第二章 ~松陽~(83P)
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そんな松陽の親心など知る由もなく。
柚希と銀時はブツクサと文句を言い合いながら町へと向かっていた。
「親父様ったら、いきなり何言い出してるんだか。寺子屋なんか開いたって、人が集まるとは思えないわ」
「先生の人柄だったら子供は集まるんじゃねーのか? 俺でも理解できる教え方をしてくれるしよ」
「確かにそうなんだけどね……」
松陽が持ち得る知識と、それを教える能力の高さは身をもって感じている。しかしだからと言って、それを町の者たちが受け入れてくれるかはまた別の話だ。
古くからの土地の者ほど結束は固く、余所者を受け入れない事を柚希は嫌という程知っていた。
「子供から懐柔していくってのは常套手段ではあるけど……」
「上等な手段なら良いんじゃねェの? っつーか怪獣が出てくんのか?」
「……うん、間違いなくシロの頭の中の変換は違うね。まぁ良いんだけどさ」
真剣に考えている所に差し込まれた銀時の言葉が、あまりにも単純な答えを導き出していて苦笑いする。だが少し駆け足な成長の為に気苦労の絶えない柚希にとって、この単純さが癒しとなる事は多かった。
「何がともあれ、子供たちの声が聞こえてきてない? 行ってみよっか」
「ほんっとメンドクセェな」
「ここまで来たら諦めなさい」
ほらほらと銀時の背中を押し、声が聞こえる方へと歩いていく。やがて見えてきたお寺の境内には、複数の子供たちが賑やかに遊んでいた。
「広さも丁度良いし、早速あそこで試してみよっか」
「へーへー」
どこまでも怠そうに答える銀時だが、剣の試合となると話は別。持っていた竹刀の一本を柚希に投げ渡すと、もう一本の竹刀を片手で軽く素振りする。
遊んでいた子供たちが訝し気な視線を送ってくる中、広めの場所で向かい合わせに立ち竹刀を構える二人。真剣に対峙するからこその緊張感が境内を包み込むと、その空気の鋭さに子供たちは怯え始めた。
「何だあいつら……見た事無いよな」
「竹刀を持って構えてるって事は、これから戦うのか?」
「遊んでる雰囲気じゃないよね。喧嘩かもしれないよ」
「誰か大人を呼んで来た方が良いよな。俺、父ちゃん呼びに……」
「待って!」
相談していた子供たちの言葉を遮り、引き留めたのは柚希。対峙している銀時を意識しながらも、子供たちに優しい笑みを向ける。
「私たちはただ試合をするだけだから大丈夫。ほら、見ててね」
そう言って柚希が構えていた竹刀の先を少し下げた瞬間。
ザンッ!
地を蹴る音と共に柚希の頭上から襲い来る銀時の竹刀。あまりの速さに子供たちの目は付いて行かず、気付いた時にはもう竹刀が柚希に叩きつけられる寸前だった。
柚希と銀時はブツクサと文句を言い合いながら町へと向かっていた。
「親父様ったら、いきなり何言い出してるんだか。寺子屋なんか開いたって、人が集まるとは思えないわ」
「先生の人柄だったら子供は集まるんじゃねーのか? 俺でも理解できる教え方をしてくれるしよ」
「確かにそうなんだけどね……」
松陽が持ち得る知識と、それを教える能力の高さは身をもって感じている。しかしだからと言って、それを町の者たちが受け入れてくれるかはまた別の話だ。
古くからの土地の者ほど結束は固く、余所者を受け入れない事を柚希は嫌という程知っていた。
「子供から懐柔していくってのは常套手段ではあるけど……」
「上等な手段なら良いんじゃねェの? っつーか怪獣が出てくんのか?」
「……うん、間違いなくシロの頭の中の変換は違うね。まぁ良いんだけどさ」
真剣に考えている所に差し込まれた銀時の言葉が、あまりにも単純な答えを導き出していて苦笑いする。だが少し駆け足な成長の為に気苦労の絶えない柚希にとって、この単純さが癒しとなる事は多かった。
「何がともあれ、子供たちの声が聞こえてきてない? 行ってみよっか」
「ほんっとメンドクセェな」
「ここまで来たら諦めなさい」
ほらほらと銀時の背中を押し、声が聞こえる方へと歩いていく。やがて見えてきたお寺の境内には、複数の子供たちが賑やかに遊んでいた。
「広さも丁度良いし、早速あそこで試してみよっか」
「へーへー」
どこまでも怠そうに答える銀時だが、剣の試合となると話は別。持っていた竹刀の一本を柚希に投げ渡すと、もう一本の竹刀を片手で軽く素振りする。
遊んでいた子供たちが訝し気な視線を送ってくる中、広めの場所で向かい合わせに立ち竹刀を構える二人。真剣に対峙するからこその緊張感が境内を包み込むと、その空気の鋭さに子供たちは怯え始めた。
「何だあいつら……見た事無いよな」
「竹刀を持って構えてるって事は、これから戦うのか?」
「遊んでる雰囲気じゃないよね。喧嘩かもしれないよ」
「誰か大人を呼んで来た方が良いよな。俺、父ちゃん呼びに……」
「待って!」
相談していた子供たちの言葉を遮り、引き留めたのは柚希。対峙している銀時を意識しながらも、子供たちに優しい笑みを向ける。
「私たちはただ試合をするだけだから大丈夫。ほら、見ててね」
そう言って柚希が構えていた竹刀の先を少し下げた瞬間。
ザンッ!
地を蹴る音と共に柚希の頭上から襲い来る銀時の竹刀。あまりの速さに子供たちの目は付いて行かず、気付いた時にはもう竹刀が柚希に叩きつけられる寸前だった。