第四章 〜絆〜(連載中)
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一方銀時はと言うと、柚希からの電話に違和感を覚えたままでいた。
受話器を置いて電話の直前まで寝そべっていたソファに戻り、たった今までやり取りしていた電話の内容を思い出しながらぼやく。
「柚希のヤツ、ま〜た何か隠してやがるな」
柚希が銀時の声から様々な情報を引き出そうとしていたように、銀時もまた柚希を探っていた。だが読み取れたのはそれなりに里帰りを楽しんでいると言うことと、何か気に病むことがあったらしいという事くらい。電話をかける側と受ける側では心づもりの差が出るのは致し方なく、実際銀時も自分の中に生まれていた違和感の理由を見つける余裕はなかった。
「滞在期間を延ばすよう言ったのは失敗だったかねェ。でもこっちに帰ってきたトコロで、厄介事に巻き込まれるだけだ。朧のヤローも一枚絡んでやがるし、今は少しでも安全なトコに置いといてやりてーわ」
共に松陽の下で育ち、攘夷戦争でも共に戦ってきたからこそ分かる柚希の強さ。本気で戦えば全盛期の銀時ですら怯んでしまうほどだと言うのに、朧の前ではその実力を発揮することができないのだから、近付かせないに越したことはないだろう。
「墓に問題は無かったみてーだし、特にトラブルも起きちゃいねェようだが……」
机の上に置きっぱなしだったいちご牛乳を掴み、ストローを咥える。
「情報も届いちゃいねェって事か?」
ジュッといちご牛乳を吸い込んだ銀時は、もう片方の手でリモコンを掴むとテレビをオンにした。
ここのところワイドショーで賑わっているのは、新将軍について。彼がその地位を得るまでの経緯は見事に隠蔽され、一部の者たちに都合の良い情報ばかりではあったが、連日テレビはこの話題でもちきりだった。
ところが柚希は、銀時が『城からの依頼』を受けていた事を知っていながらも、新将軍即位についての話題を一切口にせず。これだけ世の中で大きく取り上げられているにもかかわらず、訝しげにはしながらも銀時の言葉を聞き流すだけだった。
「田舎とは言え、テレビやラジオはあるんだ。あんなでっけェニュースを柚希が知らねェはずは──」
そこまで言ってハッとする。
考えられるのは、将軍暗殺計画に関する情報が柚希に伝わらぬよう誰かが手を回したという事。そんな事を目論むだけでなく、実行まで出来てしまう存在があるとすれば──。
「まさか……!」
嫌な予感が頭を過ぎる。次の瞬間にはもう、銀時の手は電話にかかっていた。
昨夜お登勢から渡されたメモの番号は、緒方診療所の受付用と本宅どちらの物だろう。繋がってくれるかは分からないが、それでも今はこの番号しか分からないのだからとダイヤルすれば、何の問題もなく鳴り出したコール音。
受話器を握る手に力がこもる。二回、三回と呼び続け、四回目の音に代わって聞こえてきたのは、老いを感じさせながらも懐かしい声だった。
『はい、緒方診療所です。急患ですか? それとも──』
「おっさん!」
『え? おっさん?……失礼だけど、どちら様かな?』
「俺だよ俺!」
『オレオレ詐欺なら番号をお間違えですよ』
「いやそうじゃなくて銀時! 坂田銀時だよ!」
『銀時……本当にあの銀時くんかい?』
「そーそー。銀髪天パで柚希がシロって呼んでたあの銀時! 覚えてんだろ?」
『もちろん覚えているさ。久しぶりだねぇ、元気にしていたのかい? それにしても第一声がおっさんだなんて、柚希ちゃんや桂くんから君の話はいくらか聞いていたけど、そういうところは変わってないなぁ』
突然かかってきた失礼な電話の主が銀時と分かり、苦笑いしながらも喜ぶ緒方。だが銀時からの電話での再会を喜ぶ言葉は無かった。
「悪ィ。ゆっくり懐かしんでる時間はねェんだ。単刀直入に聞く。柚希は診療所に戻ってるか?」
『柚希ちゃん? いや、戻ってはいないはずだけど……そんなに慌ててどうしたんだい? 何か忘れ物でもしてるんだったら、後で送ってあげるから言ってくれれば──』
「忘れ物? まさか柚希は……」
『あぁ、ひょっとして連絡が入れ違いになったのかな。もう江戸に向かっているよ』
「あいつ、やっぱり……!」
ドン、と机を叩いて絞り出すように言う銀時。電話越しにも伝わってくる怒りと焦りは、ただ事ではない何かが起きているのだと緒方に理解させた。
『柚希ちゃんに何かあったのかい? 僕にも話を聞かせてくれないかな。でないと会話が成り立たないよ』
できるだけ穏やかな口調で訊ねる。それは未だ銀時が大切な思い出の場所に住んでいた頃を思い出させる優しい声で、少しではあるが銀時に冷静さを取り戻させた。
受話器を置いて電話の直前まで寝そべっていたソファに戻り、たった今までやり取りしていた電話の内容を思い出しながらぼやく。
「柚希のヤツ、ま〜た何か隠してやがるな」
柚希が銀時の声から様々な情報を引き出そうとしていたように、銀時もまた柚希を探っていた。だが読み取れたのはそれなりに里帰りを楽しんでいると言うことと、何か気に病むことがあったらしいという事くらい。電話をかける側と受ける側では心づもりの差が出るのは致し方なく、実際銀時も自分の中に生まれていた違和感の理由を見つける余裕はなかった。
「滞在期間を延ばすよう言ったのは失敗だったかねェ。でもこっちに帰ってきたトコロで、厄介事に巻き込まれるだけだ。朧のヤローも一枚絡んでやがるし、今は少しでも安全なトコに置いといてやりてーわ」
共に松陽の下で育ち、攘夷戦争でも共に戦ってきたからこそ分かる柚希の強さ。本気で戦えば全盛期の銀時ですら怯んでしまうほどだと言うのに、朧の前ではその実力を発揮することができないのだから、近付かせないに越したことはないだろう。
「墓に問題は無かったみてーだし、特にトラブルも起きちゃいねェようだが……」
机の上に置きっぱなしだったいちご牛乳を掴み、ストローを咥える。
「情報も届いちゃいねェって事か?」
ジュッといちご牛乳を吸い込んだ銀時は、もう片方の手でリモコンを掴むとテレビをオンにした。
ここのところワイドショーで賑わっているのは、新将軍について。彼がその地位を得るまでの経緯は見事に隠蔽され、一部の者たちに都合の良い情報ばかりではあったが、連日テレビはこの話題でもちきりだった。
ところが柚希は、銀時が『城からの依頼』を受けていた事を知っていながらも、新将軍即位についての話題を一切口にせず。これだけ世の中で大きく取り上げられているにもかかわらず、訝しげにはしながらも銀時の言葉を聞き流すだけだった。
「田舎とは言え、テレビやラジオはあるんだ。あんなでっけェニュースを柚希が知らねェはずは──」
そこまで言ってハッとする。
考えられるのは、将軍暗殺計画に関する情報が柚希に伝わらぬよう誰かが手を回したという事。そんな事を目論むだけでなく、実行まで出来てしまう存在があるとすれば──。
「まさか……!」
嫌な予感が頭を過ぎる。次の瞬間にはもう、銀時の手は電話にかかっていた。
昨夜お登勢から渡されたメモの番号は、緒方診療所の受付用と本宅どちらの物だろう。繋がってくれるかは分からないが、それでも今はこの番号しか分からないのだからとダイヤルすれば、何の問題もなく鳴り出したコール音。
受話器を握る手に力がこもる。二回、三回と呼び続け、四回目の音に代わって聞こえてきたのは、老いを感じさせながらも懐かしい声だった。
『はい、緒方診療所です。急患ですか? それとも──』
「おっさん!」
『え? おっさん?……失礼だけど、どちら様かな?』
「俺だよ俺!」
『オレオレ詐欺なら番号をお間違えですよ』
「いやそうじゃなくて銀時! 坂田銀時だよ!」
『銀時……本当にあの銀時くんかい?』
「そーそー。銀髪天パで柚希がシロって呼んでたあの銀時! 覚えてんだろ?」
『もちろん覚えているさ。久しぶりだねぇ、元気にしていたのかい? それにしても第一声がおっさんだなんて、柚希ちゃんや桂くんから君の話はいくらか聞いていたけど、そういうところは変わってないなぁ』
突然かかってきた失礼な電話の主が銀時と分かり、苦笑いしながらも喜ぶ緒方。だが銀時からの電話での再会を喜ぶ言葉は無かった。
「悪ィ。ゆっくり懐かしんでる時間はねェんだ。単刀直入に聞く。柚希は診療所に戻ってるか?」
『柚希ちゃん? いや、戻ってはいないはずだけど……そんなに慌ててどうしたんだい? 何か忘れ物でもしてるんだったら、後で送ってあげるから言ってくれれば──』
「忘れ物? まさか柚希は……」
『あぁ、ひょっとして連絡が入れ違いになったのかな。もう江戸に向かっているよ』
「あいつ、やっぱり……!」
ドン、と机を叩いて絞り出すように言う銀時。電話越しにも伝わってくる怒りと焦りは、ただ事ではない何かが起きているのだと緒方に理解させた。
『柚希ちゃんに何かあったのかい? 僕にも話を聞かせてくれないかな。でないと会話が成り立たないよ』
できるだけ穏やかな口調で訊ねる。それは未だ銀時が大切な思い出の場所に住んでいた頃を思い出させる優しい声で、少しではあるが銀時に冷静さを取り戻させた。