第一章 ~再会~(49P)
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「どうしたねえちゃん。何かまた思い出したのか?」
黙り込んでしまった柚希に老人が声をかける。だが柚希はすぐ思い出を振り払うように首を横に振って言った。
「いえ、何でも。それよりも、これを見ただけでカラクリだと見抜く力がおありという事は、相当の腕前とお見受けします。その腕を見込んでお伺いしたいのですが、ご老人はこれを外すことができるとお考えですか? そして、外してしまえば私の記憶は元に戻るのでしょうか」
強く引っ張っても何故か取れないピアスに触れる。何の変哲も無い、こんな小さな飾りが本当に自分の記憶に影響を及ぼしているのか。確信は無いが、疑問が生まれた以上は出来る限りのことをしたかった。
「そいつァ何とも言えねぇな。わしは人間の神経に直結させるカラクリに手を出したことが無いんでね。だが……」
「だが、何です? はっきりと仰って下さい」
「それなら言わせてもらうが、良い結果になる可能性は低いな。お前さんがコレを付けた経緯は分からんが、記憶が無い以上、そのきっかけは好意的な物では無いじゃろう。最も考えられるのは、お前さんを意のままに操りたいと思っている存在がいるってぇ事だ。となれば……自ずとその先は読めるんじゃねえか?」
それは、柚希も薄々感じていた事。第三者に言われた事で、心に靄として生まれていた疑問が、確信に変わりつつあった。
「仰る通りですね。もし私が相手側なら、使えないコマは消す手筈を整えているかもしれません」
「穏やかじゃねぇが、正解だ。じゃが良い結果の可能性がゼロというわけでも無い。お前さんの覚悟次第で世界が変わる事も考えられるからな。まぁその時は俺も手を貸してやるさ。なんせ未だ借りが残ってるからな。そうじゃろ? 銀の字」
「え……?」
老人の口から発せられた『銀』の文字に、思わず柚希が驚いて振り向く。店の入口の影に隠れていたのであろう銀時がゆっくりとこちらへと向かってくると、老人がにやりと笑った。
「心配なら、最初から出てきてりゃ良いじゃねぇか」
「うるせぇジジイ。っつーか、何で気付いたんだよ。気配は消してたはずだぞ」
頭をボリボリと掻きながら、バツが悪そうにしている銀時に返した老人の言葉は、銀時だけでなく柚希をも驚かせた。
「んなの気付いてるはずなかろうて。勘じゃよ、勘。お前さんならこのねえちゃんに付いて回ってるじゃろうと思ってたからな」
「なっ……俺をゴリラストーカーと一緒にすんな!」
「ふん、未熟者めが」
二人が言い争うのを見て、改めてこの老人が信頼に値するのを確信した柚希は、ようやく握りしめたままだった扇子を懐に仕舞った。
気を取り直し、銀時に尋ねる。
「ねぇ銀時、いつから私をつけてたの?」
神楽と出かけた時から、自分なりに細心の注意を払ってはいた。しかし銀時の気配など、微塵も感じてはいなかったのだ。
それだけ上手く気配を隠せるのだとしたら、この男は相当『慣れ』ている。少なくとも、何でも屋如きでは収まらない実力の持ち主なのだろう。
「……別につけちゃいねぇよ。ちょっと用事があって出かけたら、たまたまお前を見かけただけだ。茶店じゃ神楽が一人で糖分摂取に勤しんでやがるし、ついでに俺もお相伴にあずかろうと思っただけさ」
「だったら一緒に店で待っていれば良かったのに」
そうは言ったものの、この男は決してそれをしないだろうという事を、柚希は何故か分かっていた。
黙り込んでしまった柚希に老人が声をかける。だが柚希はすぐ思い出を振り払うように首を横に振って言った。
「いえ、何でも。それよりも、これを見ただけでカラクリだと見抜く力がおありという事は、相当の腕前とお見受けします。その腕を見込んでお伺いしたいのですが、ご老人はこれを外すことができるとお考えですか? そして、外してしまえば私の記憶は元に戻るのでしょうか」
強く引っ張っても何故か取れないピアスに触れる。何の変哲も無い、こんな小さな飾りが本当に自分の記憶に影響を及ぼしているのか。確信は無いが、疑問が生まれた以上は出来る限りのことをしたかった。
「そいつァ何とも言えねぇな。わしは人間の神経に直結させるカラクリに手を出したことが無いんでね。だが……」
「だが、何です? はっきりと仰って下さい」
「それなら言わせてもらうが、良い結果になる可能性は低いな。お前さんがコレを付けた経緯は分からんが、記憶が無い以上、そのきっかけは好意的な物では無いじゃろう。最も考えられるのは、お前さんを意のままに操りたいと思っている存在がいるってぇ事だ。となれば……自ずとその先は読めるんじゃねえか?」
それは、柚希も薄々感じていた事。第三者に言われた事で、心に靄として生まれていた疑問が、確信に変わりつつあった。
「仰る通りですね。もし私が相手側なら、使えないコマは消す手筈を整えているかもしれません」
「穏やかじゃねぇが、正解だ。じゃが良い結果の可能性がゼロというわけでも無い。お前さんの覚悟次第で世界が変わる事も考えられるからな。まぁその時は俺も手を貸してやるさ。なんせ未だ借りが残ってるからな。そうじゃろ? 銀の字」
「え……?」
老人の口から発せられた『銀』の文字に、思わず柚希が驚いて振り向く。店の入口の影に隠れていたのであろう銀時がゆっくりとこちらへと向かってくると、老人がにやりと笑った。
「心配なら、最初から出てきてりゃ良いじゃねぇか」
「うるせぇジジイ。っつーか、何で気付いたんだよ。気配は消してたはずだぞ」
頭をボリボリと掻きながら、バツが悪そうにしている銀時に返した老人の言葉は、銀時だけでなく柚希をも驚かせた。
「んなの気付いてるはずなかろうて。勘じゃよ、勘。お前さんならこのねえちゃんに付いて回ってるじゃろうと思ってたからな」
「なっ……俺をゴリラストーカーと一緒にすんな!」
「ふん、未熟者めが」
二人が言い争うのを見て、改めてこの老人が信頼に値するのを確信した柚希は、ようやく握りしめたままだった扇子を懐に仕舞った。
気を取り直し、銀時に尋ねる。
「ねぇ銀時、いつから私をつけてたの?」
神楽と出かけた時から、自分なりに細心の注意を払ってはいた。しかし銀時の気配など、微塵も感じてはいなかったのだ。
それだけ上手く気配を隠せるのだとしたら、この男は相当『慣れ』ている。少なくとも、何でも屋如きでは収まらない実力の持ち主なのだろう。
「……別につけちゃいねぇよ。ちょっと用事があって出かけたら、たまたまお前を見かけただけだ。茶店じゃ神楽が一人で糖分摂取に勤しんでやがるし、ついでに俺もお相伴にあずかろうと思っただけさ」
「だったら一緒に店で待っていれば良かったのに」
そうは言ったものの、この男は決してそれをしないだろうという事を、柚希は何故か分かっていた。