第四章 〜絆〜(連載中)
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そうこうしている内に、パトカーが到着する。万事屋の一階にある『スナックお登勢』の前で停まると、柚希だけが降ろされた。ドアを閉めた信女が、代わりに開けた窓から柚希を見る。
「これが正解なのかは分からないけど」
そう言って移動させた視線は、車の前方。
「後の事は彼に任せるわ」
「彼って……え?」
信女の視線を追うより早く感じた殺気。それは決して柚希に向けられてなどいないのに、反射的に冷や汗が吹き出るほど鋭かった。
「そいつから離れろ、柚希!」
遠くで叫んだのは──銀時。持っていた松葉杖を投げ捨て、つんのめりながら走り寄る。そして柚希の腕を掴んで抱き寄せると、柚希を守るようにパトカーとの間に自らの体を割り込ませて叫んだ。
「何でここにいる? まさか柚希まで連れて行こうってんじゃねェだろうな!?」
「ちょっと、突然どうしたのよシロ! 彼女は私をここまで送ってくれただけで……」
あまりの剣幕に驚いた柚希が慌てて現状を説明しようとするも、聞く耳を持たず。柚希を抱きしめたまま、銀時は信女を睨みつけている。
「シロ……?」
銀時がこんなにも嫌悪をあらわにするなんて、余程の理由があるに違いない。長い付き合いから分かってはいても、その対象が信女である事を柚希は理解できなかった。
ただ、このまま事の成り行きを見ているには殺伐とし過ぎていることは分かる。だから、柚希は動いた。
「二人共知り合いだったの? 何があったのか知らないけど、喧嘩でもしてるんなら──」
「んな生易しいもんじゃねェよ」
しかしそれは当事者の銀時に遮られる。
信女から視線を外すこと無く、銀時は言った。
「俺たちがやってんのは、命のやり取りだ」
「どういうこと? 何でシロが信女ちゃんと命のやり取りなんてしてるのよ」
「コイツはこん──」
そう銀時が理由を口にしかけた時。
「用は済んだから、車を出して」
今度は信女が銀時の言葉を遮った。
今にも噛み付いてきそうな鋭い殺気を真正面から受けながらも、全く怯むことなく冷静に運転席の男に指示を出す。
ここまで蚊帳の外だった男は「分かりました」と言って頷くと、ブレーキを踏んでいた足を緩めた。それに合わせ、ゆっくりとパトカーが動き始める。
「おい、待てよ!」
「どちらの想いの方が強いのかしらね」
「はァ? 何の話だっつーの」
「全ては貴方次第よ」
「だから何の──」
「せいぜい頑張ることね、白夜叉さん」
「あ、おい、待ちやがれ……ッ!」
引き止めようと伸ばした銀時の手は届かない。信女を乗せたパトカーは、あっさりと走り去ってしまった。
「くそッ!」
信女の姿が見えなくなっても怒りの収まらない銀時が、空を掴まされた拳を振り下ろす。
何が銀時をこんなにも激昂させているのか。理由の分からない柚希は、恐る恐る銀時の着物を掴んで引いた。
「シロ……落ち着いて?」
静かにゆっくりと語りかければ、ハッとしたように腕の中の柚希を見る銀時。視線が絡み、怒りにギラついた瞳の火が弱まっていくと、ようやくいつもの銀時らしさが戻った。
それを確認した柚希はホッとしながら万感の思いを込め、もう一度銀時の名を呼ぶ。
「あのね、シロ」
「……なんだよ」
不貞腐れて眉間にシワを寄せる銀時に向けて、柚希は言った。
「ただいま」
小言でも言われるかと構えていたのに、思わぬ言葉で返されたから。
「……ったく……」
バツの悪さもあってか、わざとらしくため息を吐く銀時。そして自分を見上げている柚希を腕の中に招き入れると、髪に口付けながら優しく囁くように言った。
「……お帰り」
「これが正解なのかは分からないけど」
そう言って移動させた視線は、車の前方。
「後の事は彼に任せるわ」
「彼って……え?」
信女の視線を追うより早く感じた殺気。それは決して柚希に向けられてなどいないのに、反射的に冷や汗が吹き出るほど鋭かった。
「そいつから離れろ、柚希!」
遠くで叫んだのは──銀時。持っていた松葉杖を投げ捨て、つんのめりながら走り寄る。そして柚希の腕を掴んで抱き寄せると、柚希を守るようにパトカーとの間に自らの体を割り込ませて叫んだ。
「何でここにいる? まさか柚希まで連れて行こうってんじゃねェだろうな!?」
「ちょっと、突然どうしたのよシロ! 彼女は私をここまで送ってくれただけで……」
あまりの剣幕に驚いた柚希が慌てて現状を説明しようとするも、聞く耳を持たず。柚希を抱きしめたまま、銀時は信女を睨みつけている。
「シロ……?」
銀時がこんなにも嫌悪をあらわにするなんて、余程の理由があるに違いない。長い付き合いから分かってはいても、その対象が信女である事を柚希は理解できなかった。
ただ、このまま事の成り行きを見ているには殺伐とし過ぎていることは分かる。だから、柚希は動いた。
「二人共知り合いだったの? 何があったのか知らないけど、喧嘩でもしてるんなら──」
「んな生易しいもんじゃねェよ」
しかしそれは当事者の銀時に遮られる。
信女から視線を外すこと無く、銀時は言った。
「俺たちがやってんのは、命のやり取りだ」
「どういうこと? 何でシロが信女ちゃんと命のやり取りなんてしてるのよ」
「コイツはこん──」
そう銀時が理由を口にしかけた時。
「用は済んだから、車を出して」
今度は信女が銀時の言葉を遮った。
今にも噛み付いてきそうな鋭い殺気を真正面から受けながらも、全く怯むことなく冷静に運転席の男に指示を出す。
ここまで蚊帳の外だった男は「分かりました」と言って頷くと、ブレーキを踏んでいた足を緩めた。それに合わせ、ゆっくりとパトカーが動き始める。
「おい、待てよ!」
「どちらの想いの方が強いのかしらね」
「はァ? 何の話だっつーの」
「全ては貴方次第よ」
「だから何の──」
「せいぜい頑張ることね、白夜叉さん」
「あ、おい、待ちやがれ……ッ!」
引き止めようと伸ばした銀時の手は届かない。信女を乗せたパトカーは、あっさりと走り去ってしまった。
「くそッ!」
信女の姿が見えなくなっても怒りの収まらない銀時が、空を掴まされた拳を振り下ろす。
何が銀時をこんなにも激昂させているのか。理由の分からない柚希は、恐る恐る銀時の着物を掴んで引いた。
「シロ……落ち着いて?」
静かにゆっくりと語りかければ、ハッとしたように腕の中の柚希を見る銀時。視線が絡み、怒りにギラついた瞳の火が弱まっていくと、ようやくいつもの銀時らしさが戻った。
それを確認した柚希はホッとしながら万感の思いを込め、もう一度銀時の名を呼ぶ。
「あのね、シロ」
「……なんだよ」
不貞腐れて眉間にシワを寄せる銀時に向けて、柚希は言った。
「ただいま」
小言でも言われるかと構えていたのに、思わぬ言葉で返されたから。
「……ったく……」
バツの悪さもあってか、わざとらしくため息を吐く銀時。そして自分を見上げている柚希を腕の中に招き入れると、髪に口付けながら優しく囁くように言った。
「……お帰り」