第三章 〜夜叉〜(70P)
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「お前が俺に苦しい思いをさせたくないのと同じで、俺もお前を苦しませたくねーんだよ。でもどうしても苦しまなきゃなんねーってんなら、せめて俺と一緒に……って考える事はできねェのか?」
「シロ……」
銀時の言葉に、柚希は何も言えなくなる。これ程までに銀時が自分を想ってくれているというのを分かっていながら、今ここでその想いを受け入れ『共に』と言う勇気が持てないのだ。
苦しみを分かち合うという事は、銀時に未だ話していない過去の記憶まで語らねばならぬという事。
「頼むから、もう二度と俺を置いて行くな」
自分を抱きしめる腕が小さく震えている事に気付き、柚希の胸が痛む。決して消せない迷いと不安、そして銀時の想いが交錯し、とてもではないが結論は出せない。
――が。
「……うん」
柚希が小さく頷く。
「大丈夫だよ、シロ」
そう言って銀時の胸にコツンと額を押し付けた柚希は、銀時の存在を確かめるように額から頬を数回擦り付けると、ため息を吐くように囁いた。
「私はシロを愛してる……誰よりもシロだけを」
「柚希……?」
突然の告白に戸惑う銀時に優しい笑みを向けた柚希は「私にはシロしかいないから……」と言って目を瞑り、口付けをせがむ。その行為にほんの一瞬眉を顰めた銀時だったが、「ああ」と一言返すのみで、せがまれるままに唇を重ねた。
と、そこにパタパタと近付く足音が1つ。
「銀さん、さっきの大きな音は何で……ってす、すみませんっ! ボク何も見てませんからッ!」
マグカップが割れた音が気になってはいたものの、仕事で使った大工道具を片付けていた為に部屋に入るのが遅くなった新八がタイミング良く現れたのだ。いつものふざけたじゃれ合いとは違う、真剣なキスをしている二人の空間に圧倒され、顔を真っ赤にしながら回れ右をする。
「お邪魔しましたーっ!」
遠のいていく新八の声に、二人の空気も変わってしまったようだ。目を合わせて小さく笑い合うと、銀時が言った。
「時間はこれからたっぷりあるんだ。お前はただ俺の傍にいてくれりゃァ良い。後の事はゆっくり考えれば良いさ」
柚希を腕から離し、ポンと優しく頭を叩いた銀時は、「思春期のボクちゃんには、ちょーっと刺激が強かったかねェ」と言いながら新八を追って台所を出て行く。
「シロ、私……」
「俺もお前だけだ。柚希」
振り向かずに言った銀時の声はとても真剣なものだった。
「だから……何があっても俺はお前を信じてるさ」
「……っ」
思わず息を飲んだ柚希の瞳から、涙が溢れる。
銀時は柚希の過去の全てを知らない。だが何かを感じ取り、それでも尚自分を信じようとしている決意と想いが伝わってきて、柚希の胸を締め付けた。
「シロ……っ」
気配から、新八と共にお登勢の店へ行ってしまったのだろう。再び静かになった万事屋で柚希は一人、小さく嗚咽を漏らしながら言った。
「このままじゃ私……前に進めないよ。私はシロが好きで、親父様が大切で……だからこそ朧を恨んでるのに、朧の優しさと苦しみを知った事で見捨てられなくなって……」
止まらない涙を拭う柚希の脳裏に浮かんでは消える、新たに思い出された過去たち。それらは柚希の望まぬ形で記憶を鮮明にしていく。
「シロが信じてくれてるのに、私が自分を信じられないよ……」
柚希の苦しみを集約したその言葉は、誰に聞かれる事なく消えていったのだった。
第四章 〜絆〜(連載中)に続く
「シロ……」
銀時の言葉に、柚希は何も言えなくなる。これ程までに銀時が自分を想ってくれているというのを分かっていながら、今ここでその想いを受け入れ『共に』と言う勇気が持てないのだ。
苦しみを分かち合うという事は、銀時に未だ話していない過去の記憶まで語らねばならぬという事。
「頼むから、もう二度と俺を置いて行くな」
自分を抱きしめる腕が小さく震えている事に気付き、柚希の胸が痛む。決して消せない迷いと不安、そして銀時の想いが交錯し、とてもではないが結論は出せない。
――が。
「……うん」
柚希が小さく頷く。
「大丈夫だよ、シロ」
そう言って銀時の胸にコツンと額を押し付けた柚希は、銀時の存在を確かめるように額から頬を数回擦り付けると、ため息を吐くように囁いた。
「私はシロを愛してる……誰よりもシロだけを」
「柚希……?」
突然の告白に戸惑う銀時に優しい笑みを向けた柚希は「私にはシロしかいないから……」と言って目を瞑り、口付けをせがむ。その行為にほんの一瞬眉を顰めた銀時だったが、「ああ」と一言返すのみで、せがまれるままに唇を重ねた。
と、そこにパタパタと近付く足音が1つ。
「銀さん、さっきの大きな音は何で……ってす、すみませんっ! ボク何も見てませんからッ!」
マグカップが割れた音が気になってはいたものの、仕事で使った大工道具を片付けていた為に部屋に入るのが遅くなった新八がタイミング良く現れたのだ。いつものふざけたじゃれ合いとは違う、真剣なキスをしている二人の空間に圧倒され、顔を真っ赤にしながら回れ右をする。
「お邪魔しましたーっ!」
遠のいていく新八の声に、二人の空気も変わってしまったようだ。目を合わせて小さく笑い合うと、銀時が言った。
「時間はこれからたっぷりあるんだ。お前はただ俺の傍にいてくれりゃァ良い。後の事はゆっくり考えれば良いさ」
柚希を腕から離し、ポンと優しく頭を叩いた銀時は、「思春期のボクちゃんには、ちょーっと刺激が強かったかねェ」と言いながら新八を追って台所を出て行く。
「シロ、私……」
「俺もお前だけだ。柚希」
振り向かずに言った銀時の声はとても真剣なものだった。
「だから……何があっても俺はお前を信じてるさ」
「……っ」
思わず息を飲んだ柚希の瞳から、涙が溢れる。
銀時は柚希の過去の全てを知らない。だが何かを感じ取り、それでも尚自分を信じようとしている決意と想いが伝わってきて、柚希の胸を締め付けた。
「シロ……っ」
気配から、新八と共にお登勢の店へ行ってしまったのだろう。再び静かになった万事屋で柚希は一人、小さく嗚咽を漏らしながら言った。
「このままじゃ私……前に進めないよ。私はシロが好きで、親父様が大切で……だからこそ朧を恨んでるのに、朧の優しさと苦しみを知った事で見捨てられなくなって……」
止まらない涙を拭う柚希の脳裏に浮かんでは消える、新たに思い出された過去たち。それらは柚希の望まぬ形で記憶を鮮明にしていく。
「シロが信じてくれてるのに、私が自分を信じられないよ……」
柚希の苦しみを集約したその言葉は、誰に聞かれる事なく消えていったのだった。
第四章 〜絆〜(連載中)に続く
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