第一章 ~再会~(49P)
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一旦源外の工房まで足を運んだ二人だったが、お互い疲れたからと改めて再会を約束してその場は別れた。
今は万事屋へと戻るため、スクーターを走らせている。
「ねぇシロ。土方さんに全部任せてしまって良かったのかな? 割と大変そうだけど」
慌ただしくすれ違うパトカーを気にしながら、柚希が言った。
「こちらに都合の良い話しかしてない事を分かってるはずなのに、深くは聞かないでいてくれて……良い人だね、土方さんって」
「何なに、随分アイツに肩入れしてんじゃねェの。ひょっとして惚れちゃったってか?」
「……そうかもね」
「え? マジで!?」
冗談で聞いた答えが予想外で、慌てた銀時のハンドルがぶれる。ギリギリのところで立て直したが、一歩間違えれば大変なことになっていたかもしれない。
「ちょっとシロ! しっかり運転してよ!」
「悪ィ。でもお前が変な事言うからよォ」
拗ねるように口を尖らせる銀時に、柚希はため息を吐きながら言った。
「あのねぇ……『惚れる』にも色々あるでしょうが。いい大人なんだから、その辺読み取ってよね」
「へいへい」
呆れたように言いながらも、自分に抱き着いている腕の力が強まった事に気付いた銀時は、小さく微笑む。素直になり切れないこの行為が、柚希が側にいるのだと実感させていた。
「まァ土方君は大丈夫でしょ。なんてったって真選組のナンバー2だし、あれでもやるときゃやる男だぜ」
「そっか。……シロの周りは、とことん良い人ばかり集まってるんだねぇ」
「ハァ!? どこに良い人なんざいるんだよ。どいつもこいつもヤバい奴ばっかだってェの」
「あ、ヤバい奴の筆頭がココに」
「何で俺ェッ!?」
バカバカしい掛け合いも、今は嬉しい。決して心が晴れているわけでは無かったが、それでもようやく柚希の記憶が戻った事が銀時の心を明るくしていた。
無事に万事屋へと戻った二人が部屋に入ると、中はもぬけの殻だった。
「新八ィ、神楽ァ、帰ったぞー」
銀時が呼び掛けても返事は無く。変だなと思いながら机を見れば、そこにはメモが残されており、どうやら二人とも外出しているようだった。
「新八はお妙の買い物の付き添い、神楽はそよ姫ンとこか。こりゃしばらく帰ってこねェだろうな」
「そっか。じゃぁ二人が帰るまで少しゆっくりしておく? あ、でもその前に着替えるわ。奥の部屋使うね」
「おう」
冷蔵庫にいちご牛乳を取りに行った銀時の姿を確認し、襖を閉める。
帰宅早々着替えるのは、先ほど沖田と戦った際に着物を切られていたから。改めて自分の胸元を見た柚希は、奇麗に一枚だけを切り裂いていた沖田の腕に感心していた。
「あのスピードであそこまで自在に刀をコントロールできるなんて、並の剣客じゃないわ。攘夷戦争の頃にも様々な猛者はいたけど、ここまでの腕の持ち主はなかなかいなかったなぁ」
「将来有望な若者だねぇ」としみじみ頷きながら切られた着物を脱ぎ落とせば、一緒にハラリと落ちる数枚のしおれた花びら。しゃがみ込んでその中の一枚を摘まむと、柚希は優しく微笑みかけた。
「ねぇ親父様。やっぱりこの花は『希望』だったよ。花の香りが、ギリギリのところで私を踏みとどまらせてくれたの。『におい』は良きにつけ悪しきにつけ、深く記憶に刻まれるものだから……」
銀時と花畑に行った時。記憶は無いにも関わらず、この花が懐かしくて仕方なかった。特に香りは柚希の心を突き動かし、無意識に『希望』という言葉を導き出させていたのだ。
それほどまでにこの白く小さな花は、柚希にとって思い出深い物だった。
「せっかく思い出せたんだし、また近い内にあそこには連れてってもらわなきゃね」
そう言って柚希は脱いだ着物を畳み、上に花びらを乗せる。
「えーっと、どれを着ようかなぁ」
着替えにあまり時間をかけていては、怪我でもしていたんじゃないかと銀時が心配してしまうかもしれない。下着姿でノンビリもしていられないと、柚希は部屋の隅に置いていた風呂敷を開け、いそいそと着替えを選び始めた。
そこに突然聞こえた、ギシリという物音。
咄嗟に飛び上がって構えた柚希の背後を取り抱きしめたのは、隣の部屋にいるはずの銀時だった。
今は万事屋へと戻るため、スクーターを走らせている。
「ねぇシロ。土方さんに全部任せてしまって良かったのかな? 割と大変そうだけど」
慌ただしくすれ違うパトカーを気にしながら、柚希が言った。
「こちらに都合の良い話しかしてない事を分かってるはずなのに、深くは聞かないでいてくれて……良い人だね、土方さんって」
「何なに、随分アイツに肩入れしてんじゃねェの。ひょっとして惚れちゃったってか?」
「……そうかもね」
「え? マジで!?」
冗談で聞いた答えが予想外で、慌てた銀時のハンドルがぶれる。ギリギリのところで立て直したが、一歩間違えれば大変なことになっていたかもしれない。
「ちょっとシロ! しっかり運転してよ!」
「悪ィ。でもお前が変な事言うからよォ」
拗ねるように口を尖らせる銀時に、柚希はため息を吐きながら言った。
「あのねぇ……『惚れる』にも色々あるでしょうが。いい大人なんだから、その辺読み取ってよね」
「へいへい」
呆れたように言いながらも、自分に抱き着いている腕の力が強まった事に気付いた銀時は、小さく微笑む。素直になり切れないこの行為が、柚希が側にいるのだと実感させていた。
「まァ土方君は大丈夫でしょ。なんてったって真選組のナンバー2だし、あれでもやるときゃやる男だぜ」
「そっか。……シロの周りは、とことん良い人ばかり集まってるんだねぇ」
「ハァ!? どこに良い人なんざいるんだよ。どいつもこいつもヤバい奴ばっかだってェの」
「あ、ヤバい奴の筆頭がココに」
「何で俺ェッ!?」
バカバカしい掛け合いも、今は嬉しい。決して心が晴れているわけでは無かったが、それでもようやく柚希の記憶が戻った事が銀時の心を明るくしていた。
無事に万事屋へと戻った二人が部屋に入ると、中はもぬけの殻だった。
「新八ィ、神楽ァ、帰ったぞー」
銀時が呼び掛けても返事は無く。変だなと思いながら机を見れば、そこにはメモが残されており、どうやら二人とも外出しているようだった。
「新八はお妙の買い物の付き添い、神楽はそよ姫ンとこか。こりゃしばらく帰ってこねェだろうな」
「そっか。じゃぁ二人が帰るまで少しゆっくりしておく? あ、でもその前に着替えるわ。奥の部屋使うね」
「おう」
冷蔵庫にいちご牛乳を取りに行った銀時の姿を確認し、襖を閉める。
帰宅早々着替えるのは、先ほど沖田と戦った際に着物を切られていたから。改めて自分の胸元を見た柚希は、奇麗に一枚だけを切り裂いていた沖田の腕に感心していた。
「あのスピードであそこまで自在に刀をコントロールできるなんて、並の剣客じゃないわ。攘夷戦争の頃にも様々な猛者はいたけど、ここまでの腕の持ち主はなかなかいなかったなぁ」
「将来有望な若者だねぇ」としみじみ頷きながら切られた着物を脱ぎ落とせば、一緒にハラリと落ちる数枚のしおれた花びら。しゃがみ込んでその中の一枚を摘まむと、柚希は優しく微笑みかけた。
「ねぇ親父様。やっぱりこの花は『希望』だったよ。花の香りが、ギリギリのところで私を踏みとどまらせてくれたの。『におい』は良きにつけ悪しきにつけ、深く記憶に刻まれるものだから……」
銀時と花畑に行った時。記憶は無いにも関わらず、この花が懐かしくて仕方なかった。特に香りは柚希の心を突き動かし、無意識に『希望』という言葉を導き出させていたのだ。
それほどまでにこの白く小さな花は、柚希にとって思い出深い物だった。
「せっかく思い出せたんだし、また近い内にあそこには連れてってもらわなきゃね」
そう言って柚希は脱いだ着物を畳み、上に花びらを乗せる。
「えーっと、どれを着ようかなぁ」
着替えにあまり時間をかけていては、怪我でもしていたんじゃないかと銀時が心配してしまうかもしれない。下着姿でノンビリもしていられないと、柚希は部屋の隅に置いていた風呂敷を開け、いそいそと着替えを選び始めた。
そこに突然聞こえた、ギシリという物音。
咄嗟に飛び上がって構えた柚希の背後を取り抱きしめたのは、隣の部屋にいるはずの銀時だった。