第二章 ~松陽~(83P)
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「え~っと、お野菜はこれで足りるから、あとはお肉とお味噌かな」
商店街を歩きながら、買い物メモをチェックする。もう片方の手には、ずっしりと重そうな買い物袋が握られていた。
朝食後、暇を持て余していた柚希はせっかく天気が良いのだからと、一人でウインドウショッピングに出かけていた。銀時も一緒について行きたがってはいたのだが、珍しく仕事の依頼が入っていた為願い叶わず。だがお陰で柚希はのびのびと自由に歩いて回る事ができていた。
ただし結局買っているのは、万事屋の者たちに食べさせるための食材ばかりだったが。
「昔からこういう役回りで嘆いてたけど、結局これが私の本質なのかしら」
色々と欲しい物はあるはずなのに、つい探してしまうのは銀時や新八、神楽が喜びそうなものばかり。しかも全てが食べ物なのだから、柚希の中にある万事屋のイメージは『よく食べる何でも屋』として定着してしまったのだろう。
自分の買い物を諦め、ギッシリと書き込んでおいた買い物メモを取り出したのは、出かけてから小一時間も経たない頃だった。
「まぁこれはこれで楽しいから、良いんだけどね。何かをしてあげられる人がいるって事は、生きてるって事なんだし」
ふふっと幸せそうな笑みを浮かべた柚希はまず、肉屋を目指した。大通りから少し外れた所にある肉屋が良いと別の店の者から聞き、教えられた通りの路地へと入っていく。そこには数件の店が並んでいたが、あまり知られていないのか人通りはまばらだった。
目当ての看板を見つけた柚希は手にしていたメモを買い物袋に入れ、何故かその袋を道の端へと置く。そして懐から例の扇子を取り出すと、静かに開きながら言った。
「ねぇ、さっきからずっと私をつけてたよね。殺気が無いから放っておいたけど、いくら自由の町とはいえ、そんな笠を被って尾行していればさすがに目立つわよ」
ゆっくりと振り向いた柚希の視線の先には、天蓋を被り、錫杖を持った虚無僧姿の男が一人立っている。
「それとも人気の無い所で私を殺そうと、様子を伺っていたのかしら。何にしてもストーキングは迷惑だし、消えてくれない?」
どうやら柚希は買い物をしながら、存在に気付いていた相手の出方を伺っていたらしい。よく見れば、涼しい顔をしていながらも柚希の頬には冷や汗が伝っていた。
――相手はたった一人とは言え相当な手練れのようだし、あの出で立ちは多分天導衆よね。こいつは相当やっかいだぞ。
気付かぬフリをしたまま買い物を続けるなり、途中で振り切るなりすれば良かったのかもしれない。だが柚希の中にある戦いの勘が、それは止めておくべきだと伝えていた。
「手出しさえしてこなければ、あんた達に関わる気なんて無いから放っておいてよね」
万が一を考え、肩の位置に扇子を構えながら返事を待つ。だが男はそのまま殺気を放つ事もなく、ただ柚希を探るようにこちらを向いて仁王立ちになっていた。
その不穏な空気を感じたのか、数人の通行人たちが慌てて路地から出て行く。
そして最後の一人の姿が見えなくなった時、二人は動いた。
商店街を歩きながら、買い物メモをチェックする。もう片方の手には、ずっしりと重そうな買い物袋が握られていた。
朝食後、暇を持て余していた柚希はせっかく天気が良いのだからと、一人でウインドウショッピングに出かけていた。銀時も一緒について行きたがってはいたのだが、珍しく仕事の依頼が入っていた為願い叶わず。だがお陰で柚希はのびのびと自由に歩いて回る事ができていた。
ただし結局買っているのは、万事屋の者たちに食べさせるための食材ばかりだったが。
「昔からこういう役回りで嘆いてたけど、結局これが私の本質なのかしら」
色々と欲しい物はあるはずなのに、つい探してしまうのは銀時や新八、神楽が喜びそうなものばかり。しかも全てが食べ物なのだから、柚希の中にある万事屋のイメージは『よく食べる何でも屋』として定着してしまったのだろう。
自分の買い物を諦め、ギッシリと書き込んでおいた買い物メモを取り出したのは、出かけてから小一時間も経たない頃だった。
「まぁこれはこれで楽しいから、良いんだけどね。何かをしてあげられる人がいるって事は、生きてるって事なんだし」
ふふっと幸せそうな笑みを浮かべた柚希はまず、肉屋を目指した。大通りから少し外れた所にある肉屋が良いと別の店の者から聞き、教えられた通りの路地へと入っていく。そこには数件の店が並んでいたが、あまり知られていないのか人通りはまばらだった。
目当ての看板を見つけた柚希は手にしていたメモを買い物袋に入れ、何故かその袋を道の端へと置く。そして懐から例の扇子を取り出すと、静かに開きながら言った。
「ねぇ、さっきからずっと私をつけてたよね。殺気が無いから放っておいたけど、いくら自由の町とはいえ、そんな笠を被って尾行していればさすがに目立つわよ」
ゆっくりと振り向いた柚希の視線の先には、天蓋を被り、錫杖を持った虚無僧姿の男が一人立っている。
「それとも人気の無い所で私を殺そうと、様子を伺っていたのかしら。何にしてもストーキングは迷惑だし、消えてくれない?」
どうやら柚希は買い物をしながら、存在に気付いていた相手の出方を伺っていたらしい。よく見れば、涼しい顔をしていながらも柚希の頬には冷や汗が伝っていた。
――相手はたった一人とは言え相当な手練れのようだし、あの出で立ちは多分天導衆よね。こいつは相当やっかいだぞ。
気付かぬフリをしたまま買い物を続けるなり、途中で振り切るなりすれば良かったのかもしれない。だが柚希の中にある戦いの勘が、それは止めておくべきだと伝えていた。
「手出しさえしてこなければ、あんた達に関わる気なんて無いから放っておいてよね」
万が一を考え、肩の位置に扇子を構えながら返事を待つ。だが男はそのまま殺気を放つ事もなく、ただ柚希を探るようにこちらを向いて仁王立ちになっていた。
その不穏な空気を感じたのか、数人の通行人たちが慌てて路地から出て行く。
そして最後の一人の姿が見えなくなった時、二人は動いた。