俺の友達がバグってる(希結×那智)


 テストが終わって、俺たちは凝った体を伸ばしながら昇降口で靴を履き替えた。

「だりー」
「あー、腹減った。何か食ってこうぜ」
「迎えは?」
「パスしとこ。今家帰りたくねーよ」

 だいがスマホで連絡を送る。一番向こうのダチに俺は声をかけた。

「なあ、希結きゆ、どした? えらいしけてんじゃん」
「んー」

 おっそろしく整った、下手すると女子よりもうんと綺麗な顔は、いってもアルファだから、黙ってると威圧的だ。
 けど、俺は一番長い付き合いだから、こいつがべつに不機嫌でないことはわかる。ただスマホを見てるだけだ。

「テストコケたか?」
「別にコケないしあれくらい」

 嫌味っていうより拗ねて聞こえる。こいつ末っ子属性だよな。得だぜ。

「じゃあ何でしけてんの?」
「いや別に……」

 希結はけだるげにチョーカーのついた首に手をやる。なんか最近つけだしたそれは、普通に校則も違反だし、ちょっとオメガの首輪っぽいからややこしいけど、似合ってるから先生も突っ込まない。
 大が、「ん?」と前を見て声をあげた。

「見慣れんやつがいる。高校生?」

 見れば長身の青年が門のところで立って警備員と話してる。凛とした感じのイケメンだけど綺麗な顔だな。

「あの制服って東高だっけ? ここじゃ見ないよな」
「なんだろ? 珍しいな」

 他のダチも頷く。それより早く、飛び出していった影がひとつ。

那智なちくん!」

 希結が普段からは信じられんくらい高い声で、イケメンに駆け寄った。イケメンはくるっと振り返り、にこっと笑って手を振った。おう、惜しみない笑顔ってあんな感じか?

「希結!」
「どうしたの、こんなところに」
「近くまで来たからさ。テストお疲れ」

 にこにこ笑いながら、希結の頭を撫でる。希結ははにかんで笑う。
 はにかむ???

「那智くんこそ、今日は部活の買い出しじゃなかったの?」
「うん。それがさ、先生が迎えに来てくれて、荷物引き取っていってくれたんだ」
「そっかぁ。よかったね」

 ふふ、と笑う希結の周りに、可憐な花が咲いてる幻が見える。
 俺たち、唖然。
 いや、こいつが末っ子属性で、甘えるのが上手いことは知ってるけど、こういう感じでしたっけ……?
 イケメン改め那智さんは、こちらに気づくとぺこりと頭を下げた。俺たちもつられて礼を返す。

「ごめん、友達といたんだな」

 那智さんは、希結にお開きの空気を醸し出した。すると希結は首を振る。

「ううん! もう解散するとこだったし……」

 おいこら! そんなこと一言も言ってねーぞ!
 俺たちの心は一つだったが、それを口にする度胸はなかった。希結は可愛い顔をして、俺たちの中で一等強いアルファだ。ダチを脅すような奴じゃないけど、恩恵を受けてる身としては、というか、まあ友達としてね。はい。

「そうか?」
「うん、だよね?」

 くるっと振り返って念押してくる希結に、俺たちは頷く。
 怖いよ!
 だよねって、そんな甘い感じの尋ね方したこと一回もないだろ!

「そうです! お構いなく」

 しかし俺たちは、ぶんぶんと頭を縦に振った。
 那智さんはちょっときょとんとこっちを見てたけど、なにか納得したのかにこっと笑ってきた。

「ありがとう」

 と爽やかに俺たちに言って、希結に向き直る。

「じゃあ、一緒に帰るか!」
「うん! じゃあ、また明日」

 希結は天使のような笑顔で俺等に手を振ると、那智さんとにこにこ笑って連れ立っていった。希結が甘えるみたいに那智さんの腕を取る。那智さんはくすぐったそうに笑ってた。
 すごい甘い空気に、俺たちは無言だった。
 言いたいことはあったが、言ったら何か決壊しちまいそうで、俺たちは、二人が去ってから一分くらい黙って一斉に声をあげた。

「なんだ今の!?」


 
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