第一章 ~再会~(49P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「このまま流されるのは簡単だけど、いずれそれは後悔に繋がるわ。過去の記憶が無い私は未だ、貴方を受け入れる資格が無いもの。それに、目の前にいるのは確かに私だけれど、銀時が求めている私ではない事も分かっているでしょう?」
柚希の言葉が銀時の心に突き刺さる。柚希なのに柚希じゃない。これは銀時自身が感じていた事でもあったから。
「それでも、お前が柚希である事に変わりはないだろ?」
自分にも言い聞かせるように言った銀時は、再び唇を重ねようとする。
「ずっと……待ってたんだ。絶望の中でも、お前だけは諦められなかった。お前が消えちまったあの日からずっと待ち続けて……ようやく会えたってのに……」
「だから、だよ」
唇が重なる寸前、柚希はそっと二人の間に指をあて、それを制した。
「銀時が心から私を求めてくれているのが分かるから、余計に流されたくないの。もし私に銀時を受け入れられる資格があるのなら、きちんと記憶を取り戻してからにしたい」
切なげな銀時の視線が痛かったが、柚希は決して逃げようとはせず、まっすぐ見つめ返して言った。
「今の私は多分、銀時に惹かれてる。でもこの感情が本物なのか、銀時の想いにほだされているのかは私にも分からないから……だから……」
必死の思いを込めた柚希の言葉が銀時の心に届いたのだろうか。しばし柚希を見つめていた銀時だったが、一つ大きく息を吐くと、苦笑いを浮かべた。
「んっとにお前は変わんねーな」
今しがたまで真剣だった表情が、一瞬で気の抜けた表情へと変わる。
「こうと決めたら絶対曲げねぇ頑固なトコは、記憶に関係なく残ってやがるもんなんだな……。とりあえず、柚希が俺に心も体もメロメロだって事はよーっく分かったぜ。こうなったらさっさと記憶を戻して、二人だけのあつ~い時間を過ごすとしますか」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言う銀時に、さすがの柚希もムッとしたようだ。
「茶化さないでよ。私は真面目に銀時の事を……」
怒りながらそう言いかけた時だった。不意に目の前に現れた何かでコツンと額を叩かれ、思わず柚希が首をすくめる。
「な、何?」
驚いてその物が何かを確認すると、先日源外に預けた柚希の扇子だった。
「え? 急に何で?」
「源外のじーさんから預かってたのを忘れてた。こいつがあれば、ピアスを外して記憶を取り戻せる可能性が高いってよ」
「ほんとに!?」
銀時への怒りなどすっかり吹き飛んでしまった柚希が、嬉しそうに扇子を受け取る。記憶にある限り、片時も手放す事の無かった扇子を預けていたこの数日間は、やはり心許なかったようだ。ゆっくりと開けば、いつも自分の心を癒してくれていた4つの名前が現れてホッとした。
「う~ん、やっぱりこれが無いと落ち着かなかったのよね。お帰り、相棒!」
えへへと笑いながら扇子に頬擦りする柚希に「気持ち悪ィぞ」と突っ込めば、頭に一つの大きなこぶが作られる。痛みで涙目になりながらも、嬉しそうな柚希に頬を緩めながら銀時が言った。
「そろそろ行くか」
「そうだね。……ありがと、銀時」
「おうよ」
二人は目を合わせ、笑顔で頷きあうと花畑を後にする。その時柚希の手には、一握りの花束が握られていた。
「持って帰んのか?」
「うん、この花は希望だから」
「希望?」
「そう、希望なの」
スクーターを走らせながらの会話は意味が分からなかったが、銀時はそれ以上深く聞こうとはしなかった。柚希も敢えて語ろうとはしない。
代わりに、遠のく花畑を名残惜しむように柚希が言った。
「全てが終わったら……またここに連れてきてね、銀時」
「ああ」
その後二人は、善は急げという事でそのまま源外の所へと向かう事にする。
だがこの時、彼らの行動を妨げんとするものが動き出している事に、二人は未だ気付いてはいなかった。
柚希の言葉が銀時の心に突き刺さる。柚希なのに柚希じゃない。これは銀時自身が感じていた事でもあったから。
「それでも、お前が柚希である事に変わりはないだろ?」
自分にも言い聞かせるように言った銀時は、再び唇を重ねようとする。
「ずっと……待ってたんだ。絶望の中でも、お前だけは諦められなかった。お前が消えちまったあの日からずっと待ち続けて……ようやく会えたってのに……」
「だから、だよ」
唇が重なる寸前、柚希はそっと二人の間に指をあて、それを制した。
「銀時が心から私を求めてくれているのが分かるから、余計に流されたくないの。もし私に銀時を受け入れられる資格があるのなら、きちんと記憶を取り戻してからにしたい」
切なげな銀時の視線が痛かったが、柚希は決して逃げようとはせず、まっすぐ見つめ返して言った。
「今の私は多分、銀時に惹かれてる。でもこの感情が本物なのか、銀時の想いにほだされているのかは私にも分からないから……だから……」
必死の思いを込めた柚希の言葉が銀時の心に届いたのだろうか。しばし柚希を見つめていた銀時だったが、一つ大きく息を吐くと、苦笑いを浮かべた。
「んっとにお前は変わんねーな」
今しがたまで真剣だった表情が、一瞬で気の抜けた表情へと変わる。
「こうと決めたら絶対曲げねぇ頑固なトコは、記憶に関係なく残ってやがるもんなんだな……。とりあえず、柚希が俺に心も体もメロメロだって事はよーっく分かったぜ。こうなったらさっさと記憶を戻して、二人だけのあつ~い時間を過ごすとしますか」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言う銀時に、さすがの柚希もムッとしたようだ。
「茶化さないでよ。私は真面目に銀時の事を……」
怒りながらそう言いかけた時だった。不意に目の前に現れた何かでコツンと額を叩かれ、思わず柚希が首をすくめる。
「な、何?」
驚いてその物が何かを確認すると、先日源外に預けた柚希の扇子だった。
「え? 急に何で?」
「源外のじーさんから預かってたのを忘れてた。こいつがあれば、ピアスを外して記憶を取り戻せる可能性が高いってよ」
「ほんとに!?」
銀時への怒りなどすっかり吹き飛んでしまった柚希が、嬉しそうに扇子を受け取る。記憶にある限り、片時も手放す事の無かった扇子を預けていたこの数日間は、やはり心許なかったようだ。ゆっくりと開けば、いつも自分の心を癒してくれていた4つの名前が現れてホッとした。
「う~ん、やっぱりこれが無いと落ち着かなかったのよね。お帰り、相棒!」
えへへと笑いながら扇子に頬擦りする柚希に「気持ち悪ィぞ」と突っ込めば、頭に一つの大きなこぶが作られる。痛みで涙目になりながらも、嬉しそうな柚希に頬を緩めながら銀時が言った。
「そろそろ行くか」
「そうだね。……ありがと、銀時」
「おうよ」
二人は目を合わせ、笑顔で頷きあうと花畑を後にする。その時柚希の手には、一握りの花束が握られていた。
「持って帰んのか?」
「うん、この花は希望だから」
「希望?」
「そう、希望なの」
スクーターを走らせながらの会話は意味が分からなかったが、銀時はそれ以上深く聞こうとはしなかった。柚希も敢えて語ろうとはしない。
代わりに、遠のく花畑を名残惜しむように柚希が言った。
「全てが終わったら……またここに連れてきてね、銀時」
「ああ」
その後二人は、善は急げという事でそのまま源外の所へと向かう事にする。
だがこの時、彼らの行動を妨げんとするものが動き出している事に、二人は未だ気付いてはいなかった。