第一章 ~再会~(49P)
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「ったく、相変わらず厄介ごとばっか持ち込みやがって」
銀時を睨みながら毒づく。だが頭を抱える土方とは裏腹に「俺たちが持ち込んだわけじゃねーし」と答えた銀時は、いつもの死んだ魚のような目で、小馬鹿にしたように土方を見ていて。腹立たしさに拳を握り締めたが、今は冷静さが必要だと自分に言い聞かせながら、煙草で怒りを静めた。
「うるせェよ! とりあえず記憶がねェって事は分かったが、一応確認しておくぞ。女、お前は薬の知識に長けてるな?」
「……はい。春雨の施設では、主に薬の研究をしていましたから」
「そんじゃ、『YOS-0005』ってな記号を知ってるか?」
「それは……! 何年か前に私が作った薬の番号です。初期の開発段階の物ですけど」
「ちなみに何の薬だ?」
「いわゆる麻酔の薬です。治療などの際、誰にでも簡単に扱える物を作ろうとしていて。でも効き始めるまでにかなりの時間がかかるにも関わらず、あまりに効き目が強すぎて少量でも命を……ってまさか……」
薬の説明をしていた柚希の目が見開かれる。
「そのまさかだ。死んだお偉いさんの体から、微量の薬物が検出された。それが『YOS-0005』だ。ただし検死をしたのは地球側ではなく天人の輩らしいがな」
信じられない言葉にめまいを起こした柚希が倒れそうになる。咄嗟に手を伸ばした銀時がその体を受け止めたが、自力では立てないほどにショックを受けていた。
「あの薬……危険だからと廃棄しておいたはずなのに何で……」
銀時の腕の中で小さく呟く柚希の顔色は真っ青だ。
「土方さん……でしたよね? どういう経緯でその人の体内に入ったかは分かりますか?」
銀時に縋り付きながら、震える声で土方に尋ねる。その姿を冷静に見つめながら、土方は答えた。
「お前が針を使ったんだろうが。半年前の会談で、俺は警護の為に側にいたんだよ。お前は天人側の秘書としてやってきて、こっちの要人と握手を交わしてた。会談は1時間ほどで終わったが、その後30分と経たない内にお偉いさんはお陀仏さ」
既に先ほどの煙草はフィルターの手前まで焼けてしまっている。土方は新しい煙草に火を点けると一口吸い、先を続けた。
「当時は脳卒中だか何だかで片付けられたが、何故か数日前に突然天人側から検死の資料を提供されたらしい。そもそも何で地球で死んだ地球人の検死を天人がやってんのかって話だが、そこいらは明かされてねェ。ハッキリしてんのは、今回提供された検死結果だけだ。そこには手の平に小さな穴があり、細長い針のようなもので体内に混入させられた可能性が高いと書かれていた」
「そんな事って……」
「ついでに言っとくが、あの会談で握手を交わしたのはお前だけだ。天人には握手の風習が無ェからと断られてたしな」
次々と明かされる情報は、全てが柚希にとって不利なものだ。少し考えれば柚希を施設に連れ戻すための策略だとは分かるが、自分の作った薬のせいで誰かが死んだという事実が柚希を絶望の淵に立たせ、冷静な判断力を失わせていた。
銀時を睨みながら毒づく。だが頭を抱える土方とは裏腹に「俺たちが持ち込んだわけじゃねーし」と答えた銀時は、いつもの死んだ魚のような目で、小馬鹿にしたように土方を見ていて。腹立たしさに拳を握り締めたが、今は冷静さが必要だと自分に言い聞かせながら、煙草で怒りを静めた。
「うるせェよ! とりあえず記憶がねェって事は分かったが、一応確認しておくぞ。女、お前は薬の知識に長けてるな?」
「……はい。春雨の施設では、主に薬の研究をしていましたから」
「そんじゃ、『YOS-0005』ってな記号を知ってるか?」
「それは……! 何年か前に私が作った薬の番号です。初期の開発段階の物ですけど」
「ちなみに何の薬だ?」
「いわゆる麻酔の薬です。治療などの際、誰にでも簡単に扱える物を作ろうとしていて。でも効き始めるまでにかなりの時間がかかるにも関わらず、あまりに効き目が強すぎて少量でも命を……ってまさか……」
薬の説明をしていた柚希の目が見開かれる。
「そのまさかだ。死んだお偉いさんの体から、微量の薬物が検出された。それが『YOS-0005』だ。ただし検死をしたのは地球側ではなく天人の輩らしいがな」
信じられない言葉にめまいを起こした柚希が倒れそうになる。咄嗟に手を伸ばした銀時がその体を受け止めたが、自力では立てないほどにショックを受けていた。
「あの薬……危険だからと廃棄しておいたはずなのに何で……」
銀時の腕の中で小さく呟く柚希の顔色は真っ青だ。
「土方さん……でしたよね? どういう経緯でその人の体内に入ったかは分かりますか?」
銀時に縋り付きながら、震える声で土方に尋ねる。その姿を冷静に見つめながら、土方は答えた。
「お前が針を使ったんだろうが。半年前の会談で、俺は警護の為に側にいたんだよ。お前は天人側の秘書としてやってきて、こっちの要人と握手を交わしてた。会談は1時間ほどで終わったが、その後30分と経たない内にお偉いさんはお陀仏さ」
既に先ほどの煙草はフィルターの手前まで焼けてしまっている。土方は新しい煙草に火を点けると一口吸い、先を続けた。
「当時は脳卒中だか何だかで片付けられたが、何故か数日前に突然天人側から検死の資料を提供されたらしい。そもそも何で地球で死んだ地球人の検死を天人がやってんのかって話だが、そこいらは明かされてねェ。ハッキリしてんのは、今回提供された検死結果だけだ。そこには手の平に小さな穴があり、細長い針のようなもので体内に混入させられた可能性が高いと書かれていた」
「そんな事って……」
「ついでに言っとくが、あの会談で握手を交わしたのはお前だけだ。天人には握手の風習が無ェからと断られてたしな」
次々と明かされる情報は、全てが柚希にとって不利なものだ。少し考えれば柚希を施設に連れ戻すための策略だとは分かるが、自分の作った薬のせいで誰かが死んだという事実が柚希を絶望の淵に立たせ、冷静な判断力を失わせていた。