俺の友達がバグってる(希結×那智)


「あ」
「こんにちは」

 休みの日に、大と遊ぶ前に時間潰しに入った本屋で顔上げたらあらイケメン。那智さんじゃねーか。ぺこっと頭を下げられ、俺も返す。

「那智どうした?」

 那智さんより奥にいたいかつい男が、那智さんに尋ねる。小脇に楽譜をたくさん持ってた。

「うん。希結のお友達」
「まーた希結ちゃんの話か〜?」

 けらけら笑って肩に肘を置いてる。那智さんは、照れくさそうに笑ってた。距離の近さに驚くが、那智さんは気にしていないようだ。
 っていうか、希結ちゃんて。知らん人が知らんところで死亡フラグ立ててる。
 フラグ男は那智さんを置いて、会計に行ってしまった。俺と那智さんだけが残る。
 やっべ、俺、これくらいの距離感が一番緊張するんだよな。

「お友達ですか?」
「うん」

 希結のために、そっと尋ねてみると、那智さんも何気なく返した。このあっさりした感じは、本当だな。これで違うならこの物語伏線下手すぎんよ。
 俺はそーっと那智さんを窺う。
 近くで見ると尚、綺麗な顔だな。いい顔とも言う。不思議そうに俺を見てるけど、すごいまっすぐ人のこと見るじゃん……。落ち着かないぜ。

「希結の、ええと」
「あっ。鈴木です」
「鈴木くんは、勉強の本を見に?」
「まあ、そうですかね」
「えらいなあ」

 時間潰してただけだけど、話のオチは早く済ませるに限る。ちょっと汗が出るのを笑いながら誤魔化す。

「えーと那智さんは……」
「えっ」
「あ、すみません! 馴れ馴れしかったですよね! 希結から聞いてつい」
「いや、俺こそ名乗りもせずすみません。希結、俺のこと話してたの?」

 おっ!?
 ここはチャンスではないか!?そう思い俺は「はい」と何度も頷いた。

「希結はしょっちゅう那智さんのこと話してるんで!」

 那智さんは目を見開き、顔をぱっと赤く染めた。
 俺、名アシスト! 希結、今度奢れよ! とトクトクとした。那智さんは赤くなって、「そっか」と恥ずかしそうに頬をかいた。
 おっ?
 雰囲気がふわっと柔らかくなって、仕草のあどけなさがいい感じに昇華されてる。

「あの、那智さんって……」
「仁、おまたせ」

 食い気味に希結のこと聞こうとしたら、大がやってきちまった。
 大は那智さんとざっくりと挨拶を交わす。大は不敵にも、握手までして見せた。
 おい、希結に殺されるぞ!
 那智さんも友達が戻ってきたらしく、お開きになる。去り際に、大が「今度良かったら希結の話聞いてください」って言ったら、那智さんは、

「ぜひ!」

 と嬉しそうに笑って俺たちに手を振った。ずっと見えなくなるまで手を振ってた。
 かわいいな。顔はかっこいいけど、挙動が元気で可愛い。

「うーん」
「どした? 大」
「予想、当たっちまったかも」

 大は俺に囁いた。

「あの人オメガだぞ」

 えっ? 全然わからなかった。まあ大は、すげえでかい壁が間にあるとは言え、希結の次に強いアルファだからなあ。俺は軟弱アルファだから、わかんねえ。

「それって希結のこと騙してるってことか?」
「いや、希結がわかんねえはずない。俺たちの予想であってるってこと」

 俺は驚きのあまり、言葉が継げなかった。


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