俺たちの絆のかたち(俺だけいつも枠の外)
「ただいまー」
家に帰ると、荷物を置いて塾に向かった。もうお開きの時間だけど、少しだけでも顔を出したい。
教室は明るくて、賑やかだった。
「攻めくん、ここわかんない!」
「だから、ここはさっきと同じ問題だ」
「数字が違うじゃん」
「理屈をみろ」
「――攻め?」
俺の言葉に、皆、顔を上げた。
「あ! 受けくん、お帰り!」
「学校お疲れ様ー」
生徒の皆がにこにこ、声をかけてくれる。俺も笑って頷く。攻めに俺は駆け寄った。
「どうしたの?」
「暇つぶしだ。友の様子を聞かなきゃだしな」
ふん、と腕組みする攻めの服を、皆が引っ張る。
「攻めくん、ここわかんない!」
「こら、じっとできねえのかお前らは!」
困りながらも、面倒を見てる攻めを、俺はぽかんと眺めてた。どうしたんだろ。
「おかえり、受け」
「母さん」
ただいま。見上げた顔に、疑問が全部のってたみたい。母さんは笑った。
「久しぶりに来てくれてね。ああして迎えを待ってる子の勉強見てくれてるの」
「だから、ここは公式を見ろって言ったろ!」
叱りながら、面倒を見る横顔は、なんかあどけない。思わず見惚れちゃった。
「そうなんだ」
母さんはにこっと笑った。そして、攻めを見る。
「さみしいのね」
俺は、はっとする。俺の肩に手を置いた。
「ごはん、食べていってもらって」
「ありがとう、母さん」
母さんの気遣いに、俺はお礼を言った。
二人きりのテーブルで、俺と攻めはごはんを食べてた。うちは塾で忙しいから、ごはんは全員別々なんだ。静かな部屋に、食器の音が響いてた。
「友は?」
煮物を食べながら、攻めが聞いた。俺は、攻めの横顔を見つめる。頼りない顔してる。
「あのね……」
俺の言葉を聞いて、気になるところは突っ込んできた。でも、いつもの元気がない。本当は、友の口から、聞きたいんだよな。俺は切なくなった。
「友、攻めにすごく会いたがってたよ」
攻めが目線をこっちに向ける。
「連絡もね、さみしいから、取りたくないんだって」
攻めが、目を見開いた。期待の光が宿ったのに、俺は笑う。
「攻め。俺、ふたりの架け橋になるよ」
俺は笑う。
「だから、変わらないよ。大丈夫」
励ますように拳を握って、目力を込めた。攻めは、黙ってた。
「……お前が架け橋とかなめてんのか」
攻めがそっぽを向いて言う。
「お前は俺の傀儡だ、わかったな」
「いたっ!」
額を突かれて、俺は苦笑した。痛いけど、ほんのちょっと、戻った調子にホッとする。