第四章 〜絆〜(連載中)
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「……そう、か。いや〜、銀さんってば相当恨まれちゃってるみたいねェ。まァ白夜叉様としてあれだけ大活躍してたから、俺を恨んでる輩なんて数え切れないほどいるだろうし……」
「隠すな、銀時」
自分が全てを悟った事を気取られぬよう、咄嗟に茶化そうとする銀時。だが桂にそれは通用しなかった。
「これが先生がらみだという事は俺にも容易に想像はつく。そして其奴らにとって俺たちは邪魔な存在であり、柚希は必要な存在である事は間違いないだろう」
そう桂に言われ、苦々し気な表情を浮かべた銀時だったが、すぐに誤魔化すのを諦めたように言う。
「先生を殺し、俺たちを排除し、でも姫夜叉はお持ち帰りしたいって、結局奴らは何がしたいんだ?」
「俺にもその真意は分からぬよ。だが、俺を襲った八咫烏の男が言っていた。『姫夜叉は朧様の女だ』と」
「な……ッ!?」
想像もしていなかった桂の言葉が、銀時を硬直させた。
「『あの女はお前たち攘夷志士を裏切り、白夜叉を捨て、松陽を忘れたのだ。そして身も心も全て朧様に捧げている』と」
続けて言われた桂の言葉で、銀時の頭の中は真っ白になる。
「『どんなに昔の仲間が手を差し伸べようとも、最後に姫夜叉が手を取り、深く受け入れるのは朧様だけであろう』とも言っていた。あまりの言い分だったが、さすがにこれは俺たちを挑発す……おい、落ち着け銀時!」
桂の声はもう届いていない。銀時から吹き出す殺気はこの部屋どころか院内全てを飲み込むほどに強く大きなものだった。
「銀時ッ!」
慌てて叫ぶ桂に耳を貸す事も無く、銀時は殺気を纏い続ける。そんな状態になれば、いやでも柚希が異変に気付くわけで。
「何があったの!?」
未だ湯を沸かしている最中だった柚希が病室に駆け戻ってくると、既にそこには銀時の姿は無かった。
「あれ? シロは?」
キョロキョロと部屋を見回す柚希に、桂が答える。
「あ〜、その……何やら急用が出来たそうだ」
柚希が部屋に入ってくる直前、銀時は殺気と共に気配までも消し去り窓から飛び出ていた。もちろんあの直後に会話のやり取りなどあったはずもなく、桂は咄嗟に嘘をつく。
「仕事で暫く戻れぬから、その間俺と共に松陽先生の墓参りにでも行って来いと伝言を預かったぞ」
「……はい?」
さすがの柚希もこの話の流れにはついていけず、ポカンとした表情で桂を見た。
「ちょっと待って。物凄い殺気を感じて戻ってきたのに、どうしてそういう流れになるのよ」
「どうもこうも、銀時に頼まれたのだ。それに俺としても、お主を緒方先生や畑中殿に会わせたいのでな。お主に会えたら必ず連れ帰ると約束してしておるのだ。よって明日の朝出発するぞ」
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。そりゃあ私も先生たちには会いたいけど、いくらなんでも急すぎるでしょ。せめて桂くんの怪我が治ってから……」
「明日、だ」
言葉を遮り、柚希を睨みつけるようにしながら強い口調で桂が言う。それは決して有無を言わせぬ圧があり、さすがの柚希も異論を唱える事が出来なかった。
「桂……くん?」
攘夷戦争の時ですら、数える程しか目にする事のなかった強硬な姿に、柚希は小さく恐怖心を覚える。だがそれを察した桂はすぐにその表情を和らげると言った。
「すまぬ。お主を怖がらせるつもりはなかった。改めて頼もう。明日の朝、俺と共に松陽先生の墓参りに行ってくれ。この体では一人だと心許ないのでな。主治医が側に居てくれれば、これほど安心な事はなかろう」
「道中はたらふく蕎麦を食わせてやるぞ」と言った桂はもう、いつもと変わらない。その落差に戸惑いを覚えたが、そこに何か理由がある事だけは明白だからと、柚希は諦めたように首を縦に振った。
「分かったよ。でもせめてお昼にしてくれる? 患者さんの引き継ぎや、旅の準備もしなきゃ」
「承知した」
柚希の返事に安心し、頷く桂。だがその反面柚希の胸中では、言葉にできない大きな不安が渦巻いていたのだった。
「隠すな、銀時」
自分が全てを悟った事を気取られぬよう、咄嗟に茶化そうとする銀時。だが桂にそれは通用しなかった。
「これが先生がらみだという事は俺にも容易に想像はつく。そして其奴らにとって俺たちは邪魔な存在であり、柚希は必要な存在である事は間違いないだろう」
そう桂に言われ、苦々し気な表情を浮かべた銀時だったが、すぐに誤魔化すのを諦めたように言う。
「先生を殺し、俺たちを排除し、でも姫夜叉はお持ち帰りしたいって、結局奴らは何がしたいんだ?」
「俺にもその真意は分からぬよ。だが、俺を襲った八咫烏の男が言っていた。『姫夜叉は朧様の女だ』と」
「な……ッ!?」
想像もしていなかった桂の言葉が、銀時を硬直させた。
「『あの女はお前たち攘夷志士を裏切り、白夜叉を捨て、松陽を忘れたのだ。そして身も心も全て朧様に捧げている』と」
続けて言われた桂の言葉で、銀時の頭の中は真っ白になる。
「『どんなに昔の仲間が手を差し伸べようとも、最後に姫夜叉が手を取り、深く受け入れるのは朧様だけであろう』とも言っていた。あまりの言い分だったが、さすがにこれは俺たちを挑発す……おい、落ち着け銀時!」
桂の声はもう届いていない。銀時から吹き出す殺気はこの部屋どころか院内全てを飲み込むほどに強く大きなものだった。
「銀時ッ!」
慌てて叫ぶ桂に耳を貸す事も無く、銀時は殺気を纏い続ける。そんな状態になれば、いやでも柚希が異変に気付くわけで。
「何があったの!?」
未だ湯を沸かしている最中だった柚希が病室に駆け戻ってくると、既にそこには銀時の姿は無かった。
「あれ? シロは?」
キョロキョロと部屋を見回す柚希に、桂が答える。
「あ〜、その……何やら急用が出来たそうだ」
柚希が部屋に入ってくる直前、銀時は殺気と共に気配までも消し去り窓から飛び出ていた。もちろんあの直後に会話のやり取りなどあったはずもなく、桂は咄嗟に嘘をつく。
「仕事で暫く戻れぬから、その間俺と共に松陽先生の墓参りにでも行って来いと伝言を預かったぞ」
「……はい?」
さすがの柚希もこの話の流れにはついていけず、ポカンとした表情で桂を見た。
「ちょっと待って。物凄い殺気を感じて戻ってきたのに、どうしてそういう流れになるのよ」
「どうもこうも、銀時に頼まれたのだ。それに俺としても、お主を緒方先生や畑中殿に会わせたいのでな。お主に会えたら必ず連れ帰ると約束してしておるのだ。よって明日の朝出発するぞ」
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。そりゃあ私も先生たちには会いたいけど、いくらなんでも急すぎるでしょ。せめて桂くんの怪我が治ってから……」
「明日、だ」
言葉を遮り、柚希を睨みつけるようにしながら強い口調で桂が言う。それは決して有無を言わせぬ圧があり、さすがの柚希も異論を唱える事が出来なかった。
「桂……くん?」
攘夷戦争の時ですら、数える程しか目にする事のなかった強硬な姿に、柚希は小さく恐怖心を覚える。だがそれを察した桂はすぐにその表情を和らげると言った。
「すまぬ。お主を怖がらせるつもりはなかった。改めて頼もう。明日の朝、俺と共に松陽先生の墓参りに行ってくれ。この体では一人だと心許ないのでな。主治医が側に居てくれれば、これほど安心な事はなかろう」
「道中はたらふく蕎麦を食わせてやるぞ」と言った桂はもう、いつもと変わらない。その落差に戸惑いを覚えたが、そこに何か理由がある事だけは明白だからと、柚希は諦めたように首を縦に振った。
「分かったよ。でもせめてお昼にしてくれる? 患者さんの引き継ぎや、旅の準備もしなきゃ」
「承知した」
柚希の返事に安心し、頷く桂。だがその反面柚希の胸中では、言葉にできない大きな不安が渦巻いていたのだった。