第一章 ~再会~(49P)
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「覚えてないとは言え、私は人を殺してたんだね……」
縋り付く力も失い、ガクリと地に膝をつく。
「何者をも殺さない、なんてキレイゴトを言うつもりはないけど……せめて命のやり取りをする気の無い相手に、手をかける事だけはしたくなかったのに……」
「柚希……」
銀時がそっと背中に手を回すと、柚希は銀時の胸に額を押し付けてきた。そんな柚希を優しく抱きしめる銀時だったが、その顔は静かな怒りに満ちている。
「ふん……テメェにしちゃ、良い反応してやがんな」
銀時の本気の怒りを目の当たりにし、土方は鼻で笑った。
今回の件は上からの命令とはいえ、納得のいかないことが多すぎた。ならば犯人を直接見れば何かが分かるかもしれない。そう思って率先して動いてみれば案の定、輪をかけて胡散臭い話が出てくるばかり。
しかも未だ口にしていなかったもう一つのネタが、こうして目の前にいる男にも関係するとなれば……。
「ついでだし、もうひと怒りさせてやんぜ。万事屋、テメェは『姫夜叉』ってのを知ってるな?」
土方の言葉に、銀時の眉がピクリと動いた。だが、答えは無い。
「知らないはずねェよな。攘夷戦争の後半、攘夷四天王と共に戦場を駆け回っていた一人の女がいた。救護班の頭として後方支援を主としていたが、救護所に敵が襲撃してきた際には、まさに夜叉のごとく戦い怪我人達を守り抜いたってェ話だ。時に前線に現れようものなら、四天王に負けず劣らずの働きで大地を赤く染め上げ、敵を震え上がらせたって伝説まで残ってるらしいぜ」
チラリと柚希に視線を向けた土方は、銀時の腕の中で小さくなっている柚希の姿に眉をひそめる。だがそこにどのような感情が込められているかまでは、読めない。
「姫夜叉の戦いぶりは戦場には似つかわしくない程に優美で、思わず見惚れる者もいたらしい。イカレた話だが、天人側からも人気があったんだとよ」
「……何が言いたい?」
「吉田柚希。元攘夷志士であり、通り名は姫夜叉。ついさっきザキが拾ってきたばかりの、未だ俺しか知らねェネタだ。ま、世間的にはこの女は死んだって事になってたらしいけどな」
土方の言葉に、銀時は目を伏せた。
実は未だ新八たちにすら、旧知の仲という表現に留めて話していなかった『姫夜叉』の存在。攘夷戦争の終焉と共に、歴史の闇に葬られたはずのその名が真選組に伝わったという事は……。
「しかし攘夷志士を根こそぎ排除したがってる天人が、何で攘夷志士の象徴でもあるこの女を手元に置いてやがったんだ? 単純に良い女だから、なんて理由でこんな危険因子を生かしておくにはデメリットが多そうだがな」
「確かに柚希が動けば、ヅラの周りに集まった奴らように、元攘夷志士達が団結して立ち上がる可能性はあるだろうよ。だがまず今は記憶がねェ。……俺の事すら忘れちまってんだからよ……」
寂しそうに言う銀時に、土方が煙草を燻らせながら「笑い話だな。同じ夜叉の存在まで忘れちまうとはよ」と言った時だった。
「同じ夜叉……?」
縋り付く力も失い、ガクリと地に膝をつく。
「何者をも殺さない、なんてキレイゴトを言うつもりはないけど……せめて命のやり取りをする気の無い相手に、手をかける事だけはしたくなかったのに……」
「柚希……」
銀時がそっと背中に手を回すと、柚希は銀時の胸に額を押し付けてきた。そんな柚希を優しく抱きしめる銀時だったが、その顔は静かな怒りに満ちている。
「ふん……テメェにしちゃ、良い反応してやがんな」
銀時の本気の怒りを目の当たりにし、土方は鼻で笑った。
今回の件は上からの命令とはいえ、納得のいかないことが多すぎた。ならば犯人を直接見れば何かが分かるかもしれない。そう思って率先して動いてみれば案の定、輪をかけて胡散臭い話が出てくるばかり。
しかも未だ口にしていなかったもう一つのネタが、こうして目の前にいる男にも関係するとなれば……。
「ついでだし、もうひと怒りさせてやんぜ。万事屋、テメェは『姫夜叉』ってのを知ってるな?」
土方の言葉に、銀時の眉がピクリと動いた。だが、答えは無い。
「知らないはずねェよな。攘夷戦争の後半、攘夷四天王と共に戦場を駆け回っていた一人の女がいた。救護班の頭として後方支援を主としていたが、救護所に敵が襲撃してきた際には、まさに夜叉のごとく戦い怪我人達を守り抜いたってェ話だ。時に前線に現れようものなら、四天王に負けず劣らずの働きで大地を赤く染め上げ、敵を震え上がらせたって伝説まで残ってるらしいぜ」
チラリと柚希に視線を向けた土方は、銀時の腕の中で小さくなっている柚希の姿に眉をひそめる。だがそこにどのような感情が込められているかまでは、読めない。
「姫夜叉の戦いぶりは戦場には似つかわしくない程に優美で、思わず見惚れる者もいたらしい。イカレた話だが、天人側からも人気があったんだとよ」
「……何が言いたい?」
「吉田柚希。元攘夷志士であり、通り名は姫夜叉。ついさっきザキが拾ってきたばかりの、未だ俺しか知らねェネタだ。ま、世間的にはこの女は死んだって事になってたらしいけどな」
土方の言葉に、銀時は目を伏せた。
実は未だ新八たちにすら、旧知の仲という表現に留めて話していなかった『姫夜叉』の存在。攘夷戦争の終焉と共に、歴史の闇に葬られたはずのその名が真選組に伝わったという事は……。
「しかし攘夷志士を根こそぎ排除したがってる天人が、何で攘夷志士の象徴でもあるこの女を手元に置いてやがったんだ? 単純に良い女だから、なんて理由でこんな危険因子を生かしておくにはデメリットが多そうだがな」
「確かに柚希が動けば、ヅラの周りに集まった奴らように、元攘夷志士達が団結して立ち上がる可能性はあるだろうよ。だがまず今は記憶がねェ。……俺の事すら忘れちまってんだからよ……」
寂しそうに言う銀時に、土方が煙草を燻らせながら「笑い話だな。同じ夜叉の存在まで忘れちまうとはよ」と言った時だった。
「同じ夜叉……?」