「笑顔が嘘くさい」と言ってきた転校生が恋人の親友になった
薄暗がりの部屋に、和希の切羽詰まった声が響いていた。
恥ずかしがって、必死に顔を隠すのを、幸人が阻む。
「全部見せて」
和希が泣きながら、自分にすべてを余さずさらして、ゆるすのに、幸人は安堵を覚える。
「和希の全部、俺が愛してやるから」
和希の目にも、涙以外の色が浮かんでくる。それは、きっと自分と同じ色をしている。
しだいに、互いの影と息遣い、体温だけが頼りになる。汗ばんだ手で、和希の体を確かめると、和希の手も、幸人をなぞった。
「好き、幸人」
ささやいた愛ごと、和希の息をのむ。和希もまた、幸人の息を吸った。高みに追いやられて、ずっと二人、ずっと、「ひとつ」のまねごとをする。
抱きしめてなお遠くなるのを恐れるように、二人は必死に、互いを自分に取り込もうとしていた。
「好き」
やがて、夜が朝になる。離れるときを恐れるように、二人は眠りに落ちる。
影が、ひとつになれないふたりを、じっと結び付けた。
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