「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【2】
「あ、あの~~~……すいませんっした」
「なにがだ」
瀧見の謝罪に、相は首を傾げた。瀧見は顔を真っ赤にして、小さくなっている。
「片づけとか……服も」
相はまた、首を傾げる。部屋も服も、応急処置はすませたし、どうにでもなる。
「そんなことより、体は大丈夫か」
「平気っす、なんかすっきりしたんで」
「そうか。だが一応、医務室に行こう」
「あっ! 平気です! 全然……!」
瀧見が真っ青になって、首を振った。それに相は目をすがめる。医務室の人は、養護教諭の先生はじめ、頼りになる方ばかりだ。それをこの恐がりぶり……なにか不穏なものを感じる。相は、ソファから起きあがろうとする瀧見を、もういちど寝かしつけた。
「ひとまず休みなさい」
「相さん」
「無理に話せとは言わない。だが、つらいことがあるなら頼りなさい」
いや。相は顔を渋くした。
「すまない。あの日、君が泣いていたのに、話をすぐに聞きに行かなかった俺の手落ちだな」
「ええっ?」
「俺は、君の名前もクラスも知っていたのに。すまなかった」
「こ、怖っ……」
瀧見がソファで身を抱いた。よくされる反応だから、平常心でいた。
「いいっすよそんな……むしろ来られても怖いし……」
「そうか。すまない」
「いや~……」
たしかに自分が聞き取りにいったら怖いと、満未にもそう言われて、やめた。でも、実際に必要な手もあったのでは……こういうことは悩み事がつきない。相はうんうん考える。すると、瀧見が、しげしげと相を眺めていた。
「相さんって変なの」
「俺が?」
「そんなに細々考えてて、禿げません?」
「えっ!」
ぱっと髪に手をやる。そんなに禿げているつもりはないが。撫でつけた髪を恐る恐る確かめる。瀧見は、ぽかんとして、笑い出した。
「あははは……! 変だ! 絶~っ対変!」
「そんなことはない」
「だって……あはは……」
涙をぬぐって、笑っている。不可解ながら、相はホッとした。少し笑う元気が、出てきたみたいだ。じっと見ていると、瀧見と目があった。じっと見ていたら、瀧見はふいに青ざめて、笑いをおさめた。ぶるりと震えだす。
「す、すみません!」
と、がばりと立ち上がった。
「どうした」
「お、俺、帰ります……!」
「なら送ろう」
「平気ですっ! 俺……、さようなら!」
そう言って、脱兎の勢いで去っていってしまった。
「なんだったんだ?」
……大丈夫だろうか。やっぱり心配だ。
ひとまず片づけをしっかりして、ジャージに着替えた。自慢にはならないが、こういうことは慣れっこなのだ。つらい気持ちを抱えて、相に相談にくる生徒は少なくない。泣いている生徒に、歯がゆい思いを抱えるのも、いつものことだ。偽善だと満未には言われるが、何もできないことが、つらかった。