第一章 ~再会~(49P)
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「おかしな話ですけど、この数日僕の中にはずっとこのもやもやしたものがあったんです。銀さんはどうしてこんなに柚希さんに執着してるんだろう。見た目はいつものふざけた銀さんなのに、小さな緊張感を隠しているのは何故だろうって」
心の中を整理しながら、新八が話し続ける。そんな彼に何も言わず、ただ相槌を打ちながら柚希は聞いていた。
「銀さんって人は、出会った時から掴みどころが無くて。家族のように仲良くなれたかと思ったら、突然壁を作るんです。でもそれは僕たちが邪魔になったとかじゃなくて、守るために作った壁だと分かってるから、僕たちは時にその壁が無くなるのを待ち、時にこちらから壊してました。そんな風にして、時間をかけて絆を深めてきたんです」
そこまで言うと新八は何故か、フッと笑みをこぼした。
「結構ヤバいことにも巻き込まれたりして、命がけで一緒に戦ったりもしてきました。だからこそ僕たちは強い絆で結ばれてるんだって自負もあったんですよ。でも柚希さんが現れた時から、見たことのない銀さんを見る機会が増えた事で、突然置いて行かれたような気になっちゃって。要するに僕、柚希さんに嫉妬してたんですね。僕たちの銀さんを取らないでよ! って」
「子供みたいですけどね」と照れくさそうに言う新八。その姿はいかに銀時が大切な存在なのかを明確に表していて、柚希の胸をギュッと締め付けた。
「子供なんかじゃないよ」
ふと思い出す、春雨での生活。
記憶にある春雨の施設では、仕事仲間はいたものの、お互いの私生活に干渉することはほぼ皆無で。ただ与えられた仕事をして、ただ生きて。情を持つことは許されず、まるで機械のように働くだけの毎日でしかなかった。
そういえばあの頃の自分に、生きている実感など存在していただろうか。そんな事まで考えてしまう。
「……銀時は皆に愛されてるんだね。羨ましいなぁ」
無意識の言葉は、紛う方なき本音から出たもの。その表情には羨望と悲哀の色が混じっていた。
そこに、新八が新たな色を投下する。
「何言ってるんですか柚希さん。そんな銀さんに貴女は愛されてるんですよ。一番羨ましい存在じゃないですか」
「え……?」
新八の言葉が、柚希の心を揺り動かす。驚きで目を丸くしている柚希に、新八は笑いながら言った。
「銀さんはいつもふざけてますし、スケベ心丸出しの行動だってやらかします。でも本当の意味で一人の女性に執着したことは一度たりとも無かったと思います。それなのに……さっきの柚希さんの笑顔を見て確信しました。やっぱり銀さんには貴女が必要です。今は記憶が無かったり、環境の変化だったりで混乱しているかもしれませんが、落ち着いたらしっかりと向き合ってあげて下さい。銀さんの為に……僕たちの為に。そしてもちろん柚希さん自身の為に」
真っ直ぐな瞳で柚希を見つめながら言う新八は、十代半ばの子供とは思えぬほどに大人びている。その言葉は柚希の心の奥底へと届いたようで、柚希は素直にこくりと頷いた。
「うん……分かった」
自然に伸ばされた腕が、柚希よりもほんの少しだけ高い位置にある頭を抱えるようにして抱きしめる。
「ちょっ、柚希さん!?」
慌てる新八をよそに、柚希は新八の頭を軽くポンポンと叩きながら言った。
「新八君は優しいね。ありがとう。でも私は銀時を君たちから奪ったりはしないから大丈夫よ。銀時自身もきっと、君たちから離れたりはしないわ」
「柚希さん……?」
「こんなにも自分を思ってくれてる人を置いて、どこかに行ける人間なんていないもの。それに……」
最後まで言葉は紡がれない。だが柚希の肩に触れていた新八の額に伝わってくる小さな震えが、続く言葉を表しているような気がして。
「柚希さんも離れて行かないで下さいね。銀さんにとって大切な人は、僕たちにも同じくらい大切な人なんですから」
これだけは言っておかねばならないと思った新八は、敢えて頭を上げずに言葉を紡いだ。
クスリと小さく笑ったような声が聞こえ、少しだけホッとした新八だったが……。
「随分準備に時間かかってやがるなと思えば、なーにやってんだよ新八」
不機嫌さ丸出しの銀時が姿を現し、その場の空気がガラリと変わった。
心の中を整理しながら、新八が話し続ける。そんな彼に何も言わず、ただ相槌を打ちながら柚希は聞いていた。
「銀さんって人は、出会った時から掴みどころが無くて。家族のように仲良くなれたかと思ったら、突然壁を作るんです。でもそれは僕たちが邪魔になったとかじゃなくて、守るために作った壁だと分かってるから、僕たちは時にその壁が無くなるのを待ち、時にこちらから壊してました。そんな風にして、時間をかけて絆を深めてきたんです」
そこまで言うと新八は何故か、フッと笑みをこぼした。
「結構ヤバいことにも巻き込まれたりして、命がけで一緒に戦ったりもしてきました。だからこそ僕たちは強い絆で結ばれてるんだって自負もあったんですよ。でも柚希さんが現れた時から、見たことのない銀さんを見る機会が増えた事で、突然置いて行かれたような気になっちゃって。要するに僕、柚希さんに嫉妬してたんですね。僕たちの銀さんを取らないでよ! って」
「子供みたいですけどね」と照れくさそうに言う新八。その姿はいかに銀時が大切な存在なのかを明確に表していて、柚希の胸をギュッと締め付けた。
「子供なんかじゃないよ」
ふと思い出す、春雨での生活。
記憶にある春雨の施設では、仕事仲間はいたものの、お互いの私生活に干渉することはほぼ皆無で。ただ与えられた仕事をして、ただ生きて。情を持つことは許されず、まるで機械のように働くだけの毎日でしかなかった。
そういえばあの頃の自分に、生きている実感など存在していただろうか。そんな事まで考えてしまう。
「……銀時は皆に愛されてるんだね。羨ましいなぁ」
無意識の言葉は、紛う方なき本音から出たもの。その表情には羨望と悲哀の色が混じっていた。
そこに、新八が新たな色を投下する。
「何言ってるんですか柚希さん。そんな銀さんに貴女は愛されてるんですよ。一番羨ましい存在じゃないですか」
「え……?」
新八の言葉が、柚希の心を揺り動かす。驚きで目を丸くしている柚希に、新八は笑いながら言った。
「銀さんはいつもふざけてますし、スケベ心丸出しの行動だってやらかします。でも本当の意味で一人の女性に執着したことは一度たりとも無かったと思います。それなのに……さっきの柚希さんの笑顔を見て確信しました。やっぱり銀さんには貴女が必要です。今は記憶が無かったり、環境の変化だったりで混乱しているかもしれませんが、落ち着いたらしっかりと向き合ってあげて下さい。銀さんの為に……僕たちの為に。そしてもちろん柚希さん自身の為に」
真っ直ぐな瞳で柚希を見つめながら言う新八は、十代半ばの子供とは思えぬほどに大人びている。その言葉は柚希の心の奥底へと届いたようで、柚希は素直にこくりと頷いた。
「うん……分かった」
自然に伸ばされた腕が、柚希よりもほんの少しだけ高い位置にある頭を抱えるようにして抱きしめる。
「ちょっ、柚希さん!?」
慌てる新八をよそに、柚希は新八の頭を軽くポンポンと叩きながら言った。
「新八君は優しいね。ありがとう。でも私は銀時を君たちから奪ったりはしないから大丈夫よ。銀時自身もきっと、君たちから離れたりはしないわ」
「柚希さん……?」
「こんなにも自分を思ってくれてる人を置いて、どこかに行ける人間なんていないもの。それに……」
最後まで言葉は紡がれない。だが柚希の肩に触れていた新八の額に伝わってくる小さな震えが、続く言葉を表しているような気がして。
「柚希さんも離れて行かないで下さいね。銀さんにとって大切な人は、僕たちにも同じくらい大切な人なんですから」
これだけは言っておかねばならないと思った新八は、敢えて頭を上げずに言葉を紡いだ。
クスリと小さく笑ったような声が聞こえ、少しだけホッとした新八だったが……。
「随分準備に時間かかってやがるなと思えば、なーにやってんだよ新八」
不機嫌さ丸出しの銀時が姿を現し、その場の空気がガラリと変わった。