第三章 〜夜叉〜(70P)
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「これが姫夜叉……」
恐ろしくも美しいその姿に思わず見惚れた骸だったが、このまま柚希の好きにさせておくわけにはいかない。朧に命じられた『柚希を研究所に送り届け、安全を確認して戻る』という任務を全うすべく、骸は叫んだ。
「やめなさい、柚希! こんな所で暴れていたら殺されてしまう」
だが骸の声は耳に届いても、柚希の心にまでは届かない。
「もう良いの。どうなったって良い……親父様もシロもいなくなったのなら、私はここにいる理由なんて無い……私の存在に意味なんて無いっ!」
そのまま兵の死体を増やし続ける柚希に、春雨も手をこまねいているはずはなく。柚希の玉の届かない距離からの発砲準備が始まった。
「駄目! 彼女を殺してはいけない!」
慌てる骸を押しのけるようにして、指揮官と思しき天人が手を挙げる。ライフルを構えた兵たちがトリガーにかけた指に力を入れかけた時――。
「待つんじゃ。その娘を殺しちゃならんぞ」
緊迫した空気を一変させたのは、研究所の所長である杉田玄黒だった。よほど急いで走って来たのか、その姿は汗だくの上、肩で息をしている。
「全く、お前たちは知らんのか。柚希を殺しちまったら、一番困るのはお前さん達なんじゃぞ」
「あん? 杉田のジジイじゃねぇか。そういやこの女はお前の部下だったな」
「ああ、だからこそこの娘を殺させるわけにはいかねぇ。お前さん達の上司から依頼されている研究が全てパァになっちまうぞ」
そう言いながら玄黒は指揮官を押し退け、ゆっくりと柚希の方へと向かって歩き出した。
「おいジジイ! そっちに行くんじゃ……」
「今撃ったらワシにも当たるぞ。そうなったらここにいるお前たち全員死罪になるのは分かっとるな」
被せるように言った玄黒は、殺戮を続ける柚希へと躊躇なく近付いていく。
「随分と派手に暴れたな、柚希」
声に反応して大きく扇子を振り下ろそうとした柚希だったが、それが馴染みの声だと気付いたようで、ピタリと動きが止まった。
「所長……」
感情を無くした虚ろな表情で振り向いた柚希に、玄黒はそっと手を伸ばす。扇子を持っていた腕を優しく掴んだ玄黒は、その手を下げさせながら言った。
恐ろしくも美しいその姿に思わず見惚れた骸だったが、このまま柚希の好きにさせておくわけにはいかない。朧に命じられた『柚希を研究所に送り届け、安全を確認して戻る』という任務を全うすべく、骸は叫んだ。
「やめなさい、柚希! こんな所で暴れていたら殺されてしまう」
だが骸の声は耳に届いても、柚希の心にまでは届かない。
「もう良いの。どうなったって良い……親父様もシロもいなくなったのなら、私はここにいる理由なんて無い……私の存在に意味なんて無いっ!」
そのまま兵の死体を増やし続ける柚希に、春雨も手をこまねいているはずはなく。柚希の玉の届かない距離からの発砲準備が始まった。
「駄目! 彼女を殺してはいけない!」
慌てる骸を押しのけるようにして、指揮官と思しき天人が手を挙げる。ライフルを構えた兵たちがトリガーにかけた指に力を入れかけた時――。
「待つんじゃ。その娘を殺しちゃならんぞ」
緊迫した空気を一変させたのは、研究所の所長である杉田玄黒だった。よほど急いで走って来たのか、その姿は汗だくの上、肩で息をしている。
「全く、お前たちは知らんのか。柚希を殺しちまったら、一番困るのはお前さん達なんじゃぞ」
「あん? 杉田のジジイじゃねぇか。そういやこの女はお前の部下だったな」
「ああ、だからこそこの娘を殺させるわけにはいかねぇ。お前さん達の上司から依頼されている研究が全てパァになっちまうぞ」
そう言いながら玄黒は指揮官を押し退け、ゆっくりと柚希の方へと向かって歩き出した。
「おいジジイ! そっちに行くんじゃ……」
「今撃ったらワシにも当たるぞ。そうなったらここにいるお前たち全員死罪になるのは分かっとるな」
被せるように言った玄黒は、殺戮を続ける柚希へと躊躇なく近付いていく。
「随分と派手に暴れたな、柚希」
声に反応して大きく扇子を振り下ろそうとした柚希だったが、それが馴染みの声だと気付いたようで、ピタリと動きが止まった。
「所長……」
感情を無くした虚ろな表情で振り向いた柚希に、玄黒はそっと手を伸ばす。扇子を持っていた腕を優しく掴んだ玄黒は、その手を下げさせながら言った。