第一章 ~再会~(49P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ずっと沈黙を保っていた柚希が、確かめるようにゆっくりと土方の方を振り向く。
自分が過去に『姫夜叉』と呼ばれていた事は、以前銀時から呼ばれた事もあり、情報としては認識していた。ただし土方の話を聞いていても、記憶の無い柚希にとっては、姫夜叉の名も攘夷戦争も他人事のようにしか思えていなかったのだ。
しかし、『同じ夜叉の存在』という言葉だけは感じるものがあって。
「それってつまりは……」
話の流れで分かってはいたが、確証が欲しくて答えを求める。
柚希の視線を正面から受けた土方は、やれやれと一つ大きくため息を吐くと、銀時を顎で指し示しながら言った。
「ああ、姫夜叉の相棒じゃねェか。お前の目の前にいる、この白夜叉様はよ」
「白……夜叉……ッ」
柚希がそう口にした時だった。
突如ビクリ、と大きく体が震えたかと思うと、痛みを堪えるかのように耳を押さえ、苦しみ出す。
「お、おい、柚希?」
戸惑う銀時が、柚希の顔を覗き込もうとした瞬間――。
「……ッ!」
何が起きたかを理解するには、時間が必要だった。咄嗟に動いた体のお陰で直撃は免れたが、銀時の頬には一筋の線が浮き上がり、頬を紅が伝っている。
「柚希……ッ!?」
「おい、どういう事だ? 万事屋」
刀を構えた土方が、銀時の隣に立つ。
二人の視線の先には、扇子を構えて殺気を放ち、冷たい眼差しを向けてくる柚希の姿があった。
「突然痴話喧嘩でも始めたのかよ」
「んなわきゃねーだろ! 俺だって何が何だか分かんねーっての」
いつもと変わらぬ言い争いをしているようだが、その体は冷や汗が流れる程に緊張している。
「柚希、一体どうしたんだよ!」
銀時が名を叫ぶも、柚希に反応は無い。代わりに答えたのは、ゆるゆると高く掲げられ、振り下ろされた扇子だった。
「土方、飛べっ!」
いくつもの鉛の玉が弾き出され、銀時と土方を襲う。咄嗟に避けた二人が物陰に隠れてやり過ごすと、行き場を失った玉は扇子の動きに合わせながら元の場所へと収まった。
「何つー武器だ、あれは」
「柚希が昔から使ってんだよ。最初はただのおもちゃみてェなモンだったが、なんやかやで改良してる内にああなってたっつーか……っと、ヤベッ!」
攻撃の第二波に、慌てて横へと飛び転がる。木刀でその内の一つを絡め取ると、グイと引っ張って動きを止めようとした。
だがそれを察した柚希はすぐに絡んだ糸を自ら切り、次の攻撃に移る。舞い踊るようにしなやかな動きで扇子を振り下ろす姿は、このような戦いの場でなければ誰もが見惚れる美しさで。それなのに攻撃力はすさまじく、狙いが的確な事から男二人は翻弄されっぱなしだ。
「おっそろしい女だな。聞いた話そのままじゃねェか」
「だろ? 味方にすりゃぁ心強いが、敵に回すとほんっと命がいくつあっても足りないんだわ」
「ヘラヘラしてんじゃねェよ。テメェの女だろうが。責任もって大人しくさせやがれ」
「それができりゃ苦労しねェっての!」
軽口を叩きながらも、逃げ回る事しかできない二人は次第に追い詰められていく。
本気で戦えば打ち倒す事は出来るのだが、相手が柚希だけに銀時にはどうしても手を出すことができない。土方もまた銀時の気持ちが分かり、踏ん切りをつけられなかった。
自分が過去に『姫夜叉』と呼ばれていた事は、以前銀時から呼ばれた事もあり、情報としては認識していた。ただし土方の話を聞いていても、記憶の無い柚希にとっては、姫夜叉の名も攘夷戦争も他人事のようにしか思えていなかったのだ。
しかし、『同じ夜叉の存在』という言葉だけは感じるものがあって。
「それってつまりは……」
話の流れで分かってはいたが、確証が欲しくて答えを求める。
柚希の視線を正面から受けた土方は、やれやれと一つ大きくため息を吐くと、銀時を顎で指し示しながら言った。
「ああ、姫夜叉の相棒じゃねェか。お前の目の前にいる、この白夜叉様はよ」
「白……夜叉……ッ」
柚希がそう口にした時だった。
突如ビクリ、と大きく体が震えたかと思うと、痛みを堪えるかのように耳を押さえ、苦しみ出す。
「お、おい、柚希?」
戸惑う銀時が、柚希の顔を覗き込もうとした瞬間――。
「……ッ!」
何が起きたかを理解するには、時間が必要だった。咄嗟に動いた体のお陰で直撃は免れたが、銀時の頬には一筋の線が浮き上がり、頬を紅が伝っている。
「柚希……ッ!?」
「おい、どういう事だ? 万事屋」
刀を構えた土方が、銀時の隣に立つ。
二人の視線の先には、扇子を構えて殺気を放ち、冷たい眼差しを向けてくる柚希の姿があった。
「突然痴話喧嘩でも始めたのかよ」
「んなわきゃねーだろ! 俺だって何が何だか分かんねーっての」
いつもと変わらぬ言い争いをしているようだが、その体は冷や汗が流れる程に緊張している。
「柚希、一体どうしたんだよ!」
銀時が名を叫ぶも、柚希に反応は無い。代わりに答えたのは、ゆるゆると高く掲げられ、振り下ろされた扇子だった。
「土方、飛べっ!」
いくつもの鉛の玉が弾き出され、銀時と土方を襲う。咄嗟に避けた二人が物陰に隠れてやり過ごすと、行き場を失った玉は扇子の動きに合わせながら元の場所へと収まった。
「何つー武器だ、あれは」
「柚希が昔から使ってんだよ。最初はただのおもちゃみてェなモンだったが、なんやかやで改良してる内にああなってたっつーか……っと、ヤベッ!」
攻撃の第二波に、慌てて横へと飛び転がる。木刀でその内の一つを絡め取ると、グイと引っ張って動きを止めようとした。
だがそれを察した柚希はすぐに絡んだ糸を自ら切り、次の攻撃に移る。舞い踊るようにしなやかな動きで扇子を振り下ろす姿は、このような戦いの場でなければ誰もが見惚れる美しさで。それなのに攻撃力はすさまじく、狙いが的確な事から男二人は翻弄されっぱなしだ。
「おっそろしい女だな。聞いた話そのままじゃねェか」
「だろ? 味方にすりゃぁ心強いが、敵に回すとほんっと命がいくつあっても足りないんだわ」
「ヘラヘラしてんじゃねェよ。テメェの女だろうが。責任もって大人しくさせやがれ」
「それができりゃ苦労しねェっての!」
軽口を叩きながらも、逃げ回る事しかできない二人は次第に追い詰められていく。
本気で戦えば打ち倒す事は出来るのだが、相手が柚希だけに銀時にはどうしても手を出すことができない。土方もまた銀時の気持ちが分かり、踏ん切りをつけられなかった。