2025年バレンタイン拍手
バレンタイン。それは自分にとって、日ごろの礼を告げるとか、儀礼的なものであるはずだった。
「
生徒たちが口々に、
そう、2月14日。この日は、和希の思い人である、間地幸人の誕生日なのだ。
幸人は今年、中等部からこの
こういう華やいだ空気がとても似合うし、その日が誕生日っていうのもまた似合っている。
「あの、
「はい」
「これ、いつもありがとうございます」
「田中くん。こちらこそ、委員会では、ありがとうございました」
クラスメートの田中――和希は生徒の名前は把握している――が、和希にチョコを渡した。和希はありがたくそれを受け取る。
和希は鞄から、そっと小さなお菓子の包みを差し出す。こうしていただいたときに、返せるようにしていた。
「これからも頑張っていきましょう」
「はい!」
田中は頭を下げて、去っていった。賛辞を受けることはあっても、あまりこういった好意を受け取ることは少ない。
少し申し訳ないような面映ゆさをかかえて、チョコを見ていると、ぽんと肩を叩かれる。その好意的な触れ方に、もしかして、とふりかえる。
「間地君……!」
やっぱり、幸人だった。和希の顔がぱっと火照る。ジャケットの下に、学校指定ではないセーターを着た幸人は、じっと和希の顔をのぞきこんだ。
「何話してたんだ?」
「委員会のお礼にと、いただいたんです」
手の中の包みを確かめるように見て、それから和希は受け取り専用のカバンにいれた。さて、それから和希は沈黙する。
受け取り専用じゃない方の鞄の存在感が、増した気がした。どきどきと胸が高鳴っている。
「あの……」
「ん?」
「その、間地君、今日お誕生日ですよね?」
ものすごくへたくそな切り出しだが、和希は一生懸命だった。顔が真っ赤に火照る。幸人は、「ああ」と晴れやかに笑った。あんまり素敵で、胸がいっぱいになる。
「おめでとうございます。その、間地君とあえて僕は、よかったと思っていて。ですから、今日は特別な日で……」
上手く気持ちが伝えられず、和希の思考はいっぱいいっぱいになる。もう何を話しても駄目な気がして、和希は鞄から、それを取り出した。
「これ、よろしかったら。僕の気持ちです」
プレゼントと、チョコレートの入った袋を、幸人に差し出した。
指先まで、心臓の音が響いていた。
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