第二章 ~松陽~(83P)
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「夢?」
「私の家族が殺されて、一人で生きて行こうと決意した頃の夢よ」
今朝柚希が夢見た悲しい過去は、既に銀時も知っている。一瞬ハッと目を見開いた銀時だったが、すぐに目を伏せると壁に着いていた手を離し、そっと柚希の肩に乗せた。
「……悪ィ。記憶を取り戻すっつー事は、そういう事でもあるんだよな」
柚希に記憶を取り戻させようとしていた時から抱いていた、罪の意識。柚希が自分以上に辛い過去を携えながら生きていた事を知っていただけに葛藤しながらも、最後に選んだのは記憶を取り戻させる事だった。
確かに柚希が選んだ結果でもあったが、それ以上に自分を思い出して欲しいという思いが強かったのは事実だ。
「今朝から塞ぎ込んでたのは、その事が原因か。だが他にも何かあんだろ? 全てを過去にってどういう事だよ」
幼き日の記憶が蘇ったにしては、何かが引っかかるあの時の柚希。銀時には小さく震えていた柚希の姿が、何かに怯えているように見えていたから。
このままでは柚希が消えてしまいそうに思え、見て見ぬフリは出来なかった。
「聞かせてくれよ、柚希」
「それは……天導衆が……」
「天導衆!?」
柚希の肩に乗せられていた銀時の手に、思わず力が入る。
「痛……っ」
柚希が小さく悲鳴を上げると、慌てて銀時が手を離した。
「すまねェ! って言うかお前、天導衆に襲われたのか?」
「襲われたというか、つけられていて……でも何もなかったよ。偶然通りかかった土方さんが助けてくれたし」
「真選組も良い働きしてんじゃねェか。だが何で天人や春雨じゃなくて、天導衆なんだよ。狙われる理由でもあんのか?」
そう聞かれて、柚希は言葉に詰まった。
先ほど自分をつけていた男は、あの語り口からして天導衆の者としてではなく、個人的な感情で動いているのだろう。そして狙っているのは、自分だけでは無く……。
本当はこの事を銀時に伝えねばならないと分かってはいるのだが、全てを話すには未だ覚悟が出来ていなかった。
ならばせめてと、核心には届かないが嘘ではない事実を告げる。
「私にも分からない。ただもしかしたら親父様に関係しているのかもしれないわ。私が親父様と繋がりがある事を知っているから」
それは二人にとって、言葉にするだけでも熱い物が込み上げてしまう、唯一無二の人物。
命よりも大切な存在だったというのに、後を追う事を許さない残酷な約束を遺した、誰よりも優しく愛しい人。
「松陽先生、か」
「私たち二人とも、あの人に拾われたんだものね」
「ああ、そうだな。お前の方がほんの少しばかり早かったけどよ」
そう言った銀時が、寂しさの混じった懐かしそうな笑みを浮かべる。
そんな銀時を見て、「うん……そうだったね……」と頷いた柚希もまた、眦に涙を残しながらも懐かしそうに微笑んだ。
「親父様と出会ってから、もう何年になるのかなぁ……」
「私の家族が殺されて、一人で生きて行こうと決意した頃の夢よ」
今朝柚希が夢見た悲しい過去は、既に銀時も知っている。一瞬ハッと目を見開いた銀時だったが、すぐに目を伏せると壁に着いていた手を離し、そっと柚希の肩に乗せた。
「……悪ィ。記憶を取り戻すっつー事は、そういう事でもあるんだよな」
柚希に記憶を取り戻させようとしていた時から抱いていた、罪の意識。柚希が自分以上に辛い過去を携えながら生きていた事を知っていただけに葛藤しながらも、最後に選んだのは記憶を取り戻させる事だった。
確かに柚希が選んだ結果でもあったが、それ以上に自分を思い出して欲しいという思いが強かったのは事実だ。
「今朝から塞ぎ込んでたのは、その事が原因か。だが他にも何かあんだろ? 全てを過去にってどういう事だよ」
幼き日の記憶が蘇ったにしては、何かが引っかかるあの時の柚希。銀時には小さく震えていた柚希の姿が、何かに怯えているように見えていたから。
このままでは柚希が消えてしまいそうに思え、見て見ぬフリは出来なかった。
「聞かせてくれよ、柚希」
「それは……天導衆が……」
「天導衆!?」
柚希の肩に乗せられていた銀時の手に、思わず力が入る。
「痛……っ」
柚希が小さく悲鳴を上げると、慌てて銀時が手を離した。
「すまねェ! って言うかお前、天導衆に襲われたのか?」
「襲われたというか、つけられていて……でも何もなかったよ。偶然通りかかった土方さんが助けてくれたし」
「真選組も良い働きしてんじゃねェか。だが何で天人や春雨じゃなくて、天導衆なんだよ。狙われる理由でもあんのか?」
そう聞かれて、柚希は言葉に詰まった。
先ほど自分をつけていた男は、あの語り口からして天導衆の者としてではなく、個人的な感情で動いているのだろう。そして狙っているのは、自分だけでは無く……。
本当はこの事を銀時に伝えねばならないと分かってはいるのだが、全てを話すには未だ覚悟が出来ていなかった。
ならばせめてと、核心には届かないが嘘ではない事実を告げる。
「私にも分からない。ただもしかしたら親父様に関係しているのかもしれないわ。私が親父様と繋がりがある事を知っているから」
それは二人にとって、言葉にするだけでも熱い物が込み上げてしまう、唯一無二の人物。
命よりも大切な存在だったというのに、後を追う事を許さない残酷な約束を遺した、誰よりも優しく愛しい人。
「松陽先生、か」
「私たち二人とも、あの人に拾われたんだものね」
「ああ、そうだな。お前の方がほんの少しばかり早かったけどよ」
そう言った銀時が、寂しさの混じった懐かしそうな笑みを浮かべる。
そんな銀時を見て、「うん……そうだったね……」と頷いた柚希もまた、眦に涙を残しながらも懐かしそうに微笑んだ。
「親父様と出会ってから、もう何年になるのかなぁ……」