第一章 ~再会~(49P)
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「姫……思い出したんだな」
「うん。ごめんね、ずっと忘れてしまってて。でも全部思い出せたよ。何もかも全て……ね」
フフッと笑った柚希がそっと手を伸ばし、銀時の頬に触れる。
「そんな顔しないで。私が自分で望んだことなんだもの」
「いや……すまねェ。俺が軽率だったんだ。少し考えれば分かる事だったのに、俺は自分の事ばかりで……」
「馬鹿ね。シロが悪いんじゃないよ。私は大丈夫だから、ね」
落ち込む銀時を慰めるように、銀時の頬から頭へと手を移動させた柚希は、優しく頭を撫でた。そして「ちょっと待っててね、シロ」と言って踵を返すと、土方と源外の方へとやって来る。
二人の前に立った柚希は、深々と頭を下げて言った。
「この度は私事でご迷惑をおかけしました」
「え? あ、いや、別に俺たちは……」
思いもよらぬ謝罪の言葉に、土方は戸惑ってしまったようだ。咥えていた煙草を思わず落としそうになり、アチチと慌てながら手で受け止める。
無様な姿を見せてしまった恥ずかしさを素知らぬ顔でごまかしながら、土方は煙草を咥え直した。
「そんで、もう大丈夫なのかよ」
「ピアスを外した直後、一気に記憶が戻ってきたのですが、頭が付いて行かずに少々混乱してしまったようです。でもお陰様で、もうすっかり落ち着きました。ありがとうございました」
ニッコリと気持ちのいい笑顔で感謝を言われて悪い気はしない。土方は「そいつァ良かったな」と言って小さく笑みを浮かべると、視線を源外に向けた。
「今回の功労者はこのジジイだ。こっちに礼を言っとけ」
「もちろんです。源外様には後ほど、所長の件も含めてきちんとお礼を述べさせていただきます。ただその前に一つ、土方さんにお願いが……」
「お願い?」
お礼がお願いに変わり、土方が首をかしげる。だがそこはやはり参謀としても名高い真選組副長。すぐに柚希の言わんとする事を読み取った。
「フン、どうせお願いなんて可愛いモンじゃねェんだろ。俺には大した権限なんてねェからな」
「ご謙遜を。ちょっと記録に細工をして頂きたいんです。吉田柚希は死んだ、と」
そう言うと柚希は、先ほど割れたピアスを差し出した。
「記憶が戻ったときに思い出したのですが、実はこれ、自死機能が付いてるんです。持ち主が一定の基準を超えて逆らう姿勢を見せたら、命を奪う設定になっていました。だったら今回の件で死んでいたとしても、おかしくないですよね」
「これ、証拠の遺品って事で」とくすくす笑いながらピアスの破片を渡してくる柚希に、土方の頬は引きつっている。
「肝が据わってんのかイカレてんのか、紙一重な女だな」
「どっちもかもしれませんよ。とにかくお願いできますか? どうせ奴らにとって私などは単なる捨て駒ですが、それでも細く繋がっているのなら完全に切り離しておくに越した事は無いので」
先ほどとは違う、小悪魔のような笑顔で言われた土方は、何故かふと気になって銀時を見た。困ったように、でも愛おしい者を見つめる眼差しで柚希を見ている銀時に、思わずため息が出る。
「ったく、『夜叉』の名が付く輩ってのは、面倒ごとしか持ち込まねぇ仕様になってんのか?」
心底だるそうに言った土方は、改めて柚希に向き直った。
「交換条件だ。お前が知ってることを全部話しやがれ。攘夷戦争の頃まで遡ってたらキリが無ェだろうし、今回の件に関する施設を脱走云々の辺りからで良い。ジジイも聞きてェんじゃねェのか?」
さりげなく源外に話を振れば、ずっと口を挟まずに話を聞いていた源外も大きく頷く。
「確かにこちらの希望ばかりでは不公平ですよね。分かりました。覚えている限りお話します。シロ……銀時も付き合ってくれる?」
柚希も納得したのかそれを了承すると、銀時にも声をかけた。『シロ』では無く『銀時』と呼び直した事に何かを察したのか、「ああ、もちろんだ」と答える銀時に柚希はにこりと微笑むと、
「自分の記憶がおかしい事に気付いたのは、脱出を試みたのと同じ日です」
と語りだした。
「うん。ごめんね、ずっと忘れてしまってて。でも全部思い出せたよ。何もかも全て……ね」
フフッと笑った柚希がそっと手を伸ばし、銀時の頬に触れる。
「そんな顔しないで。私が自分で望んだことなんだもの」
「いや……すまねェ。俺が軽率だったんだ。少し考えれば分かる事だったのに、俺は自分の事ばかりで……」
「馬鹿ね。シロが悪いんじゃないよ。私は大丈夫だから、ね」
落ち込む銀時を慰めるように、銀時の頬から頭へと手を移動させた柚希は、優しく頭を撫でた。そして「ちょっと待っててね、シロ」と言って踵を返すと、土方と源外の方へとやって来る。
二人の前に立った柚希は、深々と頭を下げて言った。
「この度は私事でご迷惑をおかけしました」
「え? あ、いや、別に俺たちは……」
思いもよらぬ謝罪の言葉に、土方は戸惑ってしまったようだ。咥えていた煙草を思わず落としそうになり、アチチと慌てながら手で受け止める。
無様な姿を見せてしまった恥ずかしさを素知らぬ顔でごまかしながら、土方は煙草を咥え直した。
「そんで、もう大丈夫なのかよ」
「ピアスを外した直後、一気に記憶が戻ってきたのですが、頭が付いて行かずに少々混乱してしまったようです。でもお陰様で、もうすっかり落ち着きました。ありがとうございました」
ニッコリと気持ちのいい笑顔で感謝を言われて悪い気はしない。土方は「そいつァ良かったな」と言って小さく笑みを浮かべると、視線を源外に向けた。
「今回の功労者はこのジジイだ。こっちに礼を言っとけ」
「もちろんです。源外様には後ほど、所長の件も含めてきちんとお礼を述べさせていただきます。ただその前に一つ、土方さんにお願いが……」
「お願い?」
お礼がお願いに変わり、土方が首をかしげる。だがそこはやはり参謀としても名高い真選組副長。すぐに柚希の言わんとする事を読み取った。
「フン、どうせお願いなんて可愛いモンじゃねェんだろ。俺には大した権限なんてねェからな」
「ご謙遜を。ちょっと記録に細工をして頂きたいんです。吉田柚希は死んだ、と」
そう言うと柚希は、先ほど割れたピアスを差し出した。
「記憶が戻ったときに思い出したのですが、実はこれ、自死機能が付いてるんです。持ち主が一定の基準を超えて逆らう姿勢を見せたら、命を奪う設定になっていました。だったら今回の件で死んでいたとしても、おかしくないですよね」
「これ、証拠の遺品って事で」とくすくす笑いながらピアスの破片を渡してくる柚希に、土方の頬は引きつっている。
「肝が据わってんのかイカレてんのか、紙一重な女だな」
「どっちもかもしれませんよ。とにかくお願いできますか? どうせ奴らにとって私などは単なる捨て駒ですが、それでも細く繋がっているのなら完全に切り離しておくに越した事は無いので」
先ほどとは違う、小悪魔のような笑顔で言われた土方は、何故かふと気になって銀時を見た。困ったように、でも愛おしい者を見つめる眼差しで柚希を見ている銀時に、思わずため息が出る。
「ったく、『夜叉』の名が付く輩ってのは、面倒ごとしか持ち込まねぇ仕様になってんのか?」
心底だるそうに言った土方は、改めて柚希に向き直った。
「交換条件だ。お前が知ってることを全部話しやがれ。攘夷戦争の頃まで遡ってたらキリが無ェだろうし、今回の件に関する施設を脱走云々の辺りからで良い。ジジイも聞きてェんじゃねェのか?」
さりげなく源外に話を振れば、ずっと口を挟まずに話を聞いていた源外も大きく頷く。
「確かにこちらの希望ばかりでは不公平ですよね。分かりました。覚えている限りお話します。シロ……銀時も付き合ってくれる?」
柚希も納得したのかそれを了承すると、銀時にも声をかけた。『シロ』では無く『銀時』と呼び直した事に何かを察したのか、「ああ、もちろんだ」と答える銀時に柚希はにこりと微笑むと、
「自分の記憶がおかしい事に気付いたのは、脱出を試みたのと同じ日です」
と語りだした。