「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【3】
「よく来てくれたね」
「いえ、お話とは何でしょう」
理事長室のソファに座り、
俺とは大違いだな。当然のこととはいえ、相は髪型だけ同じの己を呪った。
「
「はい」
相はぴっと顔を風紀委員長のものへと変えた。なるほど、さすが
「彼の苦境は、風紀の長である君ならばわかるだろう」
それについてはふがいないばかりだった。
「私の不徳のいたすところで、つい最近まで、気づくことが出来ませんでした」
申し訳ございません。と頭を深々と下げると、理事長は「いい」と手で制した。
「それについては仕方がないよ。瀧見君は、ずっと
「あ」
言われてみれば、そうだった。瀧見と間地が一緒にいるのを、よく見かけたような。己の鈍さに驚く。
「傷ついた顔ばかり探すのが、本当にうわべばかりの偽善者って感じだよね」
って、
「しかし、今は一緒にいないようですが……」
「ああ。それは瀧見君から離れたそうなんだ。関わりたくないと」
「は」
理事長はいらいらと足を組み直した。
「ひどくおびえた様子でね。おかしいとは思わないか。前日まで、瀧見君は間地のことを、親友とまで言っていたんだぞ」
「それは」
たしかにそうだな。
相は不思議になる。それと、理事長と瀧見との親密さにも。理事長は、ここまで教育熱心な方だとは、失礼ながら知らなかった。
「きっと間地になにかされた。もしくは、彼が懇意にしている
「は、」
「君にも、責任の一端はある。そうだろう、風紀委員長の
たしかに、そうだ。
「申し訳ありません」
深々と頭を下げた。そうだったのか。自分がのんびり構えていたから、瀧見があんなに苦しんでいたのか。しかし。
「あの、失礼ですが。間地は、理事長先生と親類と聞いています。彼は、いったいなんと言っているのですか」
ぴりっと、理事長の顔に不快の色が走る。相はじっと見つめ返した。しばらく見つめ合う。
「なにも。『日夏が離れたいと。他にも友達ができたからって』と言ったさ」
「そうですか」
「おかしいと思うだろう?」
正直なところ、判別がつかなかった。ただ、間地と皆見が……そのような不当な行いをするとは思えない。だが、瀧見の調子が悪いのも事実だ。
「君が、心ある風紀の長ならば。このことを調べ私に教えてほしい」
相は目を見開いた。
「そして、瀧見君のことを、君の権限で守るんだ。そうすれば、君の今までの手落ちは水に流そう」
いいね。
理事長の声音は、ほぼ確認のようだった。息も出来ないような緊迫感が、理事長室に満ちていた。
黙り込む相に、理事長はぐっと身を寄せた。
「出来ないのなら、君は長の器ではないと言うことになるな」
相の顔がゆがんだ。それに、理事長は笑みを深めた。
「わかってくれたらいい。それでは――」
「お断りします」
1/4ページ