらい心配そうな顔で、俺のこと見る。
 いつもそうだ。
 こいつは、黙ってるだけで雰囲気のある顔なのに、表情筋激しくて、そこで損してるくらい。

 でも、そういうとこが一番好きなんだよな。
 俺、お前の顔面が俺レベルでも多分好きだよ。お前の表情が好きだから。
 顔くっしゃくしゃにして笑うとこが好き。顔びしゃびしゃにして泣くとこが好き。
 それくらい、誰かに感動できるお前が好き。
 だから、仕方ないのかな。

「学食おごるから、付き合ってよ」

 そう言って、俺に手を差し出してくる。俺は力なく笑って、手をとった。
 節の高い長い指が、ぎゅっと俺の手を掴んで引っ張った。
 痛いくらい好き。
 もうやめにしたいってのに。そのよく動く心が、俺に向くことなんてないってもうわかってるのに。

「やっぱスピーチか……」
「ん?」
「なんでもない」

 せめて、お前の近くにいたい。そう思ってズルズル、何してるんだろう。でも、好きだから。
 たぶん、後悔できないくらいには、こいつのことが。
 牛丼をかきこみながら、攻めは言う。

「週末、付き合ってほしいんだけど」
「おう」

 ……もうかよ。短い命だったな。色男は即断即決か。
 俺は、二十回目の失恋の覚悟を決めた。
 ――ずっと好きでいる覚悟みたいなかっこいいものだって、まだ持ててないけど。でも、ずっと変わらないのはわかる。

「わかった」

 週末までちょっと泣いて、お祝いできるようにしよう。受けは何気ない顔で笑った。

 週末、今まで二人だと行ったことないようなちょっとおしゃれな店に連れていかれて、告白されることを受けは知らない。

 《完》
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