第二章 ~松陽~(83P)
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そんな生活に大きな変化が訪れたのは、二人が出会っていくつかの季節が過ぎた頃。
「鬼が出たそうです」
「はぁ!?」
数日前から滞在している廃屋の台所で昼食の準備をしていた柚希は、松陽の突然の言葉に素っ頓狂な声をあげた。
「鬼って何? また変な噂でも聞いたの?」
人当たりの良い松陽は、町で買い物などをする際よく噂話を耳にしてくる。中には有益な物もありはするが、そのほとんどが意味のない世間話だ。
「親父様は眉唾物の怪しい話ばかり聞いてくるんだもん。その内話をまとめて本にでもしてみたら? 生活費の足しになるかもしれないし」
「あ、それ良いですねぇ」
「……冗談だからね?」
無駄に素直な松陽は、その気にさせたら本当にやらかしてしまう。速攻否定をしておいた柚希は、話を元に戻すよう促した。
「それで鬼ってどういう事なの?」
「ここからそう遠くない所では戦が行われているのですが、そこに死体を漁って生きる白い鬼がいるんだそうです」
「そういうのって、普通に天人の事だったりするんじゃ……」
「いえ、どうやら見てくれは人間の子供のようなのです。ちょっと興味が湧きませんか?」
「湧きません。っていうか親父様、私がどう答えても見に行く気満々だったでしょう」
「あれ、分かっちゃいましたか? これから行ってこようと思いまして」
さすが話が早い、とばかりに満面の笑みを浮かべる松陽。
過去にも何度かこのような事があり、既に慣れてしまっている柚希は呆れながらため息を吐いた。
「私はついて行けないんだよね?」
「そうですね。さすがに戦場は危険ですから」
「何日ここで待てば良いの?」
「三日。必ず三日後には戻ります。良い子で待っていられますよね、柚希」
包み込むような優しい笑顔で頭を撫でられれば、拒否など出来はしない。
「お土産待ってるからね、親父様」
その言葉にクスクスと笑いながら柚希を抱き寄せた松陽は「戦場でお土産というのも難しい話ですが、何とか頑張ってみましょう」と答えると、善は急げとばかりに準備を済ませて出かけて行った。
そしてピッタリ三日後の夕刻――。
「只今帰りましたよ、柚希。変わりは無いですか?」
「お帰りなさい親父様……って、その子は?」
松陽を出迎えた柚希の視界に入ったのは、松陽の後ろに立っている自分とあまり年の変わらない白髪の少年。
見覚えのある刀を握り締め、鋭い目で自分を睨みつけてくる姿に柚希は戸惑いを隠せなかった。
「鬼が出たそうです」
「はぁ!?」
数日前から滞在している廃屋の台所で昼食の準備をしていた柚希は、松陽の突然の言葉に素っ頓狂な声をあげた。
「鬼って何? また変な噂でも聞いたの?」
人当たりの良い松陽は、町で買い物などをする際よく噂話を耳にしてくる。中には有益な物もありはするが、そのほとんどが意味のない世間話だ。
「親父様は眉唾物の怪しい話ばかり聞いてくるんだもん。その内話をまとめて本にでもしてみたら? 生活費の足しになるかもしれないし」
「あ、それ良いですねぇ」
「……冗談だからね?」
無駄に素直な松陽は、その気にさせたら本当にやらかしてしまう。速攻否定をしておいた柚希は、話を元に戻すよう促した。
「それで鬼ってどういう事なの?」
「ここからそう遠くない所では戦が行われているのですが、そこに死体を漁って生きる白い鬼がいるんだそうです」
「そういうのって、普通に天人の事だったりするんじゃ……」
「いえ、どうやら見てくれは人間の子供のようなのです。ちょっと興味が湧きませんか?」
「湧きません。っていうか親父様、私がどう答えても見に行く気満々だったでしょう」
「あれ、分かっちゃいましたか? これから行ってこようと思いまして」
さすが話が早い、とばかりに満面の笑みを浮かべる松陽。
過去にも何度かこのような事があり、既に慣れてしまっている柚希は呆れながらため息を吐いた。
「私はついて行けないんだよね?」
「そうですね。さすがに戦場は危険ですから」
「何日ここで待てば良いの?」
「三日。必ず三日後には戻ります。良い子で待っていられますよね、柚希」
包み込むような優しい笑顔で頭を撫でられれば、拒否など出来はしない。
「お土産待ってるからね、親父様」
その言葉にクスクスと笑いながら柚希を抱き寄せた松陽は「戦場でお土産というのも難しい話ですが、何とか頑張ってみましょう」と答えると、善は急げとばかりに準備を済ませて出かけて行った。
そしてピッタリ三日後の夕刻――。
「只今帰りましたよ、柚希。変わりは無いですか?」
「お帰りなさい親父様……って、その子は?」
松陽を出迎えた柚希の視界に入ったのは、松陽の後ろに立っている自分とあまり年の変わらない白髪の少年。
見覚えのある刀を握り締め、鋭い目で自分を睨みつけてくる姿に柚希は戸惑いを隠せなかった。