第二章 ~松陽~(83P)
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「さっきの動き、凄いよね。あんな風に軌道を変えられるなんてびっくりしちゃった」
本気で驚いているらしい柚希が銀時に近付いて言う。だが当の本人は負けてしまった事が悔しかったのか、眉をしかめて唇を噛み締めながら柚希を見ていた。
「何よその顔。褒めてるんだから喜びなさいよね」
「褒めてる……?」
「そうよ。まぁ私の次くらいには強いって認めてあげるわ」
「今ここ三人だけ。俺一番弱い」
「あったり前でしょ! 最初からシロの方が強かったら、私の立場が無いじゃない。言っとくけどこれからもずっと負ける気は無いからね。親父様をコテンパンに出来ちゃうくらい強くなるってのが今の目標なんだから!」
ビシリと松陽を指差しながら言う柚希に、「それは楽しみです」と余裕の笑みを返す松陽は心から楽しそうだ。
「ではここで柚希に問います。何故貴女は強くなりたいのですか?」
「へ?」
それは、突然の問いだった。強くなるとは言ったものの、そこまで深く考えていなかった柚希は答えに詰まってしまう。
「それは……負けちゃうのは悔しいし、せっかく修行するなら強くなりたいし……」
うんうんと唸りながら必死に考えてはみたが、なかなか答えは見つからず頭がパンクしてしまいそうだ。
そんな時、ふと目に入ったのは銀時。
自分とあまり年が変わらないこの少年は、会話の際の語彙が少ない事から、今まで他人との深い交流が無かったのかもしれないとは思っていた。戦場では白い鬼と呼ばれ、殺されそうになったのも一度や二度では無いだろう。きっと誰かに甘えた記憶も無いのではなかろうか。
夕べ夜中にふと目が覚めた時、自分の着物を握り締めて縋り付くように眠っていた銀時に気付き、寝ぼけた中にも不思議な感情が芽生えたのを覚えている。
「柚希?」
銀時を見つめながら固まってしまった柚希を心配し、松陽が声をかける。ハッと気付いた柚希は考えがまとまったのか、はじけるような笑顔を見せて言った。
「守る力が欲しいから! 強くなって、誰かを守れるようになりたいの!」
もし自分が強ければ、あの時失ってしまった家族をどうにかして守れていたかもしれない。
もし自分に力があれば、銀時のように「自分は殺される」などと言うような悲しい思いをしている子供を助けてあげられるかもしれない。
ならばその「もし」を現実にしてしまえば、せめて目の前にいる人達くらいは守れる自分になれるのではないか。
「だから強くなりたい。それじゃダメ? 親父様」
自信ありげに答えた柚希だったが、柚希の言葉を聞いた松陽からは珍しく笑みが消え、驚いた表情を見せている。
「親父様……?」
さすがに不安になった柚希の顔からも、笑みは消えてしまった。
本気で驚いているらしい柚希が銀時に近付いて言う。だが当の本人は負けてしまった事が悔しかったのか、眉をしかめて唇を噛み締めながら柚希を見ていた。
「何よその顔。褒めてるんだから喜びなさいよね」
「褒めてる……?」
「そうよ。まぁ私の次くらいには強いって認めてあげるわ」
「今ここ三人だけ。俺一番弱い」
「あったり前でしょ! 最初からシロの方が強かったら、私の立場が無いじゃない。言っとくけどこれからもずっと負ける気は無いからね。親父様をコテンパンに出来ちゃうくらい強くなるってのが今の目標なんだから!」
ビシリと松陽を指差しながら言う柚希に、「それは楽しみです」と余裕の笑みを返す松陽は心から楽しそうだ。
「ではここで柚希に問います。何故貴女は強くなりたいのですか?」
「へ?」
それは、突然の問いだった。強くなるとは言ったものの、そこまで深く考えていなかった柚希は答えに詰まってしまう。
「それは……負けちゃうのは悔しいし、せっかく修行するなら強くなりたいし……」
うんうんと唸りながら必死に考えてはみたが、なかなか答えは見つからず頭がパンクしてしまいそうだ。
そんな時、ふと目に入ったのは銀時。
自分とあまり年が変わらないこの少年は、会話の際の語彙が少ない事から、今まで他人との深い交流が無かったのかもしれないとは思っていた。戦場では白い鬼と呼ばれ、殺されそうになったのも一度や二度では無いだろう。きっと誰かに甘えた記憶も無いのではなかろうか。
夕べ夜中にふと目が覚めた時、自分の着物を握り締めて縋り付くように眠っていた銀時に気付き、寝ぼけた中にも不思議な感情が芽生えたのを覚えている。
「柚希?」
銀時を見つめながら固まってしまった柚希を心配し、松陽が声をかける。ハッと気付いた柚希は考えがまとまったのか、はじけるような笑顔を見せて言った。
「守る力が欲しいから! 強くなって、誰かを守れるようになりたいの!」
もし自分が強ければ、あの時失ってしまった家族をどうにかして守れていたかもしれない。
もし自分に力があれば、銀時のように「自分は殺される」などと言うような悲しい思いをしている子供を助けてあげられるかもしれない。
ならばその「もし」を現実にしてしまえば、せめて目の前にいる人達くらいは守れる自分になれるのではないか。
「だから強くなりたい。それじゃダメ? 親父様」
自信ありげに答えた柚希だったが、柚希の言葉を聞いた松陽からは珍しく笑みが消え、驚いた表情を見せている。
「親父様……?」
さすがに不安になった柚希の顔からも、笑みは消えてしまった。