第四章 〜絆〜(連載中)
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「こちらこそ、聞かせてくれてありがとう」
「どういたしまして、と言いたいところだけど、私は何もしてないからお礼なんていらないよ。それより正式なお付き合いに至ったきっかけは? 姉弟の関係から恋人の関係にシフトするのってどんな感じだったの? この機会に包み隠さず赤裸々に話してごらんなさ〜い」
「え? ちょっとやだ小夜ちゃんってば、すっごく悪い顔になってるんだけど」
「こんな面白い話、ここで聞かずしてどうするのよ! 今こそじっくり時間をかけて語ってもらうわよ。何ならパフェ頼む?」
「無理無理! 第一未だこの時間はやってないでしょ!」
「チッ、仕方ない。じゃあお代わり自由のコーヒーで時間を稼ぐとしますか。……で? どっちから告白したの?」
引き気味な柚希を他所に、小夜による怒涛の質問が浴びせかけられる。終始小夜がニヤニヤと笑っていたため、一度落ち着いた頬の色を再び赤く染めながら、柚希は銀時と心を通わせた日までの事を語らざるを得なかった。
結局話が一段落したのは、柚希が銀時への想いに気付いた件から始まってたっぷり二時間後。
「ーーとまぁそういうわけだから……もうこの辺りで勘弁してよ〜」
語り疲れと恥ずかし疲れで一つ大きなため息を吐いた柚希が言うと、小夜はニヤニヤ笑顔のまま口を尖らせる。
「え〜? ここからが大人の恋愛話の醍醐味なのに〜。でもまぁ仕方ない。今日のところはここまでとしますか。とりあえずこの話は、緒方先生にも聞かせてあげなきゃね」
「やめて〜! そんな事したらシロ……銀時に怒られちゃうじゃない!」
慌てて柚希が止めると、その本気の慌てっぷりに小夜が吹き出した。
「そんな事するはずないでしょ。こういう美味しいネタは、いざっていう時までとっておくんだから」
「いざって何!? もう、小夜ちゃんがこんなキャラだったなんて、今日初めて知ったわよ」
「まあまあ、それが大人になるってことよ。何にしても幸せそうで良かったわ」
雑なまとめ方をされて「ええ〜?」と不満げに返すも、小夜に対して腹が立たないのは、柚希の幸せを心から喜んでくれているのが分かるから。「もう、小夜ちゃんってば!」と呆れたように言いながらも、柚希は小夜の気持ちをありがたく思っていた。
とは言えやはりこういう話をするのはどこか気恥ずかしいもの。緊張でカラカラになった喉を潤すため、三杯目のコーヒーをお代わりした柚希は、いつもは入れない砂糖を二つ放り込むと「今頃はシロもくしゃみ連発だろうな」と呟いてスプーンでかき混ぜる。すると同じくお代わりしたコーヒーにミルクを入れながら、小夜が言った。
「あ、そうだ。その銀時くんだけど、どうして緒方診療所に顔を出さなかったの? ひょっとして柚希ちゃんと付き合うようになったから照れくさかったとか? 緒方先生、口には出してないかも知れないけど、銀時くんの事もずっと心配してたんだよ。今からでも遅くないし、思い切って二人で交際宣言しに行ったら喜ぶと思うけどなぁ」
そしてコクリと一口飲み、どうよ? と言いたげな表情を見せる。
「銀時?」
しかし小夜の問いは、何故か柚希に違和感を覚えさせていた。その理由が何なのか分からぬまま、とりあえず柚希は答える。
「残念ながら今回こちらに来たのは私だけなのよ。銀時は江戸に残って万事屋の仕事をしてるわ」
「そうなの? おっかしいなぁ。じゃああれは誰だったんだろう」
ーーゾクリ。
瞬間、小夜の呟きが寒気となって柚希の全身を覆った。ちらりと腕を見れば、はっきりと目に見えて鳥肌が立っている。
「……何の話……?」
訊きたくない。でも訊かねばならない。先程感じた違和感の原因はここにあると、確信してしまったから。
意を決して訊ねるも、柚希の声は小さく震えていた。
「どういたしまして、と言いたいところだけど、私は何もしてないからお礼なんていらないよ。それより正式なお付き合いに至ったきっかけは? 姉弟の関係から恋人の関係にシフトするのってどんな感じだったの? この機会に包み隠さず赤裸々に話してごらんなさ〜い」
「え? ちょっとやだ小夜ちゃんってば、すっごく悪い顔になってるんだけど」
「こんな面白い話、ここで聞かずしてどうするのよ! 今こそじっくり時間をかけて語ってもらうわよ。何ならパフェ頼む?」
「無理無理! 第一未だこの時間はやってないでしょ!」
「チッ、仕方ない。じゃあお代わり自由のコーヒーで時間を稼ぐとしますか。……で? どっちから告白したの?」
引き気味な柚希を他所に、小夜による怒涛の質問が浴びせかけられる。終始小夜がニヤニヤと笑っていたため、一度落ち着いた頬の色を再び赤く染めながら、柚希は銀時と心を通わせた日までの事を語らざるを得なかった。
結局話が一段落したのは、柚希が銀時への想いに気付いた件から始まってたっぷり二時間後。
「ーーとまぁそういうわけだから……もうこの辺りで勘弁してよ〜」
語り疲れと恥ずかし疲れで一つ大きなため息を吐いた柚希が言うと、小夜はニヤニヤ笑顔のまま口を尖らせる。
「え〜? ここからが大人の恋愛話の醍醐味なのに〜。でもまぁ仕方ない。今日のところはここまでとしますか。とりあえずこの話は、緒方先生にも聞かせてあげなきゃね」
「やめて〜! そんな事したらシロ……銀時に怒られちゃうじゃない!」
慌てて柚希が止めると、その本気の慌てっぷりに小夜が吹き出した。
「そんな事するはずないでしょ。こういう美味しいネタは、いざっていう時までとっておくんだから」
「いざって何!? もう、小夜ちゃんがこんなキャラだったなんて、今日初めて知ったわよ」
「まあまあ、それが大人になるってことよ。何にしても幸せそうで良かったわ」
雑なまとめ方をされて「ええ〜?」と不満げに返すも、小夜に対して腹が立たないのは、柚希の幸せを心から喜んでくれているのが分かるから。「もう、小夜ちゃんってば!」と呆れたように言いながらも、柚希は小夜の気持ちをありがたく思っていた。
とは言えやはりこういう話をするのはどこか気恥ずかしいもの。緊張でカラカラになった喉を潤すため、三杯目のコーヒーをお代わりした柚希は、いつもは入れない砂糖を二つ放り込むと「今頃はシロもくしゃみ連発だろうな」と呟いてスプーンでかき混ぜる。すると同じくお代わりしたコーヒーにミルクを入れながら、小夜が言った。
「あ、そうだ。その銀時くんだけど、どうして緒方診療所に顔を出さなかったの? ひょっとして柚希ちゃんと付き合うようになったから照れくさかったとか? 緒方先生、口には出してないかも知れないけど、銀時くんの事もずっと心配してたんだよ。今からでも遅くないし、思い切って二人で交際宣言しに行ったら喜ぶと思うけどなぁ」
そしてコクリと一口飲み、どうよ? と言いたげな表情を見せる。
「銀時?」
しかし小夜の問いは、何故か柚希に違和感を覚えさせていた。その理由が何なのか分からぬまま、とりあえず柚希は答える。
「残念ながら今回こちらに来たのは私だけなのよ。銀時は江戸に残って万事屋の仕事をしてるわ」
「そうなの? おっかしいなぁ。じゃああれは誰だったんだろう」
ーーゾクリ。
瞬間、小夜の呟きが寒気となって柚希の全身を覆った。ちらりと腕を見れば、はっきりと目に見えて鳥肌が立っている。
「……何の話……?」
訊きたくない。でも訊かねばならない。先程感じた違和感の原因はここにあると、確信してしまったから。
意を決して訊ねるも、柚希の声は小さく震えていた。