第二章 ~松陽~(83P)
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「やだ、驚かせないでよ」
「寿命が縮んじゃうじゃない」と冗談のように言いながら、未だ袋の中に残っていた食材を片付け始める。
「ほんと、銀時ってば人が悪いんだから。あ、でもそっか。お茶の時間を過ぎちゃってるし、糖分が切れて待ちきれなくなったんだよね。急いで準備するから向こうで待っててよ」
手際良く片付けを進め、買ってきておいた甘い茶菓子を見せる柚希。しかし銀時はと言うと、好物であるはずの茶菓子には目もくれず、冷めた目で柚希を見つめるだけだった。
「もう、目つき怖いよ銀時。柚希さんとしては、出来れば優しい眼差しを所望したいんですけどね~」
クスクスと笑いながらやかんに火をかけ、皿と湯飲みを棚から出す。
「ほら銀時。すぐに準備できるからあっちで……」
「下手な芝居は止めろよな。痛々しくて見てるこっちが辛くなる」
ずっと柚希が一人でしゃべり続けているのを黙って聞いていた銀時が、ようやく口にした言葉。それは柚希の言葉を完全に遮るものだった。
「銀……」
「買い物に出ている間に何があった? 今朝から少しおかしいのは分かってたけどよ、今はその比じゃねェ。お前をそこまで追い詰めてるものは一体何なんだ?」
完全に読まれており、反論の出来ない柚希は口を噤む事しかできない。
そんな柚希に、銀時は更に詰め寄った。
「お前が二人きりの時に俺を『銀時』と呼ぶのは、喧嘩した時か後ろ暗い物がある時だ。……何を隠してる?」
「べ……つに私は……」
何とかその場を取り繕おうと無理な笑みを浮かべる柚希を、追い込むように迫りくる銀時。既に柚希の後ろには逃げ場など無く、ドン、と壁に着いた銀時の両腕が柚希を挟み込んでいた。
「今更俺に、ごまかしが通用すると思ってたってか。暫く離れてる間に随分他人行儀になったもんだな」
至近距離で赤い瞳に睨みつけられ、柚希の顔がくしゃりとゆがむ。だがそれは恐怖の為ではなく、柚希の中にある悲しみが漏れ出てしまった物だ。
「そんなつもりじゃ……」
「無いって言っても説得力ねェよ。……なァ柚希、俺ってそんなに頼りねェか?」
コツン、と銀時の額が柚希の額に重なる。
「俺ァもう十分大人だ。お前一人受け止められるくらいの器は持ってるつもりだぜ。だから話せよ。お前ん中にあるモン全て吐き出しちまえ」
そう言うと銀時は、柚希の眦に口付けた。
唇が触れて柚希がようやく気付いたのは、自らが涙を流していた事。その涙を拭うように何度も何度も、銀時は柚希に口付けた。
それがまた柚希の胸を焦がし、更なる涙を呼び起こす。
「夢……を見たの」
もう、全てを一人で抱え込むには限界だった。
「寿命が縮んじゃうじゃない」と冗談のように言いながら、未だ袋の中に残っていた食材を片付け始める。
「ほんと、銀時ってば人が悪いんだから。あ、でもそっか。お茶の時間を過ぎちゃってるし、糖分が切れて待ちきれなくなったんだよね。急いで準備するから向こうで待っててよ」
手際良く片付けを進め、買ってきておいた甘い茶菓子を見せる柚希。しかし銀時はと言うと、好物であるはずの茶菓子には目もくれず、冷めた目で柚希を見つめるだけだった。
「もう、目つき怖いよ銀時。柚希さんとしては、出来れば優しい眼差しを所望したいんですけどね~」
クスクスと笑いながらやかんに火をかけ、皿と湯飲みを棚から出す。
「ほら銀時。すぐに準備できるからあっちで……」
「下手な芝居は止めろよな。痛々しくて見てるこっちが辛くなる」
ずっと柚希が一人でしゃべり続けているのを黙って聞いていた銀時が、ようやく口にした言葉。それは柚希の言葉を完全に遮るものだった。
「銀……」
「買い物に出ている間に何があった? 今朝から少しおかしいのは分かってたけどよ、今はその比じゃねェ。お前をそこまで追い詰めてるものは一体何なんだ?」
完全に読まれており、反論の出来ない柚希は口を噤む事しかできない。
そんな柚希に、銀時は更に詰め寄った。
「お前が二人きりの時に俺を『銀時』と呼ぶのは、喧嘩した時か後ろ暗い物がある時だ。……何を隠してる?」
「べ……つに私は……」
何とかその場を取り繕おうと無理な笑みを浮かべる柚希を、追い込むように迫りくる銀時。既に柚希の後ろには逃げ場など無く、ドン、と壁に着いた銀時の両腕が柚希を挟み込んでいた。
「今更俺に、ごまかしが通用すると思ってたってか。暫く離れてる間に随分他人行儀になったもんだな」
至近距離で赤い瞳に睨みつけられ、柚希の顔がくしゃりとゆがむ。だがそれは恐怖の為ではなく、柚希の中にある悲しみが漏れ出てしまった物だ。
「そんなつもりじゃ……」
「無いって言っても説得力ねェよ。……なァ柚希、俺ってそんなに頼りねェか?」
コツン、と銀時の額が柚希の額に重なる。
「俺ァもう十分大人だ。お前一人受け止められるくらいの器は持ってるつもりだぜ。だから話せよ。お前ん中にあるモン全て吐き出しちまえ」
そう言うと銀時は、柚希の眦に口付けた。
唇が触れて柚希がようやく気付いたのは、自らが涙を流していた事。その涙を拭うように何度も何度も、銀時は柚希に口付けた。
それがまた柚希の胸を焦がし、更なる涙を呼び起こす。
「夢……を見たの」
もう、全てを一人で抱え込むには限界だった。