一緒の時間を過ごしたい(俺だけいつも枠の外)
「おはよー」
翌朝。俺は、高らかにあいさつし、席に着く。今から食べるのが楽しみだ。にこにこしてると、友は首を傾げた。
「どうした? さっきから……」
「んーん。今日、楽しみにしててな!」
友はいっそう、首を傾げていた。
そして、放課後。俺は廊下を急いでいた。
「あー、こんなにかかるとは」
まさか、職員室で、先生につかまるとは思わなかった。お昼もなんだかんだで、時間なかったし……。
「でも、今から自由だもんね。どらやき!」
俺はクラスに滑り込んだ。
「友! 攻め!」
目を瞬かせる。対面に座った、攻めと友が、何か囲んでた。
「遅い」
攻めが仏頂面で、振り返る。
「およ……」
友が指でつまんでる、淡くて丸いそれは、マカロンだ。きれいに箱に詰められて、机の上に鎮座してる。まばたきを、二回、三回して、俺は顔を輝かせる。
「おやつ食べてたの? ちょうどよかった」
俺は自分の席へ向かい、カバンを漁った。
「じゃん」
バターどら焼きを三つ、机にのせる。友と攻めが、見下ろした。俺は得意に胸を張る。
「昨日買ってきたんだ〜! 一緒に食べよ」
友は、どら焼きを手に取り、じっと眺めていた。そして、ものすごく気まずそうな顔をした。
「受け……すまない」
どら焼きを机に置いて、片手を上げた。
「マカロンで、これは入りそうにない……」
「間が悪すぎだろ。甘いもの食ってるときに渡すか?」
「あっ」
そ、そうか。偶然といえ、気が利かなかったかも……。
「じゃ、じゃあ、とりあえず俺食べようかな。あっでも、ほしかったら言ってな!」
「いらん」
バッサリ。周囲から笑い声が立つ。俺はどら焼きを開封してひとくちかじった。
「うまっ! これすごいうまいよ!」
目を輝かせた。女の子たち、ありがとう! 感激していると、友がマカロンを摘みながら、しゅんとうなだれた。
「すまない……」
「うるせえ」
攻めが俺をはたく。
「友に気を使わせんな」
「いや、気を使わないほうが変だろう」
俺はごくんと飲み下す。
「じゃ、じゃあ。俺もマカロン……」
マカロンに手を伸ばそうとすると、攻めに箱ごと避けられた。コントみたいに俺は机を滑る。
「ふざけんな! これは俺が友のために作ってきたものだ」
攻めの言いっぷりに皆がウケる。
「そ、そう言わずに恵んでよ」
「誰がやるか!」
言い合ってると、間ににゅっと、マカロンののった手が差し出された。
「受け、やる」
友だった。
「ありがとう……」
攻めが優しい声で友に言う。
「友、こいつに情なんてかけなくていいんだぞ。飢えさせとけ」
「ひどい!」
わはは……と周囲が笑い声に満ちる中、俺はマカロンを食べた。甘くて美味しかった。
それから、おひらきの時間になった。結局、どら焼きは一個余った。けふ、と俺はおなかをさする。ちょっと食べすぎた。
「受け、お前二個食いとか」
と友達に笑ってこづかれる。
「おいしかったから、つい」
と照れ笑いしてたら、攻めに頭を殴られた。
「なんでっ」
頭を押さえてると、友がおずおずと手を差し出す。
「受け、それもらってもいいか? 塾で食べるから」
俺はそれを聞いて破顔する。
「友ー!」
ういやつめ〜! 俺はどら焼きを両手で差し出した。
「はいっ」
「ありがとう」
ほわりと笑う友に、「おいしいぞ!」と笑い返すとまた攻めに頭に拳を落とされた。
だからなんで!? 周囲の笑いの中、俺は頭を抱えてた。
「じゃあ」
校門で、二人と分かれる。俺は「塾頑張ってな」と手を振った。あかね空の向こうに、小さくなる背をじっと見つめる。黒い影になったころ、そっと手をおろした。
夕焼けって、なんか明るいのに暗いね。何も変わらないのになあ。俺もまた、家路についた。