学期末の頃(あの日にまだ縋ってる・星視点)


 俺が尋ねると、理央は「うん」と頷いた。

「今日は皆といたい」
「そっか」

 可愛い奴め。理央は一学年下の早瀬瀧(はやせたき)ってやつに、ずっと片想いしてるんだ。すげーアルファで首席だから、俺らも知ってる。目が覚めるみたいな美形だけど、氷みたいに冷たそうなやつ。
 来年からは早瀬も高等部で同じ校舎になるから、理央は会いに行けるって楽しみにしてるんだよな。

「そういやさ、俺らこんどライブするんだ」
「そうなの? すごい」
「叔父さんがやってるライブハウスなんだけど、体調よかったら来てくれよ」
「行く!」

 廊下を行きながら、俺達は、春休みの予定を話す。
 俺らは、結構ガチで音楽やってて。SNSに自作曲も上げてる。親を黙らせるために進学校来たけど、いずれミセスみたいになろうって話してんだ。そんなんだから部活でも浮いてるけど、楽しくやってる。
 理央が目をキラキラさせて、俺等の話を聞いた。俺等のこういうガチな話は、理央にしかしない。だって笑われるのはムカつくしな。

「今日も歌ってくれる? あの曲」
「おう! と言いてーけど、ちょっとだけな。あとはライブでのお楽しみ」

 理央は「すごいなぁ」と笑ってた。
 理央は、ぶっちゃけ学校休みがちだし、付き合いだっていいわけじゃない。けど、なんか俺らのグループってはっきり言えるやつ。

「早瀬くんとの話も聞かせろよ。曲にするからよ」
「ええっ」
「よせよ」

 笑って、俺等は昇降口を抜けた。

「じゃ、いったん解散なー」
「駅前のカラオケな」

 そう言って、互いに手を振る。校則きつくて、寄り道すると下手すると停学になんだ。
 各々バラけてく中で、理央が、遠くを見てた。中等部の校舎のある方角だ。あんまりさみしい、切実な顔で見上げてるから、

「行こうぜ」

 俺は理央の背を叩いた。

 《完》


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