第一章 ~再会~(49P)
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「そうじゃ。確かにこのピアスは壊れて外れたが、全ての機能が停止しているとは限らん。この中に玄黒の技術や記憶が残されていれば、いつか誰かが解読し、悪用することもあるじゃろう。それにお前さんも、元々は白夜叉をおびき寄せる為に捕らわれていたようだが、攘夷戦争が終わってもう何年も経つってのに、白夜叉が生きてるかどうかも分からない今日まで飼い殺されてた事に、疑問は感じねェかい? 今となってはそれはちっぽけなモンで、奴らはお前さんの頭ン中の方に重きを置いてるとワシは踏んどる。だとすれば今ここで存在をまとめて完全に抹消しておけば、狙われることも無くなるはずじゃ。きっと玄黒もそれを望んでおるじゃろうて」
そう言った源外は手の中のピアスを見つめた。
「アイツは昔から完璧主義じゃったからなァ。全てをきちんと終わらせてやらんと、ゆっくり眠る事もできんじゃろうて。ワシに最後を託したからには、応えてやらにゃなるめェよ」
フッと零した笑みに宿る、友を亡くした悲しみ。それを見た柚希は思わず泣きそうになり、強く下唇を噛み締めて耐えた。
そんな二人の気持ちを他所に、土方が聞いてくる。
「ジジイの言いたいことは分かったが、全てを抹消なんて簡単にできんのかよ。死ななきゃ取れねェピアスの破片でもありゃァ、とりあえずはごまかせるかと思ったが、そいつが無けりゃ何をもってこの女が死んだ証拠にする? 少なくとも、俺たちだったら死体を見るまで納得しねェぞ」
それは最もな意見であり、難しい問題かと思われた。――が。
「だからきちんと終わらせるんじゃよ。こうやって、な」
答えは簡単だとばかりにチラリと土方を見た源外が、懐から取り出したもの。手の中でいかにも爆発しますと主張している丸い玉には、長めの導火線が付いていた。
「およそ十秒。全速力じゃぞ」
そう言ってニヤリと笑った源外は、器用にマッチを擦った。
「ちょっ、ジジイ!?」
「待てじーさん! って本気かよ! 柚希、走れ!」
「えぇぇっ!?」
源外が、握っていた壊れたピアスの欠片を全て倉庫の奥へと投げ、導火線に火を点けた爆弾も投げ込む。慌ててその場から逃げ出した四人は丁度十秒後、背中に大きな爆発音を聞くこととなった。
「……イカレ過ぎだろ、このジジイ……」
立ち上る煙を、自らが吐き出す紫煙と共に見ながら土方が言う。原形を留めていない倉庫は、元の姿を知らなければ何があったのかも分からない。
「こりゃァ、あそこにあったモンはきれいさっぱり吹き飛んじまうわなァ。人も物も、何もかも……どうすんの、副長さん」
ニヤニヤと笑いながら肘で突いてくる銀時を鬱陶しそうに睨みつけた土方は、もう一度深く煙草を吸い込んだ。空を仰ぎ、煙で大きな輪を作りながらその向こうにある物を見つめる。そしてその輪を自ら吹き飛ばすと、心底嫌そうにもう一度銀時を睨んだ。
「……クソッ。万事屋に関わるとほんとに碌なことがねェ」
「はい? 何で俺のせいなんだよ。派手にやらかしたのはこのじーさんじゃねェか」
「じーさんもこの女も、お前の知り合いだろうが。だったら全部テメェが悪い」
「んだとォ!?」
土方の言葉に納得がいかず、噛みついてくる銀時を「邪魔だ」と押しのけ、今度は柚希を見る。それに気付いた柚希がまっすぐ視線を返せば、チッと舌打ちした土方はガシガシと頭を掻きながら言った。
「捕り物の最中、『たまたま転がって』いた火薬に引火し爆発炎上。被疑者死亡につき真選組は本件を手放す。尚現場の損壊著しく、捜索しても遺体は発見できなかった。……元々詳しい事情なんざ聞かされてねェんだ。捕り物の相手が死んじまったんじゃ、上もどうこう言えねェだろ。ま、ピアス云々よりはよっぽど現実的だァな」
「土方さん……」
それを聞いて嬉しそうな笑顔を浮かべ、「ありがとうございます」と頭を下げる柚希に照れたのか、少し頬を赤らめた土方は「おう」と小さく答える。そして携帯を取り出して誰かにかけ始めた。
「後の事は俺らがやるから、お前らはさっさと消えちまえ。あんだけ派手な事をやってんだ。下手すりゃごまかし切れねェ輩がすっ飛んでくるかもしんねェしよ。……あァ山崎か? 悪ィがすぐ例の現場に来てくれ。ちと厄介ごとの処理を任してェ」
最後は電話が繋がり、さっさと消えろと手を振りながら、電話の向こうの山崎に状況を説明する。
柚希達は頷きあうと、土方に声をかけることなく急いでその場を後にしたのだった。
そう言った源外は手の中のピアスを見つめた。
「アイツは昔から完璧主義じゃったからなァ。全てをきちんと終わらせてやらんと、ゆっくり眠る事もできんじゃろうて。ワシに最後を託したからには、応えてやらにゃなるめェよ」
フッと零した笑みに宿る、友を亡くした悲しみ。それを見た柚希は思わず泣きそうになり、強く下唇を噛み締めて耐えた。
そんな二人の気持ちを他所に、土方が聞いてくる。
「ジジイの言いたいことは分かったが、全てを抹消なんて簡単にできんのかよ。死ななきゃ取れねェピアスの破片でもありゃァ、とりあえずはごまかせるかと思ったが、そいつが無けりゃ何をもってこの女が死んだ証拠にする? 少なくとも、俺たちだったら死体を見るまで納得しねェぞ」
それは最もな意見であり、難しい問題かと思われた。――が。
「だからきちんと終わらせるんじゃよ。こうやって、な」
答えは簡単だとばかりにチラリと土方を見た源外が、懐から取り出したもの。手の中でいかにも爆発しますと主張している丸い玉には、長めの導火線が付いていた。
「およそ十秒。全速力じゃぞ」
そう言ってニヤリと笑った源外は、器用にマッチを擦った。
「ちょっ、ジジイ!?」
「待てじーさん! って本気かよ! 柚希、走れ!」
「えぇぇっ!?」
源外が、握っていた壊れたピアスの欠片を全て倉庫の奥へと投げ、導火線に火を点けた爆弾も投げ込む。慌ててその場から逃げ出した四人は丁度十秒後、背中に大きな爆発音を聞くこととなった。
「……イカレ過ぎだろ、このジジイ……」
立ち上る煙を、自らが吐き出す紫煙と共に見ながら土方が言う。原形を留めていない倉庫は、元の姿を知らなければ何があったのかも分からない。
「こりゃァ、あそこにあったモンはきれいさっぱり吹き飛んじまうわなァ。人も物も、何もかも……どうすんの、副長さん」
ニヤニヤと笑いながら肘で突いてくる銀時を鬱陶しそうに睨みつけた土方は、もう一度深く煙草を吸い込んだ。空を仰ぎ、煙で大きな輪を作りながらその向こうにある物を見つめる。そしてその輪を自ら吹き飛ばすと、心底嫌そうにもう一度銀時を睨んだ。
「……クソッ。万事屋に関わるとほんとに碌なことがねェ」
「はい? 何で俺のせいなんだよ。派手にやらかしたのはこのじーさんじゃねェか」
「じーさんもこの女も、お前の知り合いだろうが。だったら全部テメェが悪い」
「んだとォ!?」
土方の言葉に納得がいかず、噛みついてくる銀時を「邪魔だ」と押しのけ、今度は柚希を見る。それに気付いた柚希がまっすぐ視線を返せば、チッと舌打ちした土方はガシガシと頭を掻きながら言った。
「捕り物の最中、『たまたま転がって』いた火薬に引火し爆発炎上。被疑者死亡につき真選組は本件を手放す。尚現場の損壊著しく、捜索しても遺体は発見できなかった。……元々詳しい事情なんざ聞かされてねェんだ。捕り物の相手が死んじまったんじゃ、上もどうこう言えねェだろ。ま、ピアス云々よりはよっぽど現実的だァな」
「土方さん……」
それを聞いて嬉しそうな笑顔を浮かべ、「ありがとうございます」と頭を下げる柚希に照れたのか、少し頬を赤らめた土方は「おう」と小さく答える。そして携帯を取り出して誰かにかけ始めた。
「後の事は俺らがやるから、お前らはさっさと消えちまえ。あんだけ派手な事をやってんだ。下手すりゃごまかし切れねェ輩がすっ飛んでくるかもしんねェしよ。……あァ山崎か? 悪ィがすぐ例の現場に来てくれ。ちと厄介ごとの処理を任してェ」
最後は電話が繋がり、さっさと消えろと手を振りながら、電話の向こうの山崎に状況を説明する。
柚希達は頷きあうと、土方に声をかけることなく急いでその場を後にしたのだった。