第四章 〜絆〜(連載中)
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「松陽くん亡き後、攘夷戦争も終結したことから、皆散り散りになったってのは知ってるよ。でも悪ガキ三人組はどこかしらで再会してたってのに、アンタとは誰一人顔を合わせることは無かったと聞いてたからね。それがずっと引っかかっていたんだよ」
千代が気にするのは至極当然のことだ。その疑問に、柚希は素直に答えた。
「私は……親父様が死ぬ前からずっと、敵の手に落ちていました」
「それはつまり、天人に捕まってたって事かい?」
「そう……ですね。一時は親父様と同じ場所にもいたのですが、すぐに離れ離れになってしまって。結局親父様の最期の瞬間、傍にいることは叶いませんでした」
朧から話を聞かされた時の、あの絶望が蘇る。柚希の中にある松陽の最後の記憶は、今この時も別れ際の優しい笑顔だ。しかしそれは決して良い思い出などではなく、むしろ柚希の胸を締め付けるばかりだった。
「なんてこと……でもこうして生きてるってことは、戦争が終わると同時に解放されたんだろう?」
「いえ、私があの場所から逃げ出したのはつい最近のことです。命がけで私を逃してくれた人がいてーー」
答えながら思い出すのは、もう一人の父的存在。幼い頃から愛情深く育ててくれた松陽の後を受けるように、自分を見守り逃してくれた玄黒の姿は、未だ脳裏に焼き付いていて離れない。小さく震える手を強く握りしめながら、柚希はこみ上げてくる物を必死に抑え込んだ。
「……よく頑張ったねぇ」
そんな柚希の姿に何を思ったか、徐に立ち上がった千代は柚希の横に立つ。そして柚希の頭をそっと抱き寄せると、優しく髪を撫でて言った。
「話すのが辛ければ、これ以上の詮索はしないよ。でもこうして抱きしめることくらいはさせておくれね」
「おばちゃん……」
ホッとする温かさに包まれ、思わず気が緩む。浮かんだ涙はかろうじて眦に留まっていたが、漏れた吐息は悲しみに染まっていた。
「泣きたい時は泣けば良いんだよ。喜怒哀楽ってのは、人間が生きるのに必要な感情なんだからさ」
「……はい、ありがとうございます」
コクリと頷き、ゆっくりと顔を上げた柚希は、静かな微笑みを見せる。その笑顔は無理やり作られたものだと気付いてはいたが、千代は敢えてその事には触れようとはしなかった。
千代が気にするのは至極当然のことだ。その疑問に、柚希は素直に答えた。
「私は……親父様が死ぬ前からずっと、敵の手に落ちていました」
「それはつまり、天人に捕まってたって事かい?」
「そう……ですね。一時は親父様と同じ場所にもいたのですが、すぐに離れ離れになってしまって。結局親父様の最期の瞬間、傍にいることは叶いませんでした」
朧から話を聞かされた時の、あの絶望が蘇る。柚希の中にある松陽の最後の記憶は、今この時も別れ際の優しい笑顔だ。しかしそれは決して良い思い出などではなく、むしろ柚希の胸を締め付けるばかりだった。
「なんてこと……でもこうして生きてるってことは、戦争が終わると同時に解放されたんだろう?」
「いえ、私があの場所から逃げ出したのはつい最近のことです。命がけで私を逃してくれた人がいてーー」
答えながら思い出すのは、もう一人の父的存在。幼い頃から愛情深く育ててくれた松陽の後を受けるように、自分を見守り逃してくれた玄黒の姿は、未だ脳裏に焼き付いていて離れない。小さく震える手を強く握りしめながら、柚希はこみ上げてくる物を必死に抑え込んだ。
「……よく頑張ったねぇ」
そんな柚希の姿に何を思ったか、徐に立ち上がった千代は柚希の横に立つ。そして柚希の頭をそっと抱き寄せると、優しく髪を撫でて言った。
「話すのが辛ければ、これ以上の詮索はしないよ。でもこうして抱きしめることくらいはさせておくれね」
「おばちゃん……」
ホッとする温かさに包まれ、思わず気が緩む。浮かんだ涙はかろうじて眦に留まっていたが、漏れた吐息は悲しみに染まっていた。
「泣きたい時は泣けば良いんだよ。喜怒哀楽ってのは、人間が生きるのに必要な感情なんだからさ」
「……はい、ありがとうございます」
コクリと頷き、ゆっくりと顔を上げた柚希は、静かな微笑みを見せる。その笑顔は無理やり作られたものだと気付いてはいたが、千代は敢えてその事には触れようとはしなかった。