第一章 ~再会~(49P)
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「万事屋!」
土方の叫びよりも早く、柚希の扇子が振り上げられた。しかし銀時は柚希を抱きしめたまま、動こうとはしない。上空に放たれた鉛が勢いよく引き戻され、銀時の背中へと降り注がれる瞬間――。
「遊びは終ェですぜ」
ヒュンッと風を切る音と共に全ての鉛の勢いは削がれ、地に落ちた。
「いい加減にして下せェ、旦那。アンタがどれだけこの女を大切にしてるかは知りやせんが、この状況で微動だにせずアレを待ち受けるなんざ、イカレてるとしか思えねェ。俺たちの目の前で自らの命を投げ出すようなことをされちゃァ、迷惑なんでさァ」
刀を鞘に収めた沖田は、呆れた表情の中に怒気を込めながら言う。
「どうせさっきジジイの言ってた『飼い殺し』ってのが頭から離れないんでしょうが、そんなのは女の記憶が戻ってから考えりゃ良い。感傷に浸って、二人一緒にこのまま心中……なんてのは勘弁ですぜ。まァさっきの鉛玉を食らったところで、死ぬなんてこたァ無理でしたがね。女も相当抗ってやがったようでさァ」
「……どういう事だよ」
「いつもの旦那なら気付いてたでしょうに。この女、手加減してやしたぜ」
いつの間にか弾き飛ばしていた柚希の扇子を拾い上げた沖田は、様子を伺いながらこちらにやってくる源外に向けて扇子を投げた。受け取った源外が扇子の確認を始めると、銀時の腕の中にいる柚希を覗き込む。
沖田によって腹部を殴られ、そうでなくても呼吸が整っていないというのに強引に扇子を振り上げた事で、自らダメージを大きくしてしまった柚希は、完全に意識を失っていた。
「何がきっかけかはともかくとして、玉の軌道をわずかに逸らしてた事は間違いねェ。しかも俺には、その新たな軌道が自分自身に向けられていたようにも見えましたがね。まぁ色々と面倒くさい事は後回しにして、まずは今ここでさっさと記憶を戻しなせェ。話はそれからでさァ」
そう言いながら沖田は、無造作に柚希の懐へと手を突っ込んだ。「ちょ、総悟、お前何やってんの!?」と顔を真っ赤にしながら慌てる土方にいやらしい笑みを向けながら、沖田が何かを摘まみ出す。
「何だそりゃァ?」
「戦いに隙が出来たのは、これが原因のようですぜ」
見るとそれは、先ほど柚希が持ち帰ったあの白い花だった。その事に気付いた銀時も柚希の懐から残りの花を取り出し、眺める。既にしおれかかってはいたが、未だ微かな香りが残っており、銀時は目を細めた。
「希望……か」
「あン? 何言ってやがる、万事屋」
俯いている銀時の小さな呟きを、土方は聞き逃さない。だが銀時はそれに答えようとはせずに大きく深呼吸をすると、土方と沖田に顔を向けた。
「ったく、真選組ってなァどうしてこう一般市民に厳しいのかねェ。せめて女の子にくらいはもう少し優しくしても良いんじゃねェの? 沖田くんなんて、Sっ気全開でこーんな激しく虐めてくれちゃって、傷が残ったらどうすんだよ」
その顔には、いつもの『死んだ魚のような目』と上がった口角があって。先ほどまでの、柚希を思うばかりに冷静さを失った銀時はもういなかった。
それを見て土方と沖田も安心したようだったが、こちらは表情には出さない。
「そいつは心外でさァ。これでも十分優しいと思いやすぜィ。まァ傷云々に関しては、とっくに旦那が貫通して……」
「総悟! そういう突っ込みはヤメロ」
「え~? でもどうせ旦那の事だからこの女のピ――ッがピ――ッしたらピ――ッをピ――ッにぶち込んで……」
「お願いだから、これ以上は止めてッ! マジでもう話が進まなくなるから止めてッ!」
真っ赤になりながら焦る土方が面白くて、更なるピー音を発し続ける沖田。いつもと変わらぬ二人を横目に苦笑しながら、銀時は源外に言った。
土方の叫びよりも早く、柚希の扇子が振り上げられた。しかし銀時は柚希を抱きしめたまま、動こうとはしない。上空に放たれた鉛が勢いよく引き戻され、銀時の背中へと降り注がれる瞬間――。
「遊びは終ェですぜ」
ヒュンッと風を切る音と共に全ての鉛の勢いは削がれ、地に落ちた。
「いい加減にして下せェ、旦那。アンタがどれだけこの女を大切にしてるかは知りやせんが、この状況で微動だにせずアレを待ち受けるなんざ、イカレてるとしか思えねェ。俺たちの目の前で自らの命を投げ出すようなことをされちゃァ、迷惑なんでさァ」
刀を鞘に収めた沖田は、呆れた表情の中に怒気を込めながら言う。
「どうせさっきジジイの言ってた『飼い殺し』ってのが頭から離れないんでしょうが、そんなのは女の記憶が戻ってから考えりゃ良い。感傷に浸って、二人一緒にこのまま心中……なんてのは勘弁ですぜ。まァさっきの鉛玉を食らったところで、死ぬなんてこたァ無理でしたがね。女も相当抗ってやがったようでさァ」
「……どういう事だよ」
「いつもの旦那なら気付いてたでしょうに。この女、手加減してやしたぜ」
いつの間にか弾き飛ばしていた柚希の扇子を拾い上げた沖田は、様子を伺いながらこちらにやってくる源外に向けて扇子を投げた。受け取った源外が扇子の確認を始めると、銀時の腕の中にいる柚希を覗き込む。
沖田によって腹部を殴られ、そうでなくても呼吸が整っていないというのに強引に扇子を振り上げた事で、自らダメージを大きくしてしまった柚希は、完全に意識を失っていた。
「何がきっかけかはともかくとして、玉の軌道をわずかに逸らしてた事は間違いねェ。しかも俺には、その新たな軌道が自分自身に向けられていたようにも見えましたがね。まぁ色々と面倒くさい事は後回しにして、まずは今ここでさっさと記憶を戻しなせェ。話はそれからでさァ」
そう言いながら沖田は、無造作に柚希の懐へと手を突っ込んだ。「ちょ、総悟、お前何やってんの!?」と顔を真っ赤にしながら慌てる土方にいやらしい笑みを向けながら、沖田が何かを摘まみ出す。
「何だそりゃァ?」
「戦いに隙が出来たのは、これが原因のようですぜ」
見るとそれは、先ほど柚希が持ち帰ったあの白い花だった。その事に気付いた銀時も柚希の懐から残りの花を取り出し、眺める。既にしおれかかってはいたが、未だ微かな香りが残っており、銀時は目を細めた。
「希望……か」
「あン? 何言ってやがる、万事屋」
俯いている銀時の小さな呟きを、土方は聞き逃さない。だが銀時はそれに答えようとはせずに大きく深呼吸をすると、土方と沖田に顔を向けた。
「ったく、真選組ってなァどうしてこう一般市民に厳しいのかねェ。せめて女の子にくらいはもう少し優しくしても良いんじゃねェの? 沖田くんなんて、Sっ気全開でこーんな激しく虐めてくれちゃって、傷が残ったらどうすんだよ」
その顔には、いつもの『死んだ魚のような目』と上がった口角があって。先ほどまでの、柚希を思うばかりに冷静さを失った銀時はもういなかった。
それを見て土方と沖田も安心したようだったが、こちらは表情には出さない。
「そいつは心外でさァ。これでも十分優しいと思いやすぜィ。まァ傷云々に関しては、とっくに旦那が貫通して……」
「総悟! そういう突っ込みはヤメロ」
「え~? でもどうせ旦那の事だからこの女のピ――ッがピ――ッしたらピ――ッをピ――ッにぶち込んで……」
「お願いだから、これ以上は止めてッ! マジでもう話が進まなくなるから止めてッ!」
真っ赤になりながら焦る土方が面白くて、更なるピー音を発し続ける沖田。いつもと変わらぬ二人を横目に苦笑しながら、銀時は源外に言った。