第四章 〜絆〜(連載中)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ところで、今日はどういう経緯でここに来てくれたんだい? 以前桂くんが寄ってくれた時、銀時くんの話だけは聞いていたんだけどね。柚希ちゃんと高杉くんの所在は分からなかったから、ずっと気になってたんだよ」
「ご心配をおかけしてすみません。銀時は今は江戸にいます。高杉くんは、私もまだ会えてなくて、今回こちらに来たのは桂くんと……あれ? そう言えば桂くんはどうしたんだろう」
緒方との再会で、すっぽりと抜け落ちていた桂の存在を思い出し、廊下を覗く。すると――。
「桂くんっ!」
待合室の隅でうずくまる桂の姿があった。
慌てて駆け寄ると、傷口から出血が始まったのか、着物には赤いシミが広がっている。
「無理が祟ったのね。あの傷でこんな旅をするなんて、やっぱり無茶だったのよ」
旅の途中に包帯を取り換えた時は、傷口が塞がっていたのに。ここにきてまた開いてしまったという事か。
このままではいけないと、柚希は治療の道具を借りる為に診察室に走る。ところが中に入る事は叶わない。
「桂くんは僕が診よう」
診察室の入り口に立ち、訳知り顔で頷いた緒方の後ろには、いつの間にかエリザベスが立っていた。
【桂さんは暫く緒方先生にお願いする】
「え? でも彼は私が……」
「ここは僕の病院だよ。それとも僕では力不足かい?」
「そんな事!」
柚希が慌てて首を横に振ると、緒方は明るい顔で言う。
「ならば僕が診て問題ないね。彼を治療している間に、柚希ちゃんは自分の用事を済ませておけば良い」
「用事?」
突然の提案の意味が分からず首を傾げた柚希に、答えを教えたのはエリザベスだった。
【畑中さんの所へ行くのだろう?】
その言葉にハッとした柚希は、思わず懐の扇子に触れる。
「彼も待っているよ、柚希ちゃんの事。君たちが戦場に出た後も、カラクリの腕を磨いていたからね。君の姿を見たら、僕以上に喜ぶだろう」
「でも治療するなら、助手がいた方が……」
「それならエリザベスくんがいるから大丈夫。彼自身、応急処置の方法を覚えたいんだそうだ。それに柚希ちゃんが初期治療をしたんだし、この後安静にさえしてくれれば、僕一人でも十分対応できるだろう?」
そう言った緒方は、桂を診察室へと運ぶようエリザベスに指示をした。コクリと頷いたエリザベスは、軽々と桂を抱き上げる。
「その代わり、畑中さんの所で用事を済ませたら、必ずここに戻って来ること。離れていた間の事を、色々聞かせてもらわなきゃいけないからね」
エリザベスが桂をベッドに寝かせたのを確認すると、緒方は柚希の頭をポンと軽く叩いて言った。
「ついでと言っては何だけど、久しぶりに柚希ちゃんの作ったご飯が食べたいなぁ。万屋近くにスーパーが出来てるから宜しく頼むよ」
「もう、ちゃっかりしてるんだから」
「そんなのは今更だろう? さぁ、行っておいで」
「……はい!」
緒方の優しい笑顔に安心したのか、柚希は力強く頷く。そしてリュックに入れていた全ての扇子を懐に入れると、「行ってきます!」と言って病院を駆け出し、畑中の所へと向かった。
そんな柚希の後ろ姿を見送りながら、緒方が言う。
「いくつになってもあの子は変わらないなぁ。素直で優しくて仲間思いで。本当にいい子だ」
柚希の姿が見えなくなり、診察室の方を振り向いた緒方の顔は、今までになく硬い顔をしていた。
「ご心配をおかけしてすみません。銀時は今は江戸にいます。高杉くんは、私もまだ会えてなくて、今回こちらに来たのは桂くんと……あれ? そう言えば桂くんはどうしたんだろう」
緒方との再会で、すっぽりと抜け落ちていた桂の存在を思い出し、廊下を覗く。すると――。
「桂くんっ!」
待合室の隅でうずくまる桂の姿があった。
慌てて駆け寄ると、傷口から出血が始まったのか、着物には赤いシミが広がっている。
「無理が祟ったのね。あの傷でこんな旅をするなんて、やっぱり無茶だったのよ」
旅の途中に包帯を取り換えた時は、傷口が塞がっていたのに。ここにきてまた開いてしまったという事か。
このままではいけないと、柚希は治療の道具を借りる為に診察室に走る。ところが中に入る事は叶わない。
「桂くんは僕が診よう」
診察室の入り口に立ち、訳知り顔で頷いた緒方の後ろには、いつの間にかエリザベスが立っていた。
【桂さんは暫く緒方先生にお願いする】
「え? でも彼は私が……」
「ここは僕の病院だよ。それとも僕では力不足かい?」
「そんな事!」
柚希が慌てて首を横に振ると、緒方は明るい顔で言う。
「ならば僕が診て問題ないね。彼を治療している間に、柚希ちゃんは自分の用事を済ませておけば良い」
「用事?」
突然の提案の意味が分からず首を傾げた柚希に、答えを教えたのはエリザベスだった。
【畑中さんの所へ行くのだろう?】
その言葉にハッとした柚希は、思わず懐の扇子に触れる。
「彼も待っているよ、柚希ちゃんの事。君たちが戦場に出た後も、カラクリの腕を磨いていたからね。君の姿を見たら、僕以上に喜ぶだろう」
「でも治療するなら、助手がいた方が……」
「それならエリザベスくんがいるから大丈夫。彼自身、応急処置の方法を覚えたいんだそうだ。それに柚希ちゃんが初期治療をしたんだし、この後安静にさえしてくれれば、僕一人でも十分対応できるだろう?」
そう言った緒方は、桂を診察室へと運ぶようエリザベスに指示をした。コクリと頷いたエリザベスは、軽々と桂を抱き上げる。
「その代わり、畑中さんの所で用事を済ませたら、必ずここに戻って来ること。離れていた間の事を、色々聞かせてもらわなきゃいけないからね」
エリザベスが桂をベッドに寝かせたのを確認すると、緒方は柚希の頭をポンと軽く叩いて言った。
「ついでと言っては何だけど、久しぶりに柚希ちゃんの作ったご飯が食べたいなぁ。万屋近くにスーパーが出来てるから宜しく頼むよ」
「もう、ちゃっかりしてるんだから」
「そんなのは今更だろう? さぁ、行っておいで」
「……はい!」
緒方の優しい笑顔に安心したのか、柚希は力強く頷く。そしてリュックに入れていた全ての扇子を懐に入れると、「行ってきます!」と言って病院を駆け出し、畑中の所へと向かった。
そんな柚希の後ろ姿を見送りながら、緒方が言う。
「いくつになってもあの子は変わらないなぁ。素直で優しくて仲間思いで。本当にいい子だ」
柚希の姿が見えなくなり、診察室の方を振り向いた緒方の顔は、今までになく硬い顔をしていた。