第二章 ~松陽~(83P)
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「まさかとは思うけど、白い鬼って……」
「ええ、間違いなくこの子の事でしょうね。ってなわけで、連れて来ちゃいました」
「いやいやいや、意味分かんないからっ!」
怪しげな話を聞く度に、それを確認しようと出掛けて行ったことは度々あった。だがこうして誰かを連れ帰る事などさすがに無い。今回も噂の真相を確かめるだけかと思っていたのに……。
「連れて来ちゃったって、人さらいにならないの? この子の親は? そもそも何で戦場にいたの?」
「ちょっと落ち着いてくださいよ柚希。いっぺんに言われても答えられませんから」
「そんな事言ったって親父様……」
改めて少年を見れば、まるで手負いの獣のように警戒心を露わにしながら柚希を睨んでいる。下手に近付けば、持っている刀を抜いて斬りかかってくるかもしれない。
「これからどうするの?」
「どうしたら良いと思います?」
「まさかとは思うけど、何も考えてなかったの?」
「さて、どうでしょう」
「……親父様~っ!」
のらりくらりとかわされる答えの意味を読み取れず、いらつく柚希。不穏な空気を感じてか、少年もますます警戒心を強めていく。
そんな中、一人のほほんとしている吉田松陽と言う男は果たしてうつけか大物か。
「二人とも年は近いでしょうし、これから仲良くして下さいね」
の一言で場を収めたつもりなのか、「さ~て、人数も増えましたしちょっと食料を調達してきますね~」と言って一人そそくさと退散していく。
「ちょっ、親父様!?」
逃げられてはたまらないと慌てて止めた柚希だったが、その叫びは松陽に届くことなく、風に攫われていった。
「いくら何でも無茶苦茶だわ……」
追いかける間もなく松陽は姿を消し、残された柚希は大きなため息を吐く。しかも目の前には相変わらず自分を睨みつけてくる少年もいるわけで。さすがの柚希もこの状況をどうすれば良いのかは分からなかった。
「……ねぇ、君の名前は?」
とりあえず声をかけてみるしかないと、まずは名前を尋ねる。しかし少年は何も答えようとはしない。
「今いくつ? どこから来たの? 家族や親戚は?」
どれか一つくらい答えが返ってくるかと期待して尋ねるも、やはり少年は口を開かずただ柚希を睨みつけている。こんな態度を取ってくる相手とは出来れば関わりたくないのだが、松陽に仲良くしろと言われている以上放っておく事も出来ない。
「何で親父様について来たの?」
半ば諦めながら尋ねた柚希はゆっくり少年に近付くと、小さな手で握りしめている刀を指差した。
「ええ、間違いなくこの子の事でしょうね。ってなわけで、連れて来ちゃいました」
「いやいやいや、意味分かんないからっ!」
怪しげな話を聞く度に、それを確認しようと出掛けて行ったことは度々あった。だがこうして誰かを連れ帰る事などさすがに無い。今回も噂の真相を確かめるだけかと思っていたのに……。
「連れて来ちゃったって、人さらいにならないの? この子の親は? そもそも何で戦場にいたの?」
「ちょっと落ち着いてくださいよ柚希。いっぺんに言われても答えられませんから」
「そんな事言ったって親父様……」
改めて少年を見れば、まるで手負いの獣のように警戒心を露わにしながら柚希を睨んでいる。下手に近付けば、持っている刀を抜いて斬りかかってくるかもしれない。
「これからどうするの?」
「どうしたら良いと思います?」
「まさかとは思うけど、何も考えてなかったの?」
「さて、どうでしょう」
「……親父様~っ!」
のらりくらりとかわされる答えの意味を読み取れず、いらつく柚希。不穏な空気を感じてか、少年もますます警戒心を強めていく。
そんな中、一人のほほんとしている吉田松陽と言う男は果たしてうつけか大物か。
「二人とも年は近いでしょうし、これから仲良くして下さいね」
の一言で場を収めたつもりなのか、「さ~て、人数も増えましたしちょっと食料を調達してきますね~」と言って一人そそくさと退散していく。
「ちょっ、親父様!?」
逃げられてはたまらないと慌てて止めた柚希だったが、その叫びは松陽に届くことなく、風に攫われていった。
「いくら何でも無茶苦茶だわ……」
追いかける間もなく松陽は姿を消し、残された柚希は大きなため息を吐く。しかも目の前には相変わらず自分を睨みつけてくる少年もいるわけで。さすがの柚希もこの状況をどうすれば良いのかは分からなかった。
「……ねぇ、君の名前は?」
とりあえず声をかけてみるしかないと、まずは名前を尋ねる。しかし少年は何も答えようとはしない。
「今いくつ? どこから来たの? 家族や親戚は?」
どれか一つくらい答えが返ってくるかと期待して尋ねるも、やはり少年は口を開かずただ柚希を睨みつけている。こんな態度を取ってくる相手とは出来れば関わりたくないのだが、松陽に仲良くしろと言われている以上放っておく事も出来ない。
「何で親父様について来たの?」
半ば諦めながら尋ねた柚希はゆっくり少年に近付くと、小さな手で握りしめている刀を指差した。