第四章 〜絆〜(連載中)
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柚希の姿が見えなくなった直後、桂は銀時を手招きする。銀時も桂の次の行動を読んでいたのか、何も言わずに桂の傍へと移動して口元に耳を近付けた。
「俺を斬りつけた男の手には、八咫烏の紋章が刻まれていた」
小さな声で紡がれた桂の言葉は、銀時に息を飲ませる。
銀時達にとっては生涯の仇であり、それでいて最も関わりたく無い存在が再び近付いている事を知り、銀時の表情が翳った。
「何やら大きな存在が動き出しているらしい。奴らは俺とお前、そして俺たちに賛同する攘夷浪士たちを一掃するつもりだ。それと同時に姫夜叉も探していると言う。幸いな事に未だ俺とお前の場所しか把握できてはいないようだが、共にいれば見つかるのは時間の問題だろう」
「姫夜叉が見つかっていない?……それは確かなのか?」
思わぬ情報に、銀時が驚きの声を上げる。その意味を知らない桂は「うむ」と小さく頷くと言った。
「少なくとも俺と対峙した八咫烏の男は、未だ柚希の所在を確認できてはいないようだったぞ。奴らは近い内にまた俺たちの前に現れるだろう。……どうする? このまま柚希を傍に置いて共に戦うか? それとも一時的に避難させるか……」
なるほど、桂が柚希をここから遠ざけた理由は、銀時に選ばせる為だったらしい。柚希がこの話を聞けば、共に戦うという選択肢しか無くなると思ったのだろう。
「避難っつったって、どこにだよ。アイツはここ以外行く場所なんざねェんだぜ」
「ならば緒方先生や畑中殿の所はどうだ? 今のところ八咫烏は江戸に集結しているようだし、先生たちの所なら柚希も安心できよう。機会があればお主たちに会いたいとも言っておられたのでな」
名案だろうと言わんばかりに目を輝かせて言った桂だったが、銀時は気乗りしないようだ。
「やけに強引に話を進めようとしてんな。おっさんたちに借りでもあんのかよ」
「別に何も無いぞ。少し前に先生の墓を訪ねた時、宿代わりにさせてもらった程度だ」
「……しっかり借りを作ってんじゃねェか。どうせ話の流れで『今度は銀時たちも連れてきます』みたいな事を言っちまったんだろ」
「否定はせぬよ。先生方にお会いした時は、小さな希望に縋って再会を約束したものの、お互いが無理な事だと認識していた。だがこうして柚希の存在を確認できた今、その約束を現実のものとしたいと思うのは必然だろう」
銀時をじっと見つめながら言った桂の表情は、真剣だった。普段から真面目ではあるのに何故かおとぼけ感の抜けない彼が、全く隙を見せていない。
そんな桂に何かを感じ取ったのだろう。苦笑いをして頷いた銀時は、柚希のいる給湯室の方へと視線を向ける。姿が見えていないはずの柚希を見つめるようにしながら、銀時は言った。
「理由はそれだけじゃねェんだろ。柚希をココから遠ざけたい理由が他にもあるはずだ。柚希が戻ってくるまで時間もねェし、回りくどい事せずに一気に言えよ」
銀時の言葉に、桂はほんの少し躊躇いを見せながら大きくため息を吐く。そして更に真剣な眼差しで銀時を見ると、覚悟を決めたように語り出した。
「ならば言おう。先日攘夷活動で松下村塾の方面に向かった際、密かに松陽先生の墓に参ると、偶然緒方先生にお会いした。緒方先生は、定期的に松陽先生の墓を参って下さっておられたそうだ。その流れで一宿一飯の恩義に預かったのだが……そこで妙な話を聞いたのだ」
「妙な話って?」
「過去に一度だけ、異質な物が先生の墓前に供えられていたらしい」
「異質な物って何だよ。勿体ぶんな」
「そう焦らせるな。それは俺たちにとって忘られぬ、大きな希望と願いを込めた物だった」
「だから何なんだよ、それは!」
「……扇子だ」
「扇子!?」
「それもただの扇子じゃない。お主と俺、そして柚希と高杉の4人の名と、我々の決意の認められた柚希の扇子だ」
「まさか……ッ!」
あまりの驚きに、銀時が勢いよく立ち上がる。そんな銀時から視線を外す事なく一つ頷いた桂は話を続けた。
「緒方先生がそれを見つけた時、柚希が生き延びて戻ってきたのかと喜んで手に取ったそうだ。だが畳まれた状態の扇子を開いた瞬間、血の気が引いたという。何故ならそこに書かれた俺たちの名が、血の線で消されていたからだ」
「血の線だァ?」
「俺と高杉は一本の線だったが、銀時。お主の名には狂気を孕んだかのような数多の線が塗り重ねられていたという」
それを聞いた瞬間、銀時の全身を冷たい物が走り抜ける。その行為の主が誰なのか、そしてそこにどれほどの強い意思が込められていたかを計り知ることができてしまったから。
「ちなみに俺たちの決意の証として認 めた『松陽先生奪還!』の文字にも線は引かれていたが、柚希の名は手付かずだったらしい」
加えられた駄目押しの情報は、銀時の中にある想像を確固たる物とした。
「俺を斬りつけた男の手には、八咫烏の紋章が刻まれていた」
小さな声で紡がれた桂の言葉は、銀時に息を飲ませる。
銀時達にとっては生涯の仇であり、それでいて最も関わりたく無い存在が再び近付いている事を知り、銀時の表情が翳った。
「何やら大きな存在が動き出しているらしい。奴らは俺とお前、そして俺たちに賛同する攘夷浪士たちを一掃するつもりだ。それと同時に姫夜叉も探していると言う。幸いな事に未だ俺とお前の場所しか把握できてはいないようだが、共にいれば見つかるのは時間の問題だろう」
「姫夜叉が見つかっていない?……それは確かなのか?」
思わぬ情報に、銀時が驚きの声を上げる。その意味を知らない桂は「うむ」と小さく頷くと言った。
「少なくとも俺と対峙した八咫烏の男は、未だ柚希の所在を確認できてはいないようだったぞ。奴らは近い内にまた俺たちの前に現れるだろう。……どうする? このまま柚希を傍に置いて共に戦うか? それとも一時的に避難させるか……」
なるほど、桂が柚希をここから遠ざけた理由は、銀時に選ばせる為だったらしい。柚希がこの話を聞けば、共に戦うという選択肢しか無くなると思ったのだろう。
「避難っつったって、どこにだよ。アイツはここ以外行く場所なんざねェんだぜ」
「ならば緒方先生や畑中殿の所はどうだ? 今のところ八咫烏は江戸に集結しているようだし、先生たちの所なら柚希も安心できよう。機会があればお主たちに会いたいとも言っておられたのでな」
名案だろうと言わんばかりに目を輝かせて言った桂だったが、銀時は気乗りしないようだ。
「やけに強引に話を進めようとしてんな。おっさんたちに借りでもあんのかよ」
「別に何も無いぞ。少し前に先生の墓を訪ねた時、宿代わりにさせてもらった程度だ」
「……しっかり借りを作ってんじゃねェか。どうせ話の流れで『今度は銀時たちも連れてきます』みたいな事を言っちまったんだろ」
「否定はせぬよ。先生方にお会いした時は、小さな希望に縋って再会を約束したものの、お互いが無理な事だと認識していた。だがこうして柚希の存在を確認できた今、その約束を現実のものとしたいと思うのは必然だろう」
銀時をじっと見つめながら言った桂の表情は、真剣だった。普段から真面目ではあるのに何故かおとぼけ感の抜けない彼が、全く隙を見せていない。
そんな桂に何かを感じ取ったのだろう。苦笑いをして頷いた銀時は、柚希のいる給湯室の方へと視線を向ける。姿が見えていないはずの柚希を見つめるようにしながら、銀時は言った。
「理由はそれだけじゃねェんだろ。柚希をココから遠ざけたい理由が他にもあるはずだ。柚希が戻ってくるまで時間もねェし、回りくどい事せずに一気に言えよ」
銀時の言葉に、桂はほんの少し躊躇いを見せながら大きくため息を吐く。そして更に真剣な眼差しで銀時を見ると、覚悟を決めたように語り出した。
「ならば言おう。先日攘夷活動で松下村塾の方面に向かった際、密かに松陽先生の墓に参ると、偶然緒方先生にお会いした。緒方先生は、定期的に松陽先生の墓を参って下さっておられたそうだ。その流れで一宿一飯の恩義に預かったのだが……そこで妙な話を聞いたのだ」
「妙な話って?」
「過去に一度だけ、異質な物が先生の墓前に供えられていたらしい」
「異質な物って何だよ。勿体ぶんな」
「そう焦らせるな。それは俺たちにとって忘られぬ、大きな希望と願いを込めた物だった」
「だから何なんだよ、それは!」
「……扇子だ」
「扇子!?」
「それもただの扇子じゃない。お主と俺、そして柚希と高杉の4人の名と、我々の決意の認められた柚希の扇子だ」
「まさか……ッ!」
あまりの驚きに、銀時が勢いよく立ち上がる。そんな銀時から視線を外す事なく一つ頷いた桂は話を続けた。
「緒方先生がそれを見つけた時、柚希が生き延びて戻ってきたのかと喜んで手に取ったそうだ。だが畳まれた状態の扇子を開いた瞬間、血の気が引いたという。何故ならそこに書かれた俺たちの名が、血の線で消されていたからだ」
「血の線だァ?」
「俺と高杉は一本の線だったが、銀時。お主の名には狂気を孕んだかのような数多の線が塗り重ねられていたという」
それを聞いた瞬間、銀時の全身を冷たい物が走り抜ける。その行為の主が誰なのか、そしてそこにどれほどの強い意思が込められていたかを計り知ることができてしまったから。
「ちなみに俺たちの決意の証として
加えられた駄目押しの情報は、銀時の中にある想像を確固たる物とした。