第一章 ~再会~(49P)
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「――っ!」
バチン、と弾ける音と共に柚希の体が大きく震え、弾けるように割れたピアスが地面に落ちる。間髪入れずもう片方も外してやると、耳には小さな針穴だけが残った。
やはり強い痛みがあったのだろうか。柚希は目を瞑ったまま冷や汗を流し、肩で息をしている。その姿を銀時は心配そうに見つめ、源外と土方もまた、その結果を気にしながら柚希の様子を伺っていた。
しかしいくら待っても柚希に動きは無い。
「柚希……」
静かに流れていくほんの数分がとても長く感じられ、たまらず銀時が声をかけた時だった。
「う……」
銀時の呼びかけに重なるように発せられたうめき声に、三人が一斉に柚希の顔を覗き込む。すると、柚希の眦から一筋の涙が溢れ落ちた。
「柚希?」
もう一度、銀時が名を呼ぶ。その声に反応したのかゆっくりと瞼を開いた柚希の目は、そこにはいない誰かを見つめているようだった。
頬を伝う涙はとどまる事を知らず、次から次へと溢れ出て来る。
「柚希、どうした? やっぱり痛むのか?」
銀時が呼びかけると、柚希の視線は銀時へと移った。だがやはりその目は銀時を素通りし、何か別の物を見ている。
ならば今柚希は何を見ているのかを確かめるため、銀時がもう一度名を呼ぼうとしたのだが、それは叶わなかった。何故なら――
「いやぁぁぁっ!」
突然の悲鳴に驚いて、男三人がビクリと体を震わせた。
悲鳴の主はもちろん柚希。怒りと怯えの混ざった表情で勢いよく飛び起きると、ボロボロと涙を流しながら泣き叫んだ。
「親父様を連れて行かないで! お願いだから……これ以上シロたちを苦しめないでぇっ!」
思いもよらぬ柚希の姿に、呆然とする土方と源外。しかし銀時だけは違った。
「親父様って……記憶が戻ったのか?」
「何でもするから……シロたちには親父様がいなきゃダメなの……っ! 殺すなら私を殺して! 親父様を助けてよぉっ!」
「……柚希ッ!」
堪らず銀時は柚希を強く抱きしめた。柚希の叫びから、今この場の状況を理解できるのは自分だけだという事に気付いたから。
間違いなく、柚希の記憶は戻っている。ただしそれは、最も悪い形で戻ってしまったようだった。
「クソッ……よりによって一番深い傷を抉ってきやがった」
混乱して暴れる柚希を必死に抱きしめながら、銀時が吐き捨てるように言う。その表情は怒りと悲しみが綯交ぜになっていた。
反面、理解できていない土方は眉間にしわを寄せながら、何かを知っているであろう銀時に尋ねる。
「どういう事だ? 万事屋」
「……多分今こいつが思い出してるのは、俺たちの先生が死ぬ直前の時期だ」
「それは攘夷戦争の頃って事か?」
「ああ……」
「親父様ぁっ!」と呼ぶ声はあまりにも悲痛で、聞いているだけで胸が締め付けられてしまうほどだ。となれば、当人である柚希の心はいかばかりか。しかし何とかして落ち着かせてやりたいとは思いながらも、土方と源外は何と声をかけて良いか分からなかった。
「柚希落ち着け! もう終わったんだ……全部終わったことだから」
「いやぁっ! 親父様! 親父様ぁっ!」
完全にパニックを起こしている柚希には、銀時の声も届かない。かくなる上は、と銀時がとった手段は――。
「戻って来い、姫!」
「親父さ――っ」
柚希の叫びを飲み込むように、唇をふさぐ。驚きで目を見開き、固まる柚希に深い口付けを与えれば、次第に体の力が抜けていくのが分かった。
やがて落ち着きを取り戻した事を確認した銀時が唇を放すと、悲し気な笑みを浮かべた柚希が目に飛び込んできて。
「シロ……」
ずっと待ち望んでいたはずの声も、素直には喜べなかった。
バチン、と弾ける音と共に柚希の体が大きく震え、弾けるように割れたピアスが地面に落ちる。間髪入れずもう片方も外してやると、耳には小さな針穴だけが残った。
やはり強い痛みがあったのだろうか。柚希は目を瞑ったまま冷や汗を流し、肩で息をしている。その姿を銀時は心配そうに見つめ、源外と土方もまた、その結果を気にしながら柚希の様子を伺っていた。
しかしいくら待っても柚希に動きは無い。
「柚希……」
静かに流れていくほんの数分がとても長く感じられ、たまらず銀時が声をかけた時だった。
「う……」
銀時の呼びかけに重なるように発せられたうめき声に、三人が一斉に柚希の顔を覗き込む。すると、柚希の眦から一筋の涙が溢れ落ちた。
「柚希?」
もう一度、銀時が名を呼ぶ。その声に反応したのかゆっくりと瞼を開いた柚希の目は、そこにはいない誰かを見つめているようだった。
頬を伝う涙はとどまる事を知らず、次から次へと溢れ出て来る。
「柚希、どうした? やっぱり痛むのか?」
銀時が呼びかけると、柚希の視線は銀時へと移った。だがやはりその目は銀時を素通りし、何か別の物を見ている。
ならば今柚希は何を見ているのかを確かめるため、銀時がもう一度名を呼ぼうとしたのだが、それは叶わなかった。何故なら――
「いやぁぁぁっ!」
突然の悲鳴に驚いて、男三人がビクリと体を震わせた。
悲鳴の主はもちろん柚希。怒りと怯えの混ざった表情で勢いよく飛び起きると、ボロボロと涙を流しながら泣き叫んだ。
「親父様を連れて行かないで! お願いだから……これ以上シロたちを苦しめないでぇっ!」
思いもよらぬ柚希の姿に、呆然とする土方と源外。しかし銀時だけは違った。
「親父様って……記憶が戻ったのか?」
「何でもするから……シロたちには親父様がいなきゃダメなの……っ! 殺すなら私を殺して! 親父様を助けてよぉっ!」
「……柚希ッ!」
堪らず銀時は柚希を強く抱きしめた。柚希の叫びから、今この場の状況を理解できるのは自分だけだという事に気付いたから。
間違いなく、柚希の記憶は戻っている。ただしそれは、最も悪い形で戻ってしまったようだった。
「クソッ……よりによって一番深い傷を抉ってきやがった」
混乱して暴れる柚希を必死に抱きしめながら、銀時が吐き捨てるように言う。その表情は怒りと悲しみが綯交ぜになっていた。
反面、理解できていない土方は眉間にしわを寄せながら、何かを知っているであろう銀時に尋ねる。
「どういう事だ? 万事屋」
「……多分今こいつが思い出してるのは、俺たちの先生が死ぬ直前の時期だ」
「それは攘夷戦争の頃って事か?」
「ああ……」
「親父様ぁっ!」と呼ぶ声はあまりにも悲痛で、聞いているだけで胸が締め付けられてしまうほどだ。となれば、当人である柚希の心はいかばかりか。しかし何とかして落ち着かせてやりたいとは思いながらも、土方と源外は何と声をかけて良いか分からなかった。
「柚希落ち着け! もう終わったんだ……全部終わったことだから」
「いやぁっ! 親父様! 親父様ぁっ!」
完全にパニックを起こしている柚希には、銀時の声も届かない。かくなる上は、と銀時がとった手段は――。
「戻って来い、姫!」
「親父さ――っ」
柚希の叫びを飲み込むように、唇をふさぐ。驚きで目を見開き、固まる柚希に深い口付けを与えれば、次第に体の力が抜けていくのが分かった。
やがて落ち着きを取り戻した事を確認した銀時が唇を放すと、悲し気な笑みを浮かべた柚希が目に飛び込んできて。
「シロ……」
ずっと待ち望んでいたはずの声も、素直には喜べなかった。