「お仕置きって何なんですかぁ。私は何かやらかしましたっけ？」
「私の事をバカにしたでしょ！　もう私は子供じゃないんだからね。弟分も出来たし、一人前の大人の女性として扱ってくれなきゃ」

　膝の上で鼻息荒くふんぞり返って答える柚希の愛らしさは、松陽の心を温かくする。思わず吹き出してしまった松陽は、「はいはい」と頷きながら柚希の頭を撫でた。もちろんもう片方の手は銀時の頭に乗せられている。

「では銀時まで一緒にお仕置きさせたのは何故ですか？」
「だって私一人でお仕置きしたら、後で親父様に報復されそうだもん。その点シロが一緒なら攻撃も分散化されて良いかなぁ、なんて」
「……すさまじく姑息な事を考えてましたね、柚希……銀時は道連れですか」
「そうとも言う」
「貴女って人は……」

　呆れた顔の松陽に、ペロリと舌を出して見せる柚希。
　そんな二人のやり取りを大人しく聞いていた銀時だったが、自分の事を言われている事が分かったのか「道連れって何？」と話に入ってきた。

「んっとねぇ……可愛い弟分と一緒って事かな」
「ある意味正しいだけに複雑ですが。何にしても柚希は心の洗濯が必要なようです。このままでは銀時にどんな影響を及ぼすか分かりませんから」
「柚希を洗うのか？」
「そうですね。真っ白になるまで奇麗に洗ってあげましょう」
「うぇ～。やなこった」

　身の危険を感じた柚希は、頭に乗せられた松陽の手に力が入る直前、軽やかに逃れる。

「柚希、逃げま～す！」

　ニヤリと笑った柚希は、バイバイと手を振り全速力で逃げていく。何が起こっているのかが分からない銀時がキョトンとしていると、松陽は優しく笑いながら言った。

「せっかくなので、これも修行にしちゃいましょうか。銀時は今から柚希を捕まえに行って下さい。時間はお昼まで。柚希は想像以上にすばしっこくて捕まえるのが難しいですからね。二人で一緒に帰って来たらお昼にしましょう」
「柚希を捕まえるのか？」
「そうです。所謂鬼ごっこですね」
「鬼ごっこ……俺が鬼だから柚希を捕まえる？」
「違いますよ」

　銀時の答えに鬼ごっこの経験も無かったか、と少し悲しくなりながらも、これから積み重ねていけば良いと松陽は自分に言い聞かせた。

「鬼ごっこは、皆で楽しめる遊びです。銀時が柚希を捕まえたら、今度は柚希が鬼になるんですよ。しかも鬼ごっこは様々な身体能力を上げてくれます。さぁ、まずはやってみてごらんなさい」