第二章 ~松陽~(83P)
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「私……間違った事言ってる?」
おずおずと松陽を見上げる柚希の体は緊張の余り小さく震えている。その事に気付いたのか、何も言わずに二人を見ていた銀時はゆっくりと柚希の横に立つと、遠慮がちにそっと手を握った。
「間違ってない」
「シロ?」
驚いて柚希が銀時を見ると、上手く言葉が見つからないのかもどかしそうにしているのが分かる。
「守るの知らない。でも間違ってない」
言葉数は少ないながらも、銀時の思いは小さな手の温もりと共に柚希の心に伝わってきて。柚希が握り返すとまるで不安が吸い取られたかのように体の震えが消えた。
安心の笑みを浮かべた柚希に、不器用な笑みを返す銀時の姿が松陽の胸を打つ。
ーーこんなにも幼い子供達ですら、お互いを思い合えると言うのに……。
何かを思い松陽の胸はツキリと痛んだが、それは子供達にはあずかり知らぬ事。気持ちを切り替えるかのようにフッと小さく息を吐いた松陽は、いつもの笑顔を見せながら言った。
「銀時の言う通りです。貴女は何も間違った事など言ってはいませんよ。まだまだやんちゃな子供かと思っていましたら予想外に素晴らしい答えを聞けたので、いつの間にこんなにも成長していたんだろうと驚いちゃいました」
「何それ、酷い」
「今の聞いた?」と怒りながら銀時に愚痴った柚希だったが、ふと何かを思い付いたのかヒソヒソと銀時に耳打ちする。渋りながらも銀時が頷くと、
「せーの!」
と手を繋いだまま二人は駆け出した。
「……え?」
呆気に取られた松陽の目に映っているのは、自分に向かって勢い良く飛び込んでくる二人の姿。
「ええぇっ!?」
慌てて二人を受け止めるも、さすがに支えきれず尻餅をついてしまう。
「アイタタタ……いきなりこれは厳しいですよ」
打ったお尻を撫でながら涙目で言う松陽だったが、子供たちの顔に浮かんでいるのは笑顔。のしかかったままの状態で繋いだ手を松陽の目の前に差し出すと、二人は言った。
「お仕置き代わりに一本取〜った!」
二つの小さな手が松陽の額をぺチリと叩く。顔を見合わせて「やったね、成功!」と喜ぶ二人の笑顔が眩しくて、松陽は叩かれた額をさすりながら目を伏せた。
――ここにあの子がいたらもっと……。
失ってから随分と時は過ぎたと言うのに、一日たりとも忘れた事の無い少年の姿が瞼に浮かぶ。だが今更何を思っても、彼が目の前に現れる事は無い。
――頭では十分解っているんですけどね……。
小さく自嘲の笑みを浮かべた松陽は、乱れてしまった髪をかき上げると子供たちを見て言った。
おずおずと松陽を見上げる柚希の体は緊張の余り小さく震えている。その事に気付いたのか、何も言わずに二人を見ていた銀時はゆっくりと柚希の横に立つと、遠慮がちにそっと手を握った。
「間違ってない」
「シロ?」
驚いて柚希が銀時を見ると、上手く言葉が見つからないのかもどかしそうにしているのが分かる。
「守るの知らない。でも間違ってない」
言葉数は少ないながらも、銀時の思いは小さな手の温もりと共に柚希の心に伝わってきて。柚希が握り返すとまるで不安が吸い取られたかのように体の震えが消えた。
安心の笑みを浮かべた柚希に、不器用な笑みを返す銀時の姿が松陽の胸を打つ。
ーーこんなにも幼い子供達ですら、お互いを思い合えると言うのに……。
何かを思い松陽の胸はツキリと痛んだが、それは子供達にはあずかり知らぬ事。気持ちを切り替えるかのようにフッと小さく息を吐いた松陽は、いつもの笑顔を見せながら言った。
「銀時の言う通りです。貴女は何も間違った事など言ってはいませんよ。まだまだやんちゃな子供かと思っていましたら予想外に素晴らしい答えを聞けたので、いつの間にこんなにも成長していたんだろうと驚いちゃいました」
「何それ、酷い」
「今の聞いた?」と怒りながら銀時に愚痴った柚希だったが、ふと何かを思い付いたのかヒソヒソと銀時に耳打ちする。渋りながらも銀時が頷くと、
「せーの!」
と手を繋いだまま二人は駆け出した。
「……え?」
呆気に取られた松陽の目に映っているのは、自分に向かって勢い良く飛び込んでくる二人の姿。
「ええぇっ!?」
慌てて二人を受け止めるも、さすがに支えきれず尻餅をついてしまう。
「アイタタタ……いきなりこれは厳しいですよ」
打ったお尻を撫でながら涙目で言う松陽だったが、子供たちの顔に浮かんでいるのは笑顔。のしかかったままの状態で繋いだ手を松陽の目の前に差し出すと、二人は言った。
「お仕置き代わりに一本取〜った!」
二つの小さな手が松陽の額をぺチリと叩く。顔を見合わせて「やったね、成功!」と喜ぶ二人の笑顔が眩しくて、松陽は叩かれた額をさすりながら目を伏せた。
――ここにあの子がいたらもっと……。
失ってから随分と時は過ぎたと言うのに、一日たりとも忘れた事の無い少年の姿が瞼に浮かぶ。だが今更何を思っても、彼が目の前に現れる事は無い。
――頭では十分解っているんですけどね……。
小さく自嘲の笑みを浮かべた松陽は、乱れてしまった髪をかき上げると子供たちを見て言った。