「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【2】


 部屋に帰ると、満未が曲を聴きながら腕立て伏せをしていた。

「おかえり」
「ああ」

 相は頷くと、洗面所に向かった。洗濯機を使う前に、制服を手洗いせねば。

「悪いが洗面所、少しふさがるぞ」

 断りを入れ、たらいを出すと、せっせと洗い出した。

「またなんか抱えたの?」

 満未の気配が、背後に立つ。相は「抱えてはいない」と答えた。

「言った端から。本当に話聞かないよね」
「忠告は受け止めている」

 すべての生徒に、なにかできるわけでもない。けれど、出来る限りのことはしたい。

「俺は、風紀委員長だからな」

 せっせと手を動かしていると、満未が「は」と笑った。

「友達いないから、そうやって人にかまうんでしょ」

 手が止まった。しかし、また動かし出す。……今、その言葉はひどく痛い。

「そんなことしたって、誰も友達にならないから。いい風に使って――」
「そんなことはない!」

 とっさに怒鳴っていた。洗面所に、声が響いた。余韻が辺りに伝わる。相は、ぎゅっと濡れた制服を握りしめた。

「すまない。大声を出した」

 そう言って、黙々と手を動かす。

「だが、そんなことはない。人のことをそんな風に言うな」

 俺のことを、必要としてくれるひとはいる。……お前がそうだったみたいに。

『相ちゃん、大好き』

 自分が今、どれだけ恋人として満未を失望させても。その言葉だけは、信じていたかった。洗い終えると、水を切る。

「ランドリーに行ってくる」

 満未の脇を横切り、相は部屋を出た。
 人がいなくても、点々と明かりのついた廊下は、なんだかさみしかった。

 学園の理事長に呼び出されたのは、それからすぐのことだった。


 《続く》

 
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