第四章 〜絆〜(連載中)
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翌朝。柚希が万事屋に電話を入れると、電話口に出たのは新八だった。
「はい、万事屋です」
「あ、新八君? おはよう。朝早くからごめんね。銀時はいるかな?」
電話の相手が柚希と分かり、頬を緩めて口角を上げながら「ああ、柚希さん、おはようございます。銀さんなら……」と言いかけた新八は次の瞬間、背中を突き刺すような鋭い怒気を感じて言葉を変えた。
「銀さんは……夕べから帰ってないみたいですよ。柚希さんを迎えに行って、そのまま帰って来てないんじゃないかな」
「え~? 確かに一度こちらに来たんだけど、急用が出来たってすぐに病院を出て行っちゃったのよ」
「まあ銀さんの事ですから、どうせまたその辺の店で酔いつぶれてるんじゃないですか? よくある事ですから、放っておきましょう」
新八は軽く言うが、夕べ銀時が帰ってしまった後の桂の態度がどうも引っかかっていて、柚希は素直に納得できないようだ。
「そう……なのかな」
心配そうに言う柚希に、新八は努めて明るく言った。
「きっとそうですよ。でもその分ツケも溜まっているので、今度柚希さんから注意しておいて下さいね。あの人僕の言う事なんて聞きゃしないんだから」
「新八くんってば、若いのに苦労してるなぁ。ちょっと不憫……」
「不憫と思うなら、柚希さんがしっかり手綱を握ってて下さいよッ! それより何かありました? 柚希さんも夕べは帰って来てないんですよね?」
「ああ、ごめんね、実は……」
「出来る事なら銀時に直接言っておきたかったんだけど」と前置きした柚希は、急遽桂と墓参りに行く事になった事を新八に説明する。病院の引継ぎで帰れない為、旅の荷物を届けて欲しい旨を告げた柚希が電話を切ると、ゆっくりと振り向きながら新八は言った。
「……これで良かったんですか? 銀さん」
「あァ」
新八の視線の先には、珍しく真剣な顔をして社長椅子に座っている銀時がいる。普段柚希からの電話が入れば横取りする銀時が、今回は全く動こうとはしないどころか、一瞬恐ろしい怒気を発した事に、新八は漠然とした胸騒ぎを感じていた。
「何がどうなっているのかは分かりませんが、暫くの間、柚希さんとは会えなくなるんですよ。ちゃんと話をしておかなくて良いんですか?」
「うるせェよ。墓参りに行くってんだから、好きに行かせておきゃ良いだろ」
イライラを隠せない銀時に、新八が戸惑いながら言う。
「何だか銀さんらしくありませんね。いつもはちょっと柚希さんの姿が見えないだけでアタフタしてるのに、そんな態度をとるなんて……さっき言ってた将軍様の話とは別ですか?」
将軍様の話とは、今朝がた銀時がコンビニで耳にした『将軍暗殺計画』の事だ。それを阻止すべく、全蔵の遠回しな依頼を理由に城へ向かおうと、丁度柚希からの電話が来る直前まで話をしていた。
「全く別の話だし、柚希の件はお前には関係ねェよ」
新八の疑問を冷たく一蹴する銀時が、胸の内に何か大きな問題を抱えている事は明白だ。やれやれとため息を吐いた新八は、呆れたように言った。
「面倒くさい人ですねェ。関係無いなら僕を巻き込まないで下さいよ。じゃあ柚希さんの荷物は、銀さんが準備して病院に持って行って下さいね」
「な……ッ、引き受けたのは新八だろうが。お前が行けよ」
「たった今アンタが、僕には関係ないって言ったとこじゃないですか」
「それとこれとは話が別だ」
「どこが別なんだよッ! 勝手な事ばっか……」
銀時の言葉は、いくらなんでも理不尽だ。さすがに納得がいかず抗議しようとした新八だったが、ふとある事に気付く。そして意味ありげに銀時を見ると、ニヤリと口角を上げながら柚希の荷物を置いた部屋へと歩き始めた。
「おい、新八?」
ニヤリ笑いが気になって訝し気に声をかける銀時に、新八は言う。
「分かりました。銀さんの言う通り、僕が準備しますよ。えーっと柚希さんの下着、どこにありましたっけ」
「下着ィッ!?」
思いもよらぬ単語が出てきて焦る銀時。だが新八はしれっと言葉を続けた。
「当たり前でしょう。女性なんだから余計に着替えは入れておかなきゃ。だから柚希さんとお付き合いしてる銀さんに頼んだ方が良いかと思ったんですけど……銀さんが嫌なら仕方ないですよねェ。神楽ちゃんに頼めれば良かったんですけど、今は定春の散歩中ですし、不本意ながら僕が下着を入れて持って行かなきゃ」
そう言いながら新八が押し入れを開け、柚希の収納ケースに手を伸ばすと――。
「下着下着って、んな度胸もねー癖に煽ってんじゃねェよ」
新八の肩を掴んで止めたのは、紛れもなく銀時の手。ゆっくりと振り向いた新八の顔は、赤く染まっていた。
「想像しただけで震えがくるほど真っ赤になってるドーテーくんが、ナイスバディな柚希ちゃんの下着なんざ見ちまったら卒倒すんぞ」
「バ、バカにしないで下さいよ。僕だって下着くらい、姉上ので見慣れてますからね!」
「バァカ。女モンの下着なんて、お前の家には置いてねェだろ」
「姉上を侮辱すんなァァッ!」
怒鳴りながら立ち上がった新八は、さり気なく衣装ケース前のスペースを銀時に譲ると後ろを向いた。
「ったく、面倒くせェな……」
ブツブツと言いながらも素直にその場に座った銀時は、衣装ケースを開く。必要だと思われる衣類を適当に選んで鞄に詰めていると、新八が言った。
「銀さんは、柚希さんに荷物を渡したその足でお城に向かって下さい。僕は神楽ちゃんが散歩から戻り次第一度家に戻って、お城に行く事を姉上に報告してから向かいますから」
「……あァ」
「暫く会えなくなるんですから、ちゃんと話をしてきて下さいね」
「余計なお世話だっつーの。オラ、お前もあっち行って出かける準備しとけ」
手をひらひらと動かして新八を追い出そうとする銀時に、「分かりましたよ」と答えた新八は、素直に部屋を出て行く。パタリと戸が閉められて部屋が静かになると、銀時は一つため息を漏らした。
「ガキの癖に気ィ使ってばかりだな、アイツは」
「はい、万事屋です」
「あ、新八君? おはよう。朝早くからごめんね。銀時はいるかな?」
電話の相手が柚希と分かり、頬を緩めて口角を上げながら「ああ、柚希さん、おはようございます。銀さんなら……」と言いかけた新八は次の瞬間、背中を突き刺すような鋭い怒気を感じて言葉を変えた。
「銀さんは……夕べから帰ってないみたいですよ。柚希さんを迎えに行って、そのまま帰って来てないんじゃないかな」
「え~? 確かに一度こちらに来たんだけど、急用が出来たってすぐに病院を出て行っちゃったのよ」
「まあ銀さんの事ですから、どうせまたその辺の店で酔いつぶれてるんじゃないですか? よくある事ですから、放っておきましょう」
新八は軽く言うが、夕べ銀時が帰ってしまった後の桂の態度がどうも引っかかっていて、柚希は素直に納得できないようだ。
「そう……なのかな」
心配そうに言う柚希に、新八は努めて明るく言った。
「きっとそうですよ。でもその分ツケも溜まっているので、今度柚希さんから注意しておいて下さいね。あの人僕の言う事なんて聞きゃしないんだから」
「新八くんってば、若いのに苦労してるなぁ。ちょっと不憫……」
「不憫と思うなら、柚希さんがしっかり手綱を握ってて下さいよッ! それより何かありました? 柚希さんも夕べは帰って来てないんですよね?」
「ああ、ごめんね、実は……」
「出来る事なら銀時に直接言っておきたかったんだけど」と前置きした柚希は、急遽桂と墓参りに行く事になった事を新八に説明する。病院の引継ぎで帰れない為、旅の荷物を届けて欲しい旨を告げた柚希が電話を切ると、ゆっくりと振り向きながら新八は言った。
「……これで良かったんですか? 銀さん」
「あァ」
新八の視線の先には、珍しく真剣な顔をして社長椅子に座っている銀時がいる。普段柚希からの電話が入れば横取りする銀時が、今回は全く動こうとはしないどころか、一瞬恐ろしい怒気を発した事に、新八は漠然とした胸騒ぎを感じていた。
「何がどうなっているのかは分かりませんが、暫くの間、柚希さんとは会えなくなるんですよ。ちゃんと話をしておかなくて良いんですか?」
「うるせェよ。墓参りに行くってんだから、好きに行かせておきゃ良いだろ」
イライラを隠せない銀時に、新八が戸惑いながら言う。
「何だか銀さんらしくありませんね。いつもはちょっと柚希さんの姿が見えないだけでアタフタしてるのに、そんな態度をとるなんて……さっき言ってた将軍様の話とは別ですか?」
将軍様の話とは、今朝がた銀時がコンビニで耳にした『将軍暗殺計画』の事だ。それを阻止すべく、全蔵の遠回しな依頼を理由に城へ向かおうと、丁度柚希からの電話が来る直前まで話をしていた。
「全く別の話だし、柚希の件はお前には関係ねェよ」
新八の疑問を冷たく一蹴する銀時が、胸の内に何か大きな問題を抱えている事は明白だ。やれやれとため息を吐いた新八は、呆れたように言った。
「面倒くさい人ですねェ。関係無いなら僕を巻き込まないで下さいよ。じゃあ柚希さんの荷物は、銀さんが準備して病院に持って行って下さいね」
「な……ッ、引き受けたのは新八だろうが。お前が行けよ」
「たった今アンタが、僕には関係ないって言ったとこじゃないですか」
「それとこれとは話が別だ」
「どこが別なんだよッ! 勝手な事ばっか……」
銀時の言葉は、いくらなんでも理不尽だ。さすがに納得がいかず抗議しようとした新八だったが、ふとある事に気付く。そして意味ありげに銀時を見ると、ニヤリと口角を上げながら柚希の荷物を置いた部屋へと歩き始めた。
「おい、新八?」
ニヤリ笑いが気になって訝し気に声をかける銀時に、新八は言う。
「分かりました。銀さんの言う通り、僕が準備しますよ。えーっと柚希さんの下着、どこにありましたっけ」
「下着ィッ!?」
思いもよらぬ単語が出てきて焦る銀時。だが新八はしれっと言葉を続けた。
「当たり前でしょう。女性なんだから余計に着替えは入れておかなきゃ。だから柚希さんとお付き合いしてる銀さんに頼んだ方が良いかと思ったんですけど……銀さんが嫌なら仕方ないですよねェ。神楽ちゃんに頼めれば良かったんですけど、今は定春の散歩中ですし、不本意ながら僕が下着を入れて持って行かなきゃ」
そう言いながら新八が押し入れを開け、柚希の収納ケースに手を伸ばすと――。
「下着下着って、んな度胸もねー癖に煽ってんじゃねェよ」
新八の肩を掴んで止めたのは、紛れもなく銀時の手。ゆっくりと振り向いた新八の顔は、赤く染まっていた。
「想像しただけで震えがくるほど真っ赤になってるドーテーくんが、ナイスバディな柚希ちゃんの下着なんざ見ちまったら卒倒すんぞ」
「バ、バカにしないで下さいよ。僕だって下着くらい、姉上ので見慣れてますからね!」
「バァカ。女モンの下着なんて、お前の家には置いてねェだろ」
「姉上を侮辱すんなァァッ!」
怒鳴りながら立ち上がった新八は、さり気なく衣装ケース前のスペースを銀時に譲ると後ろを向いた。
「ったく、面倒くせェな……」
ブツブツと言いながらも素直にその場に座った銀時は、衣装ケースを開く。必要だと思われる衣類を適当に選んで鞄に詰めていると、新八が言った。
「銀さんは、柚希さんに荷物を渡したその足でお城に向かって下さい。僕は神楽ちゃんが散歩から戻り次第一度家に戻って、お城に行く事を姉上に報告してから向かいますから」
「……あァ」
「暫く会えなくなるんですから、ちゃんと話をしてきて下さいね」
「余計なお世話だっつーの。オラ、お前もあっち行って出かける準備しとけ」
手をひらひらと動かして新八を追い出そうとする銀時に、「分かりましたよ」と答えた新八は、素直に部屋を出て行く。パタリと戸が閉められて部屋が静かになると、銀時は一つため息を漏らした。
「ガキの癖に気ィ使ってばかりだな、アイツは」