「もっと可愛い子と付き合いたい」と恋人に嘆かれている【1】
そんな日々もあったな。
相はしおりを見ながら、うなだれた。
あの日満未にもらったお花は、押し花にして、全部しおりや下敷きにした。かわいらしいものを持っていると悪魔でも憑いたのかと思われるので、一人の時にしか使わないが。
それでも見るたび、幸せな気持ちがふわふわよみがえる。だが、最近はそれが毒になりつつあっった。
満未が変わったのは、中学の頃。成長期が、満未に訪れてからだ。
細くて小さかった満未は、めきめきと背を伸ばし、体格がよくなった。それで自信がついて、性格も怖じ気付かなくなった。そうすると、もとからあった美質が全面、顔にも現れ……道を歩けば振り返られる、すごい美形へと変貌を遂げたのだ。
それについては、相はあまり感慨はない。だって、満未のことはもとから美しいと思っていた。でも、満未の自信がついて、嬉しそうにするのはよかったなと、嬉しかった。
ただ、周囲の反応が変わって、満未はたいそうモテだした。毎日のように告白された。
「久玉君って、なんで郷田原さんとつきあってるの」
「どう考えても似合ってないよね」
「罰ゲームじゃない? 昔の恩を振りかざして……とか」
相との関係に疑問を抱くものが増えたのも、このころから。当然、それは満未の耳にも届いていた。それでも、相はまだ安心していた。外野が言っていることだ、自分たちには絆があるし、と。
けれども、生徒会の
……あんな顔、俺といるときに見たことない。
こういう独白さえ、自分には似合わない。だって当たり前なのだ。自分はあんな可憐で美しい花じゃない。控えめに言って石みたいな男だ。
その場を何気ない様子で去るしかできなかった。けど、現実は、相を逃がしてはくれなかった。
「俺も和希ちゃんや双葉ちゃんみたいな子とつきあいたいな」
と、満未が言い出したのである。
目が覚めてしまったのか。というか世界が開けてしまったのか。今まで俺しか見てなかったから「こんなもんか」で済んでいた美意識が、大海に出て、「こんなに美しいものが世にあったのか」と覚醒してしまったのか。
「俺はもっと可愛い子とつき合えるスペックなんだからね。もっと意識高めてよ」
それが口癖になった。深く受け止め、相も努力はしている。しているのだが……いっかな気づいてもらえない。
とりあえず、明日のお弁当の仕込みでもしよう。
胃袋を掴むといいよって、風紀の後輩の
つらいのはむしろ、自分の恋の話なんて聞いている日下部な気もするので、礼は欠かしていない。
人参をむきながら、相は息をついていた。