俺たちの絆のかたち(俺だけいつも枠の外)
「こんにちは」
友の家。出迎えてくれた家政婦さんに、挨拶していると、家の奥から慌ただしい足音が近づいてきた。
「――攻めっ……!」
友が、涙に濡れた顔で、飛び出してきた。けど、俺を見て、嬉しげな笑顔が固まる。頬に涙が伝った。
「友……お邪魔してます」
なんだか申し訳なくて、眉を下げる。家政婦さんが、「坊ちゃま、安静にしていなくては」と、たしなめた。友は呆然と壁にもたれた。こわばった目から、ぼろぼろと涙がこぼれる。肩を落とすと、ふらりと背を向けて部屋に戻った。俺は、家政婦さんに促され、部屋についていった。
「友……体調はどう?」
部屋にふたり。友はベッドに座り無表情で、壁をじっと見つめてた。白いほおに、はたはたと涙が落ちてる。
「最悪だ……今すぐ消えたい」
「そ、そんな」
物騒な言葉に、俺は荷物をおいて、立ち上がる。ささっと友に寄った。
「そんなこと言わないで! 友がいなくなったら――」
「俺がいなくなっても、誰も困らない!」
友は叫んだ。悲痛な声に、俺も固まる。
「友、」
「父さんも母さんも、きっとせいせいする!」
友は布団を握りしめた。ぎゅってつむった目から、ぼろぼろ涙がこぼれた。
「こんなことになっても、帰ってもこない!」
友の息が荒くなる。俺は慌てて背中を擦った。
「俺と攻めを引き離したくせに……っ! いなくなれって思ってるんだ!」
「そ、そんなことないよ!」
「受けに何がわかるんだ!」
涙に濡れた目で、きっと睨まれる。
「親に愛されてるくせに、知った口聞かないでくれっ!」
くしゃりと顔を悲しくゆがめた。
「攻めだって、来てくれない……!」
ひっと、友の喉から嗚咽が漏れる。
「周りがどう言ってもいいじゃないか! 簡単に、俺のことを捨てた……!」
「友」
「もうどうなってもいいんだ!」
だんだんと、布団越しに、友は自分の足を叩く。
「誰も俺を思ってくれない! 俺はひとりぼっちだ……!」
友は悲痛に泣いた。俺は、友を抱きしめる。
「触らないでくれ!」
突き飛ばされて、尻もちをついた。友はベッドの上で、俺を燃えるような目で睨んでた。
「見せかけなんていらないっ……攻め! 攻めに会いたい……!」
「――せ、攻めは友を思ってるよ!」
俺は咄嗟に叫んでた。友が止まる。俺は、急いで、荷物を持ってきた。
「ほ、ほら! これ、攻めから……!」
荷物を開いて見せる。攻めからのお見舞いが、たくさん詰まってる。
「友にお見舞いにって……!」
励ますように、色々見せる。友は、ベッドに座って、それを見てた。けど、ふっと笑った。
「……お前に渡してって頼ったのか?」
「違うよ!」
いや、そうなんだけど。友の声が、寂しそうだったから。俺は、一生懸命言葉をつむぐ。
「ほら! 見て。これ攻めからの指令ノート……」
攻めから渡されたノートを、友に見せる。
「ほら、すごいでしょ。友のためにこうしてあげてって……」
友は、パラパラとそれをめくった。
「俺だってね、友のお見舞いしたいって言ったのに。『お前は俺の代わりなんだから傀儡でいろ』って!」
俺は攻めの真似をして、笑った。
「ひどいでしょ? 俺だって心配してるのにさ……」
「……ふふ」
友は、笑った。涙と一緒に、笑みがこぼれる。攻めのノートをぎゅっと握って、額を寄せた。
「ごはんを食べる」
「友……!」
「攻めから預かったんだろう?」
「わかった! えっと、じゃあ悪いけどそれ……」
「いや」
友はいたずらっぽく笑う。ぱらぱらとノートを開いた。
「俺が読み上げるから、そう動いてくれ」
ぴしっと指をさされて、俺は笑った。なんか、ちょっとしょっぱかった。