第二章 ~松陽~(83P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「改めまして私は吉田松陽。この子は柚希。そして君も今日から我が家の大切な一員です。ようこそ銀時」
嘘偽りのない松陽の言葉は、銀時の心にどのように伝わったのか。
複雑な表情でありながら少しだけ頬を赤らめている顔は、最初に柚希を睨みつけていた時とは程遠い、子供らしいものになっている。
それに気付いた柚希は、頬を膨らませたまま松陽と銀時に数回視線を往復させると、大げさにため息を吐いた。
「仕方ない。弟分として可愛がってあげるとしますか」
手を伸ばして銀時の髪に触れ、くしゃくしゃと掻き乱す。
「親父様は言ったら聞かない人だし、いい加減私一人で親父様の過剰な愛情を受け止めるのも大変だったから丁度良いわ」
「何だか私、酷い事言われてません?」
「だって事実だもん。お互い親父様に振り回される人生を強く生き抜こうね、シ……じゃなかった、銀時」
松陽に舌を出して見せ、銀時にはいたずらっ子な笑顔を向ける。何故かドキリと心臓が跳ね、更に頬を赤らめた銀時は自分にもよく分からぬ感情を持て余しつつ、柚希から視線を外して言った。
「……シロで良い」
「はい?」
「銀時とシロ、どっちも俺の名前。好きに呼んで良い」
ぶっきらぼうな言い方ではあるが、素直な気持ちなのだろう。初めて銀時が見せたはにかむような表情に、柚希と松陽は顔を見合わせると最高の笑顔を見せたのだった。
もう日も落ちたという事で、三人は廃屋へと戻る。
簡単な夕食を済ませて先ほどのプリンを出すと、どうやら初めて見たらしい銀時は匂いを嗅いだり突いたりと警戒していた。しかし柚希が嬉しそうに頬張るのを見て一匙口に入れるとそこからは早く、一瞬にして食べきってしまう。しかもそれだけでは満足出来なかったらしく、ゆっくりと大切に食べていた柚希の分にまで手を伸ばしてきた。
「ダメ! これは私のだからね!」
慌てて抱え込む柚希の手を押さえつけてまで奪おうとする銀時と、必死に抵抗する柚希。
最初の内は微笑ましい兄弟げんかを見るようにほのぼのとした雰囲気で見守っていた松陽も、次第にプリンが原因でどちらかが命を落としそうな程に殺伐としてくると黙ってはいられない。
「はい、そろそろお終いにしましょうか。今回は銀時が悪いですね。人の物を強引に奪おうとするのはいけませんよ」
といつもの笑顔で言いながら、銀時の頭にゲンコツを落とす。
どういう原理なのか床へとめり込んでしまった銀時は、頭に大きなこぶを作り目に涙を浮かべながら固まってしまった。
嘘偽りのない松陽の言葉は、銀時の心にどのように伝わったのか。
複雑な表情でありながら少しだけ頬を赤らめている顔は、最初に柚希を睨みつけていた時とは程遠い、子供らしいものになっている。
それに気付いた柚希は、頬を膨らませたまま松陽と銀時に数回視線を往復させると、大げさにため息を吐いた。
「仕方ない。弟分として可愛がってあげるとしますか」
手を伸ばして銀時の髪に触れ、くしゃくしゃと掻き乱す。
「親父様は言ったら聞かない人だし、いい加減私一人で親父様の過剰な愛情を受け止めるのも大変だったから丁度良いわ」
「何だか私、酷い事言われてません?」
「だって事実だもん。お互い親父様に振り回される人生を強く生き抜こうね、シ……じゃなかった、銀時」
松陽に舌を出して見せ、銀時にはいたずらっ子な笑顔を向ける。何故かドキリと心臓が跳ね、更に頬を赤らめた銀時は自分にもよく分からぬ感情を持て余しつつ、柚希から視線を外して言った。
「……シロで良い」
「はい?」
「銀時とシロ、どっちも俺の名前。好きに呼んで良い」
ぶっきらぼうな言い方ではあるが、素直な気持ちなのだろう。初めて銀時が見せたはにかむような表情に、柚希と松陽は顔を見合わせると最高の笑顔を見せたのだった。
もう日も落ちたという事で、三人は廃屋へと戻る。
簡単な夕食を済ませて先ほどのプリンを出すと、どうやら初めて見たらしい銀時は匂いを嗅いだり突いたりと警戒していた。しかし柚希が嬉しそうに頬張るのを見て一匙口に入れるとそこからは早く、一瞬にして食べきってしまう。しかもそれだけでは満足出来なかったらしく、ゆっくりと大切に食べていた柚希の分にまで手を伸ばしてきた。
「ダメ! これは私のだからね!」
慌てて抱え込む柚希の手を押さえつけてまで奪おうとする銀時と、必死に抵抗する柚希。
最初の内は微笑ましい兄弟げんかを見るようにほのぼのとした雰囲気で見守っていた松陽も、次第にプリンが原因でどちらかが命を落としそうな程に殺伐としてくると黙ってはいられない。
「はい、そろそろお終いにしましょうか。今回は銀時が悪いですね。人の物を強引に奪おうとするのはいけませんよ」
といつもの笑顔で言いながら、銀時の頭にゲンコツを落とす。
どういう原理なのか床へとめり込んでしまった銀時は、頭に大きなこぶを作り目に涙を浮かべながら固まってしまった。