「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【4】
授業中、相は授業に専念していた。シャープペンの芯が折れる。ぐさりとペン先が指に刺さった。
「郷田原さん、めっちゃ怖くね……」
「知らねえの、朝……」
周囲のささやきも、相の耳には入らない。ひとりでいると、思い浮かぶのは満未のことばかりだ。考えただけで、痛くて叫びそうで、どうにか気持ちを逃がそうとするのだが、上手くできない。今朝の遠野の言葉が、それに拍車をかけていた。
『満未は俺の部屋で寝てるぜ』
満未はいま、遠野の部屋にいるのか。
ふたりは友達だから、そりゃ当然といえるだろう。けれども、恋人として、楽しい気持ちではなかった。
……とはいえ、もう嫌われているのかもしれないのだが。そこまで思って自嘲する、かもしれないも何も、大嫌いと言われた。なのに、かもしれない、とつけてしまうのは未練故だろうか。
満未に言われたことは、ごもっともすぎて、否定も出来なかった。
自分のことをずっと隣で見て、支えてくれた満未だからこそ、腹に据えかねたのだろう。そうか、そういうところも、うんざりされていたのか。
ひたすら、沈痛な気持ちになる。
「郷田原さん、人でも殺してきたのかな……」
「怨霊背負ってないか」
相は、がたりと立ち上がった。
あたりはびくっと震え上がる。しかし、相には見えていなかった。
満未に会おう。
満未と、話さねばならない。そんな気がした。怒っているときの、満未の声や目が、頭から離れない。言われたことは、両腕を振り乱したいくらい、痛い。なのに、満未を、このままにしたらいけない、そんな気がした。
「満未の好きなお菓子と飲み物も買っていこう」
時計を見れば、ちょうどお昼だ。購買に寄って、部屋に迎えに行こう。それで、自分たちの部屋で話したい。昔みたいに。
相はお菓子をせっせと買って、精算した。
「ありがとうございます」
と店員さんにお礼を言って、去る。
「郷田原さん、時々たくさんお菓子買うよな……」
「お礼参りかなんかじゃ……」
相は、遠野の部屋へ向かった。