強引に柚希から新八を引きはがしたかと思うと、首に腕を絡ませて締め上げてくる銀時に、たまらず新八が悲鳴を上げる。

「ちょっ、銀さん苦しい！」
「ったく、飯一つにどんだけ時間がかかってんだと思えば……。年上のお姉さまに可愛がってもらってたんですかぁ？　エロいことなんか考えちゃったりしてるんですかぁ？」

　誰が見ても、ヤキモチを妬いている子供のような態度の銀時に、新八も柚希も苦笑いを禁じ得ない。

「あんたが考えてるからそんな風に見えてるだけでしょうが！　違いますよ。僕たちは真面目な話をしてたんです！」
「そうだよ、銀時。新八君は確かに可愛いけど、何も悪い事なんてしてないから。ほら、さっさと放しなさい！」

　柚希が銀時の腕に手をかければ、ムスッとはしたものの素直に新八を解放する。大きくため息を吐く新八に「大丈夫？」と尋ね、頷くのを確認すると、柚希は銀時の前に仁王立ちになった。

「銀時」
「……なんだよ」

　俺は悪くないとばかりに自分を睨みつけてくる銀時に対して、柚希が起こした行動。それは……。

「ちょっとは大人になりなさい！」
「イテッ！」

　まさかのデコピンに、銀時が額を押さえる。

「何しやがんだよ、柚希！」
「私を気にして色々と動いてくれるのは嬉しいけど、ちょっと行きすぎだよ。しかも首を締めるなんて、手加減してても絶対ダメ！　そもそも子供相手にやる事じゃないでしょ」

　腰に手を当て、まるで姉が弟を叱るかのような態度を見せる柚希に、思わず新八は吹き出してしまった。

「柚希さんってば姉上みたいですね。銀さんも形無しだ」

　笑う新八につられ、柚希も笑顔を見せる。
　そんな二人とは対照的に、ただ一人不機嫌を貫く銀時だったが、

「ほら、ご機嫌直して。もうすぐご飯ができるからね？　あっちでお利口さんに待ってて下さいな」

と背伸びした柚希に頭を撫でられ、逆らう気も失せてしまったようだ。

「チッ……ガキじゃねーっつーの。神楽も待ってんだから、さっさと飯にしてくれ」

　そう言って柚希が撫でた頭を押さえながら、銀時は台所を出て行った。後ろからちらりと見えた横顔が、ほんの少しだけ赤らんでいたことに新八だけは気付いたが、敢えて言葉にはしない。

――不器用な銀さんらしいや。

　心の中で呟きながら柚希を見れば、視線がぶつかり笑みが返された。自然と新八にも笑みが浮かぶ。

「これ以上二人を待たせるわけにはいきませんし、急ぎましょうか」
「そうね。頑張っちゃいますか！」
「はい！」

　二人は頷きあうとテキパキと作業を進めていき、十分もしない内に食卓を彩るのだった。