「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【1】


 裏庭に来て、しゃがみこむ。
 雨が降ったのかと思った。けど、空は快晴だ。しずくが頬に伝ったのを感じ、「涙だったのか」とわかった。
 ――いつから?
 言葉になったのはそこだけだった。相は、ひたすら膝に顔を埋めて泣いた。長としてみっともないなんて、考えられなかった。
 努力しろとは、「察して別れてくれ」とのことだったのか。それではさぞ、自分の行動は鬱陶しかっただろう。
 ずっと泣いていると、向こうから嗚咽が聞こえた。

「ん?」

 こんな時でも、体が反応する。
 まさか、誰かいじめられているのか。相は立ち上がり、ぱっとそちらに向かった。見れば、一人の生徒が、うずくまって泣いている。

「大丈夫か」

 尋ねると、生徒は顔を上げた。あっ。相は目を見開いた。
 泣いていたのは、転校生だ。
 季節はずれのものだったから、よく覚えている。たしか、名前は。

「瀧見日夏(たきみひなつ)くんだな。つらいことでもあったか」

 瀧見は、目を見開いた。
 愛らしい顔は、涙でべしょべしょだった。ハンカチを取り出して、そっと当ててやる。

「あの……」
「学園生活でつらいことがあるなら、風紀に来なさい。話くらいは聞ける」

 そう言って、相は去った。

「顔、べしょべしょっすけど……」

 瀧見の声は、相には聞こえなかった。


 《続く》
 
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