第一章 ~再会~(49P)
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「源外様……ありがとうございます」
ホッとして泣きそうになりながらも、柚希はもう一度深々と頭を下げた。満面の笑みで「任せろ」と言った源外と目を合わせた銀時がコクリと頷けば、話は決まりだ。
店先だった事も忘れて話に夢中になっていたが、先ほど柚希が構えた時に、咄嗟に放り投げていた薬の袋を拾い上げた銀時が、
「とりあえず今日は一旦帰るぞ。未だ怪我だって治ってねぇし、それなりに準備も必要だろ? 神楽もいい加減しびれを切らしてるだろうしよ」
と言って店を出る。それに続いて柚希と源外も店を出た。
「何かヒントがあるかも知れんから、扇子は預かっとくぞ。ついでに手入れもしといてやる」
別れる間際、そう言って柚希から扇子を受け取った源外の表情は、とても楽しそうで。
「ジジイ、何気に楽しんでやがるな」
「あたぼうよ。この扇子はちょっと見ただけでも面白い作りをしておる。色々と触るのが楽しみじゃ」
イヒヒと嬉しそうに笑う姿は『マッドサイエンティスト』を彷彿とさせ、柚希に小さな不安を抱かせた。さすがの銀時も呆れた顔を見せる。
「嬉しすぎてボケんなよ。目的は果たせよな」
「分かっとるわい。年寄りを舐めんなよ、クソガキが」
「へーへー」
「……では源外様、お願いいたします」
微妙な笑顔で挨拶をした柚希と銀時は、もう少し店を見てから帰ると言う源外を残してその場を立ち去ったのだった。
源外と別れた柚希と銀時は、足早に先ほどの茶店へと向かった。神楽を置いて出てから1時間弱。さすがに暇を持て余している事だろう。
「ごめんね、神楽ちゃん。遅くなっちゃ……って……」
店に駆け込み、窓際の神楽がいる席へと小走りに駆け寄ろうとした柚希だったが、そこに広がる予想外の光景に言葉を失った。
テーブルに山積みになった皿の山。そして先ほど別れた時とは完全に体の形が変わり、雪だるまのようになっている神楽。どちらも柚希の常識からはかけ離れたものだ。
「……幻覚?」
「安心しろ、現実だ。こいつに好き勝手食わせるといつもこうなっちまうんだよ。ったく、底なしの胃袋を小さくするカラクリは存在しねぇのかってんだ」
ツカツカと神楽に歩み寄り、ゲンコツを落とす銀時。どうやらお腹いっぱいになって眠ってしまっていたらしく、目を覚まして「痛ァ!」と叫ぶと、頭をさすってキョロキョロと辺りを見回していた。
やがて柚希の存在に気付き、ゲフッと一つ大きなげっぷを出したかと思えば「やっと戻ってきたアルか。待ちくたびれたネ」と踏ん反り返って言う。しかも口に爪楊枝を咥えているというおまけ付きだ。
「……うん……なんか色々とごめん……」
謝罪の言葉を述べた柚希だったが、神楽の悪びれない態度に、
――これまで会った覚えている限りの地球人や天人の中でも、こんなタイプの子はいなかったなぁ。
と、遠くを見る眼差しの中で思うのだった。
茶店を出た三人は、当初の予定だった食料品を買うべくスーパーへと向かう。
止める者がいなかった事で、茶店のメニューを全制覇していたらしい神楽の胃袋は、流石に落ち着いているようだ。柚希と銀時が買うものを選んでいる後ろを、大人しくついてきていた。
銀時はというと、「スーパーに来てんのに、こんなにも物を強請ることなく大人しい神楽は珍しいんだぜ」と言いながら、いちご牛乳と酢昆布をカゴに放り込んでいく。
「ねぇ、銀時」
「ん? 何だよ」
カートを押しながら銀時を見上げれば、茫洋とした表情で菓子コーナーを見つめていた。
「神楽ちゃんが、お給料をもらってないって言ってたけど……あれって実は食費に回ってて払えないって事?」
茶店での精算時、一体何人分の量を食べたのかと突き詰めたくなる程にあり得ない桁の金額が表示され、店員と一緒に唖然としていたのだ。これが毎日となると、エンゲル係数がとんでもない状態になっている事だろう。
「まーそれもあるな」
苦笑いしながら答える銀時に、同情を禁じ得ない。
ーーここにいる間くらいは、食事に困らない環境をつくってあげるようにしよう。
そう心に誓った柚希はその後、自らが主導の下、三人で持てる限りの食料品を買い込んで万事屋に戻る。部屋の掃除をしながら皆の帰りを待っていた新八は、その買い物の量に驚きつつも喜んで。
「凄い! 冷蔵庫が一杯になっているところを見るなんて、いつぶりだろう!」
という不憫なセリフを吐くのだった。
ホッとして泣きそうになりながらも、柚希はもう一度深々と頭を下げた。満面の笑みで「任せろ」と言った源外と目を合わせた銀時がコクリと頷けば、話は決まりだ。
店先だった事も忘れて話に夢中になっていたが、先ほど柚希が構えた時に、咄嗟に放り投げていた薬の袋を拾い上げた銀時が、
「とりあえず今日は一旦帰るぞ。未だ怪我だって治ってねぇし、それなりに準備も必要だろ? 神楽もいい加減しびれを切らしてるだろうしよ」
と言って店を出る。それに続いて柚希と源外も店を出た。
「何かヒントがあるかも知れんから、扇子は預かっとくぞ。ついでに手入れもしといてやる」
別れる間際、そう言って柚希から扇子を受け取った源外の表情は、とても楽しそうで。
「ジジイ、何気に楽しんでやがるな」
「あたぼうよ。この扇子はちょっと見ただけでも面白い作りをしておる。色々と触るのが楽しみじゃ」
イヒヒと嬉しそうに笑う姿は『マッドサイエンティスト』を彷彿とさせ、柚希に小さな不安を抱かせた。さすがの銀時も呆れた顔を見せる。
「嬉しすぎてボケんなよ。目的は果たせよな」
「分かっとるわい。年寄りを舐めんなよ、クソガキが」
「へーへー」
「……では源外様、お願いいたします」
微妙な笑顔で挨拶をした柚希と銀時は、もう少し店を見てから帰ると言う源外を残してその場を立ち去ったのだった。
源外と別れた柚希と銀時は、足早に先ほどの茶店へと向かった。神楽を置いて出てから1時間弱。さすがに暇を持て余している事だろう。
「ごめんね、神楽ちゃん。遅くなっちゃ……って……」
店に駆け込み、窓際の神楽がいる席へと小走りに駆け寄ろうとした柚希だったが、そこに広がる予想外の光景に言葉を失った。
テーブルに山積みになった皿の山。そして先ほど別れた時とは完全に体の形が変わり、雪だるまのようになっている神楽。どちらも柚希の常識からはかけ離れたものだ。
「……幻覚?」
「安心しろ、現実だ。こいつに好き勝手食わせるといつもこうなっちまうんだよ。ったく、底なしの胃袋を小さくするカラクリは存在しねぇのかってんだ」
ツカツカと神楽に歩み寄り、ゲンコツを落とす銀時。どうやらお腹いっぱいになって眠ってしまっていたらしく、目を覚まして「痛ァ!」と叫ぶと、頭をさすってキョロキョロと辺りを見回していた。
やがて柚希の存在に気付き、ゲフッと一つ大きなげっぷを出したかと思えば「やっと戻ってきたアルか。待ちくたびれたネ」と踏ん反り返って言う。しかも口に爪楊枝を咥えているというおまけ付きだ。
「……うん……なんか色々とごめん……」
謝罪の言葉を述べた柚希だったが、神楽の悪びれない態度に、
――これまで会った覚えている限りの地球人や天人の中でも、こんなタイプの子はいなかったなぁ。
と、遠くを見る眼差しの中で思うのだった。
茶店を出た三人は、当初の予定だった食料品を買うべくスーパーへと向かう。
止める者がいなかった事で、茶店のメニューを全制覇していたらしい神楽の胃袋は、流石に落ち着いているようだ。柚希と銀時が買うものを選んでいる後ろを、大人しくついてきていた。
銀時はというと、「スーパーに来てんのに、こんなにも物を強請ることなく大人しい神楽は珍しいんだぜ」と言いながら、いちご牛乳と酢昆布をカゴに放り込んでいく。
「ねぇ、銀時」
「ん? 何だよ」
カートを押しながら銀時を見上げれば、茫洋とした表情で菓子コーナーを見つめていた。
「神楽ちゃんが、お給料をもらってないって言ってたけど……あれって実は食費に回ってて払えないって事?」
茶店での精算時、一体何人分の量を食べたのかと突き詰めたくなる程にあり得ない桁の金額が表示され、店員と一緒に唖然としていたのだ。これが毎日となると、エンゲル係数がとんでもない状態になっている事だろう。
「まーそれもあるな」
苦笑いしながら答える銀時に、同情を禁じ得ない。
ーーここにいる間くらいは、食事に困らない環境をつくってあげるようにしよう。
そう心に誓った柚希はその後、自らが主導の下、三人で持てる限りの食料品を買い込んで万事屋に戻る。部屋の掃除をしながら皆の帰りを待っていた新八は、その買い物の量に驚きつつも喜んで。
「凄い! 冷蔵庫が一杯になっているところを見るなんて、いつぶりだろう!」
という不憫なセリフを吐くのだった。