第四章 〜絆〜(連載中)
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その頃、柚希はと言うと。
「見えてきた……!」
明るい笑顔を見せながら、小走りに万屋へと向かう。
診療所からここまでは、思っていた以上に景観が変わっていた。だが遠目からでもこの万屋は、昔と変わらぬ姿を保っているのが分かり、柚希の心は弾んでいた。
「ごめんくださーい」
「はーい」
早速店内に声をかければ、奥から出て来たのは恰幅の良い女。記憶の中の姿よりも白髪が増えてはいるが、それはまさしく畑中の双子の姉、千代だった。
「ご無沙汰してます、柚希です。あの……覚えておられますか?」
「柚希……?」
突然の自己紹介に、訝しげな顔を見せる千代。だがすぐにハッとした表情を見せると、柚希の側へツカツカと歩み寄って来た。
「無事だったんだね、柚希ちゃん……!」
「ちょ……っ! 待っておばちゃん、苦しいから!」
「すっかり大人になっちゃってまあ。息災だったかい?」
ジタバタする柚希に強く抱きつくと、千代は柚希の顔を下から見上げて言う。最後に会った時は、未だ千代の方が高かった目線。それが今や逆転していた事に時の流れを感じつつ、柚希は笑顔で答えた。
「はい。お陰様で元気にやっています」
「それは良かった。ずっと心配してたんだよ。少し前に桂くんに会った時は、銀時くんの話しか聞けなかったからねぇ」
ポンポンと柚希の背中を叩きながら、千代も同じく笑顔を見せる。
「こうして顔を見せに来てくれて安心したよ。今日は時間があるんだろう? すぐにお茶を用意するから、アイツの所で待っていておくれね」
久しぶりに顔を合わせたばかりだと言うのに、柚希がここに来た目的を察していたようだ。千代は最後に柚希の頭を優しく撫でると、万屋の裏手に行くよう促した。それは同時に、畑中がそこに居る事の証。
「ありがとうございます」
千代の言葉にペコリと頭を下げた柚希は、早速裏の離れへと向かった。
最後に訪れてから十年以上経っているこの場所は、緒方診療所と同じく佇まいは変わらない。だが単なる経年劣化とは思えない傷の数々に、柚希は首を傾げながら戸を開けた。
「ご無沙汰してます、柚希で……っ!」
挨拶もそこそこに後ろへと飛んだ柚希は、咄嗟に懐から出した扇子を振るう。正面からの複数の飛来物を叩き落としながらも、その中の一つを絡め取ると手元に引き寄せた。
「この玉、見たことの無い物質で出来てるようね」
「ご明察。そいつは天人が持ち込んだ、本来地球には存在しない鉱物から出来てる。今手に入る武器の材料の中では、最も硬い代物だ」
間近に聞こえた声は、老いを感じるも懐かしいもの。
「よぉ、生きてたか嬢ちゃん」
ニッと笑って目の前に立つ畑中に、柚希は呆れ顔で言った。
「お陰様で。たった今三途の川を渡りかけましたけど」
「あっはっは。冗談が上手くなったなぁ」
「これが冗談のはずないでしょ! 相変わらず手加減ってものを知らないんだから」
「まったくもう」と怒りながらも、絡め取った玉を手の平に乗せた柚希は、畑中にそれを返しながら言った。
「万屋と同じ頃に建てられたって聞いてたこの離れが、やけにボロボロになってる理由が分かりましたよ。こんなのを屋内で試してたんですか?」
「……年々俺の存在は忘れられていってるとは言え、小太郎のやつが全国で派手に攘夷活動してるからな。表立って目立つ事はできねぇんだよ」
「桂くんって、そんなに影響力があったんだ」
「まぁアイツの活動には、俺も少しは加担してるしよ。小太郎に頼まれて作った爆弾のからくりなんて、会心の出来だったんだぞ」
「うん、おじさんはここに幽閉されておくべき存在だね。っていうか、絶対世の中に存在を刻み込んでるよね。テロリストとして」
畑中の話を聞き、ますます呆れた顔を見せる柚希。だが、未だ自分がここに通い詰めていた頃と変わらぬ畑中に、ホッとしてもいた。
「見えてきた……!」
明るい笑顔を見せながら、小走りに万屋へと向かう。
診療所からここまでは、思っていた以上に景観が変わっていた。だが遠目からでもこの万屋は、昔と変わらぬ姿を保っているのが分かり、柚希の心は弾んでいた。
「ごめんくださーい」
「はーい」
早速店内に声をかければ、奥から出て来たのは恰幅の良い女。記憶の中の姿よりも白髪が増えてはいるが、それはまさしく畑中の双子の姉、千代だった。
「ご無沙汰してます、柚希です。あの……覚えておられますか?」
「柚希……?」
突然の自己紹介に、訝しげな顔を見せる千代。だがすぐにハッとした表情を見せると、柚希の側へツカツカと歩み寄って来た。
「無事だったんだね、柚希ちゃん……!」
「ちょ……っ! 待っておばちゃん、苦しいから!」
「すっかり大人になっちゃってまあ。息災だったかい?」
ジタバタする柚希に強く抱きつくと、千代は柚希の顔を下から見上げて言う。最後に会った時は、未だ千代の方が高かった目線。それが今や逆転していた事に時の流れを感じつつ、柚希は笑顔で答えた。
「はい。お陰様で元気にやっています」
「それは良かった。ずっと心配してたんだよ。少し前に桂くんに会った時は、銀時くんの話しか聞けなかったからねぇ」
ポンポンと柚希の背中を叩きながら、千代も同じく笑顔を見せる。
「こうして顔を見せに来てくれて安心したよ。今日は時間があるんだろう? すぐにお茶を用意するから、アイツの所で待っていておくれね」
久しぶりに顔を合わせたばかりだと言うのに、柚希がここに来た目的を察していたようだ。千代は最後に柚希の頭を優しく撫でると、万屋の裏手に行くよう促した。それは同時に、畑中がそこに居る事の証。
「ありがとうございます」
千代の言葉にペコリと頭を下げた柚希は、早速裏の離れへと向かった。
最後に訪れてから十年以上経っているこの場所は、緒方診療所と同じく佇まいは変わらない。だが単なる経年劣化とは思えない傷の数々に、柚希は首を傾げながら戸を開けた。
「ご無沙汰してます、柚希で……っ!」
挨拶もそこそこに後ろへと飛んだ柚希は、咄嗟に懐から出した扇子を振るう。正面からの複数の飛来物を叩き落としながらも、その中の一つを絡め取ると手元に引き寄せた。
「この玉、見たことの無い物質で出来てるようね」
「ご明察。そいつは天人が持ち込んだ、本来地球には存在しない鉱物から出来てる。今手に入る武器の材料の中では、最も硬い代物だ」
間近に聞こえた声は、老いを感じるも懐かしいもの。
「よぉ、生きてたか嬢ちゃん」
ニッと笑って目の前に立つ畑中に、柚希は呆れ顔で言った。
「お陰様で。たった今三途の川を渡りかけましたけど」
「あっはっは。冗談が上手くなったなぁ」
「これが冗談のはずないでしょ! 相変わらず手加減ってものを知らないんだから」
「まったくもう」と怒りながらも、絡め取った玉を手の平に乗せた柚希は、畑中にそれを返しながら言った。
「万屋と同じ頃に建てられたって聞いてたこの離れが、やけにボロボロになってる理由が分かりましたよ。こんなのを屋内で試してたんですか?」
「……年々俺の存在は忘れられていってるとは言え、小太郎のやつが全国で派手に攘夷活動してるからな。表立って目立つ事はできねぇんだよ」
「桂くんって、そんなに影響力があったんだ」
「まぁアイツの活動には、俺も少しは加担してるしよ。小太郎に頼まれて作った爆弾のからくりなんて、会心の出来だったんだぞ」
「うん、おじさんはここに幽閉されておくべき存在だね。っていうか、絶対世の中に存在を刻み込んでるよね。テロリストとして」
畑中の話を聞き、ますます呆れた顔を見せる柚希。だが、未だ自分がここに通い詰めていた頃と変わらぬ畑中に、ホッとしてもいた。