第一章 ~再会~(49P)
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「その後数日追っ手を振り切りながら、何とかかぶき町へとたどり着き、ますます混乱する記憶に翻弄されながらも今日を迎えた――。ざっくりと言えば、こんな感じですかね」
長い話を終え、少し疲れたように言った柚希は大きくため息を吐く。そんな柚希の話に聞き入っていた三人の男たちは、『ざっくり』と言うにはあまりに濃厚な話に言葉を失っていた。
「全てを思い出した今、ピアスを外す直前までの私の記憶とは色々と食い違いがあるのですが……少なくともあの時の私は不安の中、所長だけは覚えていました。どんな時でも側にいてくれて、何があっても私を庇ってくれる、父のような存在だったからかもしれません」
玄黒の顔を思い出しているのだろうか。悲し気な笑みを浮かべる柚希は、見ているだけで胸が痛くなった。
「だからこそ生き延びることももちろんですが、何としてでも源外様にお会いしたかった。所長の集大成はご覧いただけましたか?」
そう柚希が話を振れば一瞬、眉をピクリと動かした源外だったが、すぐにニヤリと歯をむき出しにして笑う。
「おうよ、しっかり見せてもらったわい。色々と面白かったぞ」
カカカと高笑いをする源外に、柚希がホッとしたように微笑むと、それを見た銀時と土方もまた柚希の気持ちを思い、胸を撫で下ろした。
「扇子にはマイクロチップが仕込まれておってな。そこに色々な情報が書き込まれておったわ。元々ピアスはどこぞの天人が持ち込んだ技術だったそうじゃが、地球人向けに改造するために玄黒の医学的知識を使うとは、春雨も考えたもんじゃ。まァそこを逆手に取って玄黒が一人で研究を進められるよう仕組み、春雨には詳細を渡さなかったわけじゃが」
自分たちに必要な知識を持つ者を消してしまうほど、春雨も浅はかでは無い。だからこそ玄黒は、少々勝手をしても見逃されているところはあった。
そして柚希もまた、その全てを受け継ぐ唯一の者として一目置かれてはいたのだ。但し元攘夷志士であり、白夜叉達と共闘していた事も知れ渡ってはいたため、大きな恨みを買ってもいた。
今となっては聞くこともできないが、玄黒はきっと、均衡を保つために最大限の努力をしていたのだろう。
「自死機能とキーワードによる洗脳機能の解除にまでは至らなかったものの、専門分野で無いにも関わらず、ここまで天人の技術を自分の物にしたあやつはやはり天才じゃ。ただし、ワシの次に……じゃがな」
そう言った源外は、何故か土方の方を向いて、何かを寄こせと言うように手を出した。
「あん? 何だよその手は。煙草か?」
前振りもなく、いきなり差し出された手の意味が分からずに戸惑う土方だったが、その答えはいきなりポケットに手を突っ込まれることで示される。
「な、何しやがる! おいジジイ、テメェ……ッ!」
驚いて中を探る源外の腕を掴もうとしたが、器用にスルリと逃げられてしまった。その手には、先ほど柚希から渡された壊れたピアスが握られている事に気付き、チッと舌打ちする。
「ジジイ、それ返せ」
土方が睨むと、源外は「おお、怖い怖い」と言いながら銀時の後ろに隠れてしまった。
「何やってんだよじーさん。っつーか、何がしたいのか銀さんさっぱりなんですけど」
ずっと黙り込んだまま様子を伺っていた銀時が、源外に絡まれたことでようやく話に入ってくる。いつもの死んだ魚のような目で、柚希を視界から外さぬよう体の角度を変えながら、源外たちの相手をするつもりのようだ。
「副長さん怒ってるよ? さっさと返しとけって」
面倒くさそうに手を伸ばす銀時。だがこれまたスルリとかわした源外は、今度は柚希の後ろへと隠れた。
「おい、じーさん」
「やなこった。これは完全に破壊しておくんじゃ」
「源外様?」
ふざけているようだが、頑なに返そうとしないのは何か理由あっての事だろう。そう思った柚希は、自らの記憶を手繰ってそれを見つけ出そうとした。
「ふざけんな! この女が死んだ証拠として提出すんじゃねーのかよ」
そこへ土方の怒鳴り声が響き渡り、ハッと気付く。
「データ……ですか……」
柚希の想像は正しかったのだろう。源外はコクリと頷いた。
長い話を終え、少し疲れたように言った柚希は大きくため息を吐く。そんな柚希の話に聞き入っていた三人の男たちは、『ざっくり』と言うにはあまりに濃厚な話に言葉を失っていた。
「全てを思い出した今、ピアスを外す直前までの私の記憶とは色々と食い違いがあるのですが……少なくともあの時の私は不安の中、所長だけは覚えていました。どんな時でも側にいてくれて、何があっても私を庇ってくれる、父のような存在だったからかもしれません」
玄黒の顔を思い出しているのだろうか。悲し気な笑みを浮かべる柚希は、見ているだけで胸が痛くなった。
「だからこそ生き延びることももちろんですが、何としてでも源外様にお会いしたかった。所長の集大成はご覧いただけましたか?」
そう柚希が話を振れば一瞬、眉をピクリと動かした源外だったが、すぐにニヤリと歯をむき出しにして笑う。
「おうよ、しっかり見せてもらったわい。色々と面白かったぞ」
カカカと高笑いをする源外に、柚希がホッとしたように微笑むと、それを見た銀時と土方もまた柚希の気持ちを思い、胸を撫で下ろした。
「扇子にはマイクロチップが仕込まれておってな。そこに色々な情報が書き込まれておったわ。元々ピアスはどこぞの天人が持ち込んだ技術だったそうじゃが、地球人向けに改造するために玄黒の医学的知識を使うとは、春雨も考えたもんじゃ。まァそこを逆手に取って玄黒が一人で研究を進められるよう仕組み、春雨には詳細を渡さなかったわけじゃが」
自分たちに必要な知識を持つ者を消してしまうほど、春雨も浅はかでは無い。だからこそ玄黒は、少々勝手をしても見逃されているところはあった。
そして柚希もまた、その全てを受け継ぐ唯一の者として一目置かれてはいたのだ。但し元攘夷志士であり、白夜叉達と共闘していた事も知れ渡ってはいたため、大きな恨みを買ってもいた。
今となっては聞くこともできないが、玄黒はきっと、均衡を保つために最大限の努力をしていたのだろう。
「自死機能とキーワードによる洗脳機能の解除にまでは至らなかったものの、専門分野で無いにも関わらず、ここまで天人の技術を自分の物にしたあやつはやはり天才じゃ。ただし、ワシの次に……じゃがな」
そう言った源外は、何故か土方の方を向いて、何かを寄こせと言うように手を出した。
「あん? 何だよその手は。煙草か?」
前振りもなく、いきなり差し出された手の意味が分からずに戸惑う土方だったが、その答えはいきなりポケットに手を突っ込まれることで示される。
「な、何しやがる! おいジジイ、テメェ……ッ!」
驚いて中を探る源外の腕を掴もうとしたが、器用にスルリと逃げられてしまった。その手には、先ほど柚希から渡された壊れたピアスが握られている事に気付き、チッと舌打ちする。
「ジジイ、それ返せ」
土方が睨むと、源外は「おお、怖い怖い」と言いながら銀時の後ろに隠れてしまった。
「何やってんだよじーさん。っつーか、何がしたいのか銀さんさっぱりなんですけど」
ずっと黙り込んだまま様子を伺っていた銀時が、源外に絡まれたことでようやく話に入ってくる。いつもの死んだ魚のような目で、柚希を視界から外さぬよう体の角度を変えながら、源外たちの相手をするつもりのようだ。
「副長さん怒ってるよ? さっさと返しとけって」
面倒くさそうに手を伸ばす銀時。だがこれまたスルリとかわした源外は、今度は柚希の後ろへと隠れた。
「おい、じーさん」
「やなこった。これは完全に破壊しておくんじゃ」
「源外様?」
ふざけているようだが、頑なに返そうとしないのは何か理由あっての事だろう。そう思った柚希は、自らの記憶を手繰ってそれを見つけ出そうとした。
「ふざけんな! この女が死んだ証拠として提出すんじゃねーのかよ」
そこへ土方の怒鳴り声が響き渡り、ハッと気付く。
「データ……ですか……」
柚希の想像は正しかったのだろう。源外はコクリと頷いた。